宝島社が子会社の洋泉社を吸収合併することを発表し、雑誌「映画秘宝」が休刊することになりました。
このニュースには多大なるショックを隠しきれません。日本の映画ファンにとって映画秘宝はかけがえのない存在だったどころか、近年の日本の映画シーンに多大な影響を与えた雑誌だったと言っても全く過言ではありません。映画秘宝の存在抜きに『パシフィック・リム』『この世界の片隅に』『カメラを止めるな!』などのヒットは語れません。毎年恒例のベスト&ワーストも日本国内ではアカデミー賞に負けない影響力を持っていたと思います。
僕も例に漏れず秘宝読者でしたが、僕と秘宝の出会いは2011年4月に遡ります。大学生になったこの年、東日本大震災の影響で僕の大学は開講が5月まで遅れましたが、日本中が閉塞感に包まれていたいました。その頃、インターネット上でネタ系映画サイトの「破壊屋」に出会った僕は、色々探っていくうちに町山智浩やライムスター宇多丸、柳下毅一郎などを知って今まで馴染みが無かった映画批評の世界にハマっていき、そういった好きなライターたちが執筆している映画秘宝とはどういう雑誌なのだろう?と興味を抱いて「映画秘宝 2011年6月号 【特集】 観れば絶対に元気になる!! 不屈の映画150!」を本屋で手に取りました。雑誌の力で本気で絶望の底にいる日本を勇気づけようとするテーマの素晴らしさもさることながら、その圧倒的な情報量にはすぐに虜になりました。
それから僕は毎月映画秘宝を買うようになり、いわゆる「秘宝系」の映画を観るようになり、ツイッター上で映画感想を投稿するようになりました。大学1年の時にはしたまちコメディ映画祭で『宇宙人ポール』を鑑賞して感動し、コメディ映画が大好物になりました。古本屋に通っては過去のナンバーを手に入れました。小学校時代に開設していたホームページも映画レビューサイトへと改築し、いつしか文体も映画秘宝のようになっていきました。はてなブログに移った今でも映画評を書くときは映画秘宝に載っている記事のような文になることを意識しています。*1映画秘宝は僕の映画観の基本を確立した雑誌で、人生で鑑賞してきた映画たちと同様に僕の地肉の一部になっています。
僕は大学卒業後アメリカに渡りましたが、親に無理を言って毎月映画秘宝をアメリカまで送ってもらっていました。毎週買ってた少年ジャンプだって大学卒業したら読まなくなったのに、2011年から8年間1号たりとも欠かさず読み続けた雑誌は映画秘宝だけです。書いたレビューが載るか、撮った映画が紹介されるか、どんな形であれ映画秘宝に僕の名前が載るのが夢でした。その夢もとうとう叶わなくなりましたが…とは思いたくありません。映画批評の休刊はテン年代の最後を象徴する出来事ですが、僕はいつか映画秘宝がまた復活すると信じています。僕の夢を叶えるのは、その時までとっておきます。
その時までは、しばしのお別れを。ありがとう映画秘宝!
*1:もちろん、豊富な知識を持ち様々なジャンルに対応できる多才なライター陣が書く名文たちの前では比べるべくもない稚拙な文章ですが。