ワッシュさんの毎年恒例ベストテン企画に参加します。ここ最近前哨戦として過去10年のベストテンを振り返っていました*1が、今年のテーマはテン年代の終わりとあって「映画テン年代ベストテン」です。
しかしまあ、10年とはあっという間でしたが、振り返ってみるととんでもない歳月ですね。僕のテン年代は浪人に始まり、大学に入り、映画を作り、大学を卒業し、アメリカに渡って留学し、この大学も卒業し、就職し、強制送還になり、会社と喧嘩別れして仕事を辞める、と文字に起こすと中々に激動な10年でありました。その10年を総括する僕のテン年代ベストテンを選べば僕の10年が見えてくる…かどうかは定かではありませんが、とにかくこの10年でめちゃくちゃ面白かった映画を10本選んでみました。
なお、今回の対象作品は「2010年から2019年の間に公開された作品」という事で、僕は今年観た『パラサイト 半地下の住人』*2をどうしても選びたかったんですけども、まだ日本では公開されておらずグレーゾーンなので、悩みに悩んだ末に今回は泣く泣く外しました。まあ、投票企画じゃなかったら確実に選んでいるので、僕の中ではテン年代を代表する傑作ですよ!
【Taiyakiが選ぶテン年代ベストテン】
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桐島、部活やめるってよ(2012年、吉田大八監督)
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マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年、ジョージ・ミラー監督)
- シン・ゴジラ(2016年、庵野秀明総監督、樋口真嗣監督)
- カメラを止めるな!(2018年、上田慎一郎監督)
- キック・アス(2010年、マシュー・ヴォーン監督)
- ブラック・スワン(2010年、ダーレン・アロノフスキー監督)
- ロボット(2010年、シャンカール監督)
- ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013年、マーティン・スコセッシ監督)
- セッション(2014年、デミアン・チャゼル監督)
- アベンジャーズ(2012年、ジョス・ウェドン監督)
【総評】
基準は先述したように「めちゃくちゃ面白かった映画」です。ただ面白いんじゃなくて、「めちゃくちゃ」面白かったんです。ここがポイント。結果的にこれらの作品は全てBDを所有し、何回も何回も観ている作品ばかりです。
ベストワンは②と悩みましたが、やっぱりこっち。僕は映像業界に入って、この作品に出てくる帰宅部の連中のような、本当に空っぽで見栄や金やネームバリューに何よりも価値を置いている下らない人間ばかり出会って軽く絶望しました。が、中には前田くんのように心の底から映画や映像が好きでこの業界に入った人たちも僅かながらおり、僕もその気持ちを忘れずにこれからの10年を生き抜きたいと思います。「でもやるんだよっ」とはこの作品のセリフではありませんが、この作品を契機に知った今や大事な人生のモットーです。
V8!V8!V8!この投票企画のみならず、各メディアのテン年代ベストテンを席巻するであろうと予測される②ですが、単純に映画的快楽に溢れまくった奇跡の大傑作であります。映画館でリアルタイムで目撃できたことは最早事件。時に「行って帰ってくるだけ」と揶揄されるシンプルなプロットではありますが、その行きて帰し物語の中には搾取する側に必死に抗う弱者たちの重厚なドラマが詰まっており、この作品こそが理不尽極まりない世の中を生き抜く上でのハイオクガソリンになるのです。WE ARE NOT THINGS!
③はスクラップ&ビルド、 すなわち破壊と再構築という戦後日本社会を形成してきた大事な精神を描いた作品です。東日本大震災と関連付けて語られがちな作品ですが、この作品が描いている事はもっと普遍的に当てはまるんじゃないかと最近思うようになりました。アホみたいな古い伝統的価値観が足を引っ張る場面を日常的に良く見かけますが、そんな足枷は内閣総辞職ビームでぶっ壊して瓦礫の中から新しい世代でまた一から作り直していけば良いんですよ。
④は良く出来た構成の脚本だが、僕は冒頭のワンカット部分もかなり面白いと思っていて、キャストやスタッフが現場を必死に走り転び回っている事がヒシヒシと伝わってくるからです。荒削りだけど創作エネルギーから発せられるこの勢いこそ世の中の様々なブルシットに対抗しうる手段だと思います。カメラは止めない!
