「ベンおじさんは何回死ねばいいのか」問題

※当記事には現在公開中の『ジョーカー』と『ヘルボーイ』のネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 

 ここ20年くらいハリウッド映画のトレンドはアメコミ映画で、毎年数多くのアメコミ映画が公開されている。同時にお金がかかるアメコミ映画は興行収入によって大きくシリーズの行方が左右されるため、思った以上の成果が挙げられなければリブート(仕切り直し)される事も多い。

 

 そうするとその度にオリジンストーリーが語られることになるが、例えばスパイダーマン』シリーズではピーター・パーカーがスパイダーマンになる契機の為に毎回ベンおじさんが死ぬ必要がある。こうしたリブートばかり図られるアメコミ映画界の状況を踏まえて、アメコミに詳しい映画ライターのてらさわホーク氏は「ベンおじさんは何回死ねば良いのか」と表現した事がある。

 

 で、今公開中の『ジョーカー』を昨日観てきたわけだが、ここでも「ベンおじさんは何回死ねば良いのか」問題が発生していたので、今回各アメコミ映画フランチャイズでそれぞれの作品の「ベンおじさん」的な立場の人が何回死んだのかカウントしてみました。

※なお、この記事におけるカウントは映画化作品に限ります。

 

スパイダーマン』シリーズ:ベンおじさん(3回)


 リブート映画を揶揄する際に使われる「ベンおじさんの死」だが、意外にも映画化作品においては3回(実質2回)しか死んでいない。ベンおじさんが強盗に殺されたのは『スパイダーマン(2002)』と『スパイダーマン3(2007)』の回想中、そして『アメイジングスパイダーマン(2012)』内のみで、MCUの『スパイダーマン:ホームカミング(2017)』は最初からベンおじさんを登場させない事で繰り返し同じエピソードが語られることをクレバーに回避。傑作アニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』ではベンおじさんに言及しているものの、その死の描写は無いのでカウントしない。なお、『スパイダーバース』はリブートされまくるスパイダーマン映画を自らパロディにしているのが面白い。

 

バットマン』シリーズ:ウェイン夫妻(4回)

 

 僕はリブート問題が上がる時、「ベンおじさんの死」よりも『バットマン』シリーズの「ウェイン夫妻の死」の方が印象に残っていた。40年代に作られた連続活劇シリーズ(1943、1949)やコミカル路線の強かった『バットマン オリジナル・ムービー(1966)』にはその描写はなかったものの、シリアス路線に変更したティム・バートンの『バットマン(1989)』、よりリアル重視のクリストファー・ノーランの『バットマン・ビギンズ(2005)』、そして現在進行中のDCEUの『バットマンVSスーパーマン/ジャスティスの誕生(2016)』に到るまで、バットマンの物語が語られる度に毎回映画とか演劇観に行った帰り道に裏道でウェイン夫妻は射殺されている。

 

 それどころか、バットマンの仇役ジョーカーのオリジン映画であるはずの『ジョーカー』にもウェイン夫妻が登場し、射殺されてしまった。ぶっちゃけ僕は『ジョーカー』にトーマス・ウェインが出てきた時点で「この後射殺されるんだろうな〜」と思っていたら本当に殺されて思わず笑ってしまった。ドラマなのでカウントしないが、ウェイン夫妻は『ゴッサム』シリーズでも殺されているそうなので、登場するだけで死ぬことが分かるなんて最強の死亡フラグじゃ無いか。マット・リーヴス監督の『The Batman』も現在制作中ですが、これまたDCEUとは異なる作品との噂があり今から嫌な予感がしてならない。ウェイン夫妻、逃げてー!

 

 ちなみに、どの映像作品も基本的にはウェイン夫妻の死の描写はフランク・ミラーの伝説的グラフィック・ノベル『バットマンダークナイト・リターンズ』の該当シーンをベースとしている。ウェイン夫妻の死でやたらと真珠が散らばる場面が多いのはその為。

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『スーパーマン』:ジョー&ラーラ=エル(3回)、ジョナサン(イーベン)・ケント(3回)

 

 

 近親者の死と言う観点からスーパーマンは特殊なヒーローで、彼はリブートされる度に実の両親(ジョー=エルとラーラ=エル)と育ての父親(イーベンあるいはジョナサン・ケント)が死ぬ辛さ2倍のヒーロー。クリプトン星の両親は連続活劇版(1948)、クリストファー・リーヴ版『スーパーマン(1978) 』、そしてDCEU版『マン・オブ・スティール(2013)』で亡くなっている。基本惑星崩壊の最中で死んでいるが、『マン・オブ・スティール』ではゾッド将軍に直接手にかけられているのが特徴。また、各作品各年代の最先端の特撮技術が使われており、その変遷を見るのも面白い。

 

 

 しかし、地球の父の死の描写はそれぞれの作品で異なる。連続活劇版ではイーベンと言う名のお父さんは他作品と比べて出番が少ないため、直接的描写もなくナレーションで奥さんのマーサと共に亡くなったと済まされる。そして『スーパーマン』では心臓麻痺であるのに対し、『マン・オブ・スティール』では竜巻に巻き込まれる劇的な死を遂げる。『マン・オブ・スティール』ではジョー=エルがラッセル・クロウジョナサン・ケントケヴィン・コスナーという配役の豪華さも見せる。

 

 ちなみに、スーパーマンバットマン同様テレビドラマ版が複数作品作られているので、テレビ版を数えるとエル夫妻もジョナサン・ケントももっと死んでいる。

 

ヘルボーイ』:トレヴァー・ブルッテンホルム教授(2回)

 

 ヘルボーイの育ての父、トレヴァー・ブルッテンホルム教授もそれぞれの映画化で殺されている。ただ、僕は2019年版のヘルボーイとブルッテンホルム教授の関係性があまり好きではなかったので、2019年版の死はそこまで感情的に来なかったのは残念。

 

 

 僕が知っている限りだとこれくらい。という訳で、最もリブート映画の中で死んでいる「ベンおじさん」的役割の人はウェイン夫妻の4回でした。もし他作品、あるいは他ジャンルで「ベンおじさん」的役割の人がいましたらコメント欄かツイッターのリプライで教えてください。

 

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