頭強打系コメディが流行ってる/『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』『ロマンティックじゃない?』『What Men Want』(全部★★☆)

 最近キャリアウーマンを主人公としたファンタジーコメディ映画を三本観て、それぞれ似ている設定だったので一緒にご紹介。『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』はアビー・コーン、マーク・シルヴァースタインが監督・脚本、 エイミー・シューマー主演。『ロマンティックじゃない?』は トッド・シュトラウス=シュルソン監督、 レベル・ウィルソン主演。『What Men Want』はアダム・シャンクマン監督、タラジ・P・ヘンソンが主演。

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 さて、この3つ何が共通しているかと言うと、「人生がうまくいっていない女性主人公がある日頭を強打したら世界の見え方が変わった」という設定だ。

 

 『アイ・フィール・プリティ!』はNYの化粧品会社のウェブサイト運営を行っているレネー(エイミー・シューマー)が主人公。ぽっちゃり体系の自分に自信が持てず、かなりネガティブな性格でまずはジムに通って自分を変えようとしていたところ、サイクリング中に頭を強打する。ジムの更衣室で目が覚めてみるとあら不思議、自分がスーパーモデル並みの美女に変わっていた!…風に自分では見えるが、実際の外観は全く変わっていないのにウルトラポジティブな性格になったレネーに周囲は唖然とする。

 

 『ロマンティックじゃない?』の主人公は、母親からロマコメは非現実的だと子供の時から教えられてきて、恋愛に対して何も期待を抱かないナタリー(レベル・ウィルソン)。犬は言うことを聞かないし、アパートの隣人は愛想が無いし、会社では仕事を好き勝手押し付けられるし、ナタリーの人生にはいいことがまるでない。そんなある日、地下鉄でひったくりで襲われた際に頭を強打するが、病院で目が覚めたら全ての男がイケメンで自分に惚れており、文字通り生々しく汚いNYの街並みは素敵なバラ色の世界にとって代わり、完璧なタイミングでいい感じのBGMがどこからか流れてくるロマンティック・コメディの世界に閉じ込められてしまったことに気付く。

 

 

 『What Men Want』はメル・ギブソン主演のロマコメ『ハート・オブ・ウーマン』のリメイクだが、オリジナル版は眉間なのでここでは割愛。スポーツマンのマネジメント会社でバリバリのキャリアウーマンとして働くアリ(タラジ・P・ヘンソン)は男勝りな性格で業績を上げてきたが、男性優位的な会社の方針のせいで中々出世できず苛立っていた。そんな折、胡散臭い占い師から渡された不味いお茶を飲み、そのまま朦朧とした意識で踊っていたクラブで頭を強打する。こちらも病院で目が覚めると、男性の心の声が聞こえてくる特殊能力を得ているのであった。

 

 どれも同時期に公開されているのでどの作品がどれをパクったという訳でもないが、たまたま似たような主人公が似たような設定で似たような物語展開をする映画が製作されたのが面白い。これは近年#MeToo運動などでかつて男性優位社会の中で抑圧されてきた女性たちが声をあげるようになってきた時勢と決して無関係ではないだろう。

 

 この三作品の主人公も実際に男性優位な社会や会社の中で四苦八苦している。『ロマンティックじゃない?』のナタリーは建築デザイナーで、イケメンのクライアント(演じるのがクリス・ヘムズワースの弟リアム・ヘムズワース)へのプレゼンに参加するが、まさか女性に建築デザイナーが務まると思っていないリアヘムからはお茶汲みの雑用のように扱われる。『What Men Want』のアリは先述のように社内屈指の実力派だが、その上昇志向の性格が仇となり「君は男性と働くのに向いていない」なんて言われてしまい苛立ちを隠せない。

 『アイ・フィール・プリティ!』のレネーは男性たちに抑圧されているわけではないが、「女性は奇麗でなければならない」「女性はモデル体型が望ましい」などというやはり男性的価値観が世の中に蔓延っているせいで、対極にある自分にどうしても自信が持てず自己評価が低い。なお、自己評価が低いのは『ロマンティックじゃない?』のナタリーにも共通している。

 

 この3人は頭を打つことでその世界において最強の超能力を手に入れてしまう。『アイ・フィール・プリティ!』のレネーの場合、本人自体は全く変わってないのに究極の自意識を手に入れてしまったので彼女の人生は好転し始める。『ロマンティックじゃない?』の場合は嫌いなロマコメ世界に閉じ込められているので事情は少し違うが(PG-13なのでファックも言えないしセックスもできない)、『What Men Want』のアリもこの力を活用して会社内で更に実績を作り上げていく。

 

 そしてそのパワーによりまた三人は周囲の人や自分を傷つけてしまう。そのうちパワーを失ってしまうが、失う際に結局一番大事なものは「自分らしくあること」ということに気付くのも共通していいる。この三作品は現代社会に生きる女性たちにありのままでいることを肯定する、素晴らしい応援歌となっている。

 

 さて、もう一つ3作品に共通して素晴らしいのは、所謂ステレオタイプ的な金髪美女ではなく、プラスサイズのコメディアンやマイノリティを起用することでとても庶民的である点だ。ハリウッドのコメディ映画は主演に良い意味で美男美女を使わないから共感しやすくて良い。登場人物全員イケメン・モデルみたいな日本の恋愛映画の方がよっぽどファンタジーだよ。

 

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