『サウスパーク』S23E1「Mexican Joker」感想

 実は今年の第23シーズンは9/25から始まっていたのだが、一身上の都合*1でリアルタイムで追うことができなかった。しかし今週からやっとアメリカに戻ってこれた*2ので『サウスパーク』をHuluで観ることができる。今シーズンも一話ずつ解説していきたい。

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 先シーズンに引き続き*3、ランディに巻き込まれる形でマーシュ一家は大麻栽培を行うテグリティー農園を営んでいる。OPもそれに合わせてカントリー調。基本的に歌詞は変わらないのだが、ケニーの担当部分はタオリーで「マリファナ吸ってて今何が起きてるのかよく分からない」。

 

 メキシコからの不法移民を大量に雇い大麻農園ツアーを開くほど規模が大きくなったテグリディー農園。しかし、ランディは農園の売り上げが下がっていることに気付く。気になってサウスパークを訪れスティーブン(バターズのお父さん)の家を訪ねてみると、自分の庭で不法移民を雇って大麻栽培をしていた。「俺のアイディアをパクりやがって!」と激怒するランディはやる気のないスタンを連れて市議会に訴え出るが、コロラド州では大麻の個人栽培は(制限付きで)合法なので当然相手にされない。憤りを増すランディの元に、同じく個人の大麻栽培に手を焼いている全米大手の大麻製薬会社MedMenが訪れ協力を持ちかける。

 

 一方、カートマンは最近サウスパークに訪れている変化に退屈しい塞ぎ込んでいた。しかし、バターズの家で不法移民がICE(アメリカ合衆国移民・関税執行局)に拘束され、移民拘置所に送還されるのを目撃する。「こんなイカしたこと、いつから行われてたんだ!?」目をキラキラさせたカートマンは早速ICEに通報し、ブロフロスキー一家を通報してカイルを移民収容施設送りにする。

 

 カートマンの謀略により、カイルは家族と離れ離れになってメキシコ人の子供たちと拘置所で過ごす。しかしICEの職員はカイルがヒスパニックではなくてユダヤ人であると気付き謝罪するが、ICEの不法移民の子供たちに対する仕打ちを目撃したカイルは他の子供たちも家に帰して家族に引き合わせるべきだと主張する。しかしICEの職員たちはバカなのでカイルの言っている意味が分からないので噛み砕いで教えてあげる。

 

 「スーパーヒーロー映画って見たことある?映画でどうやってヴィランが作り出されるか知ってる?ただの子供が親と引き離されて閉じ込められると、その子供は長い間復讐計画を立てるでしょ?あんたたちがやってることはメキシカン・ジョーカーを作り出してるんだよ!」カイルの話を聞いて明後日の方向でパニックになるICE職員たち。「俺たちが拘留した子供たちの中に、メキシカン・ジョーカーがいるだと…!?」かくして全米はメキシカン・ジョーカーへの恐怖に陥るのであったが……。

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 このエピソードは最近アメリカで起きている主な事象2つをパロディにしている。一つはもちろん映画『ジョーカー』が公開され、その内容から「観客に暴力を喚起している」と全米で賛否両論を呼んだこと。2012年に『バットマンライジング』公開時コロラド州オーロラの劇場で乱射事件が起きたことも背景にあるが、『ジョーカー』を公開する全米の各劇場で厳重な手荷物チェックが行われたほどだった。

 

 もう一つは、トランプ大統領就任以降、ICEによる不法移民摘発が多発し、不法移民の子供と親が離れ離れになっている事件が多く取りざたされているニュースだ。トランプ政権は移民に対する厳しい姿勢をとっているが、問題となっているのは強硬的なその手法で人権派団体や民主党から強い反発を招いている。特にかわいそうなのは子供たちで、キャパオーバーの施設に閉じ込められてシャワーもまともに浴びれず、シラミが湧いたり病気が蔓延する環境の中放置されている。

 

 この二つを掛け合わせてメキシカン・ジョーカーというギャグを思いついたのは天才的だと思う。ICEの職員が子供たちに披露するパペットショーでメキシカン・ジョーカーを演じる際にあえて強めのメキシカンアクセントの英語で話すし、「俺はメキシカン・ジョーカーだ!今からお前をレイプするぞ!」しか言わないのも、メキシコ人をレイプ魔呼ばわりしたトランプの馬鹿さ加減をおちょくっていて最高。ただ、正直僕はテグリディ農園関連はそこまで面白いギャグだとは思わないので、今シーズンでマーシュ一家にはサウスパークに帰ってきて欲しい。なお、今回のエンディングは『ゴッドファーザー』のバカバカしいパロディ。

 

 

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