今年は作品賞ノミネート作を去年の内にほとんど観ていたので、先週『バイス』を観たことでようやく全部観終わった。以下あいうえお順で各作品の軽い感想をば。
アリー/スター誕生 ★★☆
面白かったけど、公開時マーケティングがとにかくしつこくてウザかったので今年一番応援したくない映画。…いや、面白かったですよ。過去作は一番最初の『スタア誕生』しか観てないので簡単な比較はできないが、しかし1937年版は古い松竹映画みたいにエスターがノーマンにひたすら尽くしていく姿が印象的だったけど、今回のは割とアリー(レディー・ガガ)がジャクソン(ブラッドリー・クーパー)と対等にぶつかり合っていて時代の流れを感じる。あと、単純にブラッドリー・クーパーは監督として凄く上手い。オリジナル観てたので結末を知ってから鑑賞したが、冒頭のとあるシーンでジャクソンの背後に写る電光掲示板に鳥肌が立った。
- アーティスト: レディー・ガガ,ブラッドリー・クーパー
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グリーン・ブック ★★★
年末ベスト・対談で散々褒め倒してきてるが、社会派映画・コメディ・ロードムービー・バディムービー・音楽映画・クリスマス映画と、どの要素も含まれている完璧としか言いようがない一本。何よりピーター・ファレリー作品がアカデミー賞作品候補と言うのが熱い…!
女王陛下のお気に入り ★★☆
ヨーロッパ宮廷モノって苦手なんだけど、これはヨルゴス・ラティモスの意地悪いユーモアにずっと笑ってた。最高。観てて首が痛くなる錯覚を起こすくらいローアングルショットや広角ショットが多いロビー・ライアンの撮影も面白いが、インタビュー記事を読んでいるとウサギの視点を表現していたようで、なるほど。応援してる作品の一つ。ただ、 あみん とも話題に上ったが、主演女優賞候補がオリヴィア・コールマン、助演女優賞候補がエマ・ストーン、レイチェル・ワイズっていう分担はおかしい。どちらかというと役割的にエマ・ストーンが主演な気がするが、まあ『ラ・ラ・ランド』で獲ったし次は助演でも、ということなのかも。
バイス ★★☆
現代に蔓延る悪徳(Vice)を史上最悪の副大統領(Vice President)が作り出した、というピカレスクロマン・コメディ。ピーター・ファレリーと同じくコメディ出身のアダム・マッケイ作という事で応援したい。ここに来て社会派映画ばかり撮ってるのが意外に思えるかもしれないけれど、『俺たちニュースキャスター』だって『アザーガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』といった一見バカバカしいコメディ映画だって一貫としてアダム・マッケイのリベラルな視点が盛り込まれていた。個人的にはサム・ロックウェルのブッシュのバカっぷりがツボだった。
ブラッククランズマン ★★☆
スパイク・リーがKKK、トランプ政権、『国民の創生』『風と共に去りぬ』と、嫌いなもの全てにミドルフィンガーをぶち立てていてカッコいい。ただ、申し訳ないけどスパイク・リーはオスカーを取らない方がスパイク・リーらしさがある。
ブラックパンサー ★★☆
前も書いたけど、今年の予想外枠その一。去年のマーベル映画では『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』>『アントマン&ワスプ』>『ブラック・パンサー』の順に好きだったもので…。いや、嫌いな作品ではないですよ。
ボヘミアン・ラプソディ ★★☆
今年の予想外枠その二。GG賞作品賞受賞も話題になったが、まさかアカデミー賞作品賞までノミネートされるとは。僕はエンターテイメントとして面白かったし楽しかったんだけど、でも結局のところ映画の出来と言うよりそもそもクイーンの楽曲が良いからじゃないの?と一歩距離を置いている。でも日本での大ヒットも嬉しい。
ROMA ローマ ★★☆
常に平行移動しているカメラワークに、僕はディズニーワールドのアトラクション『カルーセル・オブ・プログレス』を思い出した*1。『カルーセル・オブ・プログレス』を翻訳するならば『進歩のメリー・ゴーランド』で、円形のシアターの座席がメリーゴーランドの要領で回り、各時代の生活様態をゲストにタイムマシーンのように見せていく。『ROMA』もまた観客に介入の余地を与えない、ある種のライド型映画のような感覚を与える一種の展示物に近い映画だ。当然、長回しと言う手法もライド感覚を助長するが、『トゥモロー・ワールド』と『ゼロ・グラビティ』でもヘル・ライド感を追及していたキュアロンがブラシュアップした表現手法として『ROMA』は面白かった。
またオスカー授賞式が近づいてきたら「僕が審査員だったらどの作品に投票するかごっこ」をします!
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