【RIP】木村花

 あまりの衝撃に、ちょっと頭の整理がつかない。

 大前提として、まだ死因の詳細は調査中とのことで、詳報が待たれる状況であること、そして僕はプロレスラーとしてではなく、『テラスハウス』の出演者として木村花を認識していた、ということを述べておきたい。

 

 自戒の意を込めて正直に書くが、「『テラスハウス』っていうのは恋愛じゃなくて、クズを見る番組なんですよ!」というのは、僕が知人に『テラスハウス』をオススメする時の常套句だった。実際、『テラスハウス』という番組は、副音声やスタジオトーク、放映後にYouTube上で公開する「未公開シーン」や「山チャンネル」で散々出演者の欠点や常識はずれな部分に焦点を当て、積極的に煽っていた。これを真に受けたファンが出演者のSNSアカウントに「突撃」することは番組が作り出した一種の日常風景であり、僕は過去ブログ上でこんなことを書いていた。

 考えてみれば『テラスハウス』に出演するタレントたちもクセの強いものが多く、彼らの生活様式を真に受けた視聴者から批判が出たり時にSNSアカウントが炎上したりする。『テラスハウス』に出演するだけで、彼らのタレント生命をリスクに負わせていると言っても過言ではない。テラスハウス』もいけ好かない美男美女たちの、恋愛という試合で見せる命の削り合いなのである。

 

 「洗濯機事件」を受けて木村花が炎上していたのは知っていたが、先述したように視聴者が出演者を叩きに行くのはよく見かける光景で、「世の中には暇人もいるんだな」と僕は気にも留めていなかった。推測になってしまうが、番組スタッフもそうだっただろう。でなければ、わざわざ「未公開シーン」であえて燃料を投下するようなマネはしなかったはずだ。僕たちファンも、作り手も、残酷物語としての『テラスハウス』を現代の見世物として楽しんでいた。

 

 僕は『テラスハウス』を「命の削りあい」と評した。しかし、僕らファンの感覚が如何に異常だったか、ということに、実際に命が失われるまで気付くこともできなかった。とある未公開シーンで、花が「SNSの投稿なんか気にしていたら仕方ないから無視する」と言い放つ場面があった。その言葉を聞いて、僕は流石プロレスラーのメンタリティだな、とのんきに受け止めていた。しかし、弱冠22歳の女の子が、世界中から鋭利な言葉を投げつけられていたと考えると、今更ながら言葉が出ない。

 

 自分の番組へのスタンスを後悔してもしきれない。Twitter上でも今度は誹謗中傷を繰り返していたアンチへの批判が殺到している地獄の様相を呈しているが、端的に言ってこれは僕たち視聴者全員の責任だ。もっと過激なものを求め、番組スタッフと共犯的に出演者を追い込んでいったのは、他でもない僕たちだ。

 

 花ちゃん本当にごめんなさい、せめて天国では平穏に大好きなプロレスができることを心から祈っています。ご冥福をお祈りいたします。