⑤はタイトルの元にもさせて頂いたので、恩返し的に。そうでなくても、非力な人間にも大いなる責任は伴う、という熱いテーマを描いているのがアメコミ映画全盛期のテン年代初頭に作られたのは意義深いですし、勇気をもらいます。
個人的な話になりますが、浪人した末に大学受験に失敗した僕は、大学に通いながら仮面浪人をしようか迷っていました。しかし、当然大学は大学で忙しく、僕が目指していた大学も二足の草鞋で入れるような生半可な大学ではありませんでした。そんなある月曜日、僕のシラバス的には毎週休日でしたが、何気なしに⑥を観に行って衝撃を受け、全てが吹っ切れました。この作品と出会わなければ僕は幅広いジャンルの映画を観る事は無かったし、もしかしたら映画制作にだって打ち込んでなかったかもしれない。ニナがバレエにのめり込んでいったように、僕を映画という沼に引き摺り込んでしまった悪魔的な作品です。
観たこともない展開にあんぐり口を開けつつ爆笑していたかと思うと、唐突なバイオレンス描写にギョッとし、ハートウォーミングなエンディングにホッコリする⑦は映画というメディアの特性を全て活かしきっている怪作です。この作品以後インド映画も観るようになりましたが、まだ⑦で味わった衝撃を越える作品には出会えていないんですよね。
⑧には見渡す限りクソ野郎しか出ていませんが、そういったクソ野郎共もマーティン・スコセッシ御大の手に掛かれば痺れるほどカッコいいピカレスクロマンに変わってしまうのは見事なものです。僕は資本主義は大嫌いだけど、出来ることならこの映画に出てくるクズたちみたいな大金持ちになり、酒池肉林の日々を送ってみたい。そんな人間の欲望や弱い一面を突かれた気がします。
学生の時観ても傑作でしたが、ブラック企業に勤めたら⑨は他人事じゃなくなりました。圧力と戦い抜いて高みに到達したクライマックスは何度見ても鳥肌もので、落ち込んだ時は⑨を観て自分を鼓舞していました。ハリウッドで己の創作性を保てていた監督という意味で、ゼロ年代はクリストファー・ノーランの時代だったかと思いますが、テン年代はデミアン・チャゼルの時代だった気がします。
今や映画のクロスオーバーは当たり前となり、マーベルはテン年代のエンタメ界のみならずポップカルチャーを支配しましたが、これも全て⑩の「アベンジャーズ、アッセンブル!」という奇跡があった事を忘れてはいけません。どんどん複雑化しスケールアップしていったMCUですが、そこら辺の塩梅やバランスもフェーズ1が一番丁度良かったんじゃないかと思います。しかしテン年代で一旦の完結を迎えたのは中々感慨深いですね。
2020年代も活力を貰えるような映画に会えるのを今から楽しみにしています。最後に、惜しくも選考から漏れてしまった傑作たちを載せておきます。(順不同)
- トイ・ストーリー3
- インセプション
- アウトレイジ
- ソーシャル・ネットワーク
- 冷たい熱帯魚
- 宇宙人ポール
- ドライヴ
- バトルシップ
- キャプテン・フィリップス
- ゼロ・グラビティ
- ジャンゴ/繋がれざる者
- 風立ちぬ
- パシフィック・リム
- きっと、うまくいく
- 地獄でなぜ悪い
- ディス・イズ・ジ・エンド
- インターステラー
- アメイジング・スパイダーマン2
- LEGO®︎ムービー
- ゼロ・ダーク・サーティ
- 幕が上がる
- クリード/チャンプを継ぐ男
- キングスマン
- ラ・ラ・ランド
- ネオン・デーモン
- ズートピア
- サバイバル・ファミリー
- フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法
- デトロイト
- ビッグ・シック
- ゲット・アウト
- クレイジー・リッチ!
- ミッション:インポッシブル/フォールアウト
- ヘレデタリー/継承
- レディ・プレイヤー1
- イット・フォローズ
- アンダー・ザ・シルバーレイク
- ミッドサマー
- パラサイト 半地下の住人