兄弟で観に行かないように!/『2分の1の魔法』★★★

 リハビリで久々に映画の感想記事を書く。PIXAR最新作『2分の1の魔法』をDisney+で鑑賞*1。監督・脚本は『モンスターズ・ユニバーシティ』のダン・スキャンロン。音楽はジェフ&マイク・ダナ兄弟。声の出演に、トム・ホランドクリス・プラット、ジュリア・ルイス=ドレイファス、オクタヴィア・スペンサーら。

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 僕は三人兄弟の長男である。子供の時は威張りんぼうで、いつも遊びを仕切っていた。両親が教育熱心だったので3人とも良い大学には行き、やがて真ん中の弟は商社マンとなり、末の弟も大手を目指して就活中である。片やモラトリアムを堪能して大学卒業後に留学し、映画を追いかけて会社辞めて、ゴロゴロフリーランサーをやっている長兄とは大違いだ。この間末の弟は、母にこっそり「兄ちゃんってお金大丈夫なの......?」と心配そうに聞いていたらしい。*2

 

 『2分の1の魔法』は不思議な世界観の映画だ。ファンタジーの世界を舞台としているが、魔法が廃れ科学文明が栄えてしまった社会を描く。そんな複雑な世界観を冒頭3分もしないうちにスムーズに説明しきってしまう魔法のような脚本と、PIXARの相変わらずの演出力に惚れ惚れしてしまう。

 

 しかし、そんなスケールの大きい世界観とは裏腹に、魔法の力で亡き父に会うために奔走するエルフ、イアン(トム・ホランド)とバーリー(クリス・プラット)の兄弟の絆を描いた物語はミニマルでとてもパーソナルだ。そして、この映画が僕の心に深く突き刺さったのは、バーリーがどうしようもなくボンクラ兄貴だからだ。

 

 バーリーは歴史とファンタジーオタクで、学業もせず定職にも就かずロールプレイングゲームに興じる日々で、母親にも将来を心配される。内気でシャイな弟イアンは内心バーリーを落ちこぼれだと思っているが、兄を傷つけたくなので優しく接している。イアンは自分が生まれる前に亡くした父を一目会いたい思いで冒険に出かけるが、一緒に旅に出るバーリーの出すアイディアがイマイチ信用できない。......ちょっと書いていて涙が出そうだ

 

 正直途中までは二人が出かける冒険のクエスト内容が少し楽すぎる気がして平坦な気持ちで見ていたが、ピクサー十八番の巧妙な脚本術とストーリーテリング力がクライマックスを盛り上げ、まるで最近新型コロナのアレでよく見る指数関数のグラフみたいに終盤にエモーションが爆発した。

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※イメージです。((

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 兄弟持ちは号泣すること必至なので、恥ずかしい思いをしたくなかったら一緒に見ないことをオススメする。日本ではアレのせいで公開延期となってしまったが、無事に劇場公開されたら僕も改めて観に行こうと思う*3ので、早くこの事態が一刻も早く治りますように......!

2分の1の魔法 (オリジナル・サウンドトラック)

2分の1の魔法 (オリジナル・サウンドトラック)

  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

*1: 

*2:それを本人に伝えてしまう母の無神経さよ

*3:日本で一つ確認したいのが、本作にはPXIAR史上初めてLGBTQのキャラクターがちょっとだけ登場するのだが、それがどのように処理されているかである。