治験にはパンデミックが必要?

 あんまり気分が明るくなる話ではないですが…。

www.nikkei.com

 

新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「アビガン」の臨床試験(治験)が遅れ、7月以降にずれ込むことがわかった。6月中に終了する予定だったが、足元で新型コロナの感染者数が急減し、治験の参加者数が目標に届いていない。治験の進捗次第では、承認手続きがさらに遅れる可能性がある。

(中略)

治験に参加する大病院のベッドが4月は重症患者で埋まり、治験の対象となる軽症・中等症の患者が少なかったことや、足元では感染者数自体も減ったことなどで参加者を集められなかった富士フイルムは治験を受け入れる病院や地域を広げて参加者を募っている。

 

 これを読んでいて思い出したのは、つい数日前に読んだこんなニュースです。

toyokeizai.net

 

新型コロナウイルスによるパンデミックの第1波は、どうやら収まりつつあるようだ。だがワクチン開発者にとっては、これが障害になりかねない。

(中略)

英ウォーウィック・ビジネス・スクールで既存薬再開発を研究するエイファー・アリ氏は、「治験を成功させるためには、人々が市中感染のリスクに晒されている状況が必要だ。ウイルスが一時的にせよ排除されてしまっていれば、治験も無駄になる」と話す。 

 

 つまり、今人類が渇望している新型コロナウイルス感染症を治すための治療薬も、予防するためのワクチンも、承認や開発する為にはある程度ウイルスが市中に蔓延している必要がある、という皮肉な実情が明らかになって来ました。本来は強力な都市封鎖により、感染者数の「カーブをフラットにする」ことで、時間を稼いでいる間に医療体制を整えて第2、第3波に備える「ハンマー&ダンス戦法」が*1世界各国の主たる新型コロナ対策だったはずなんですが、ますます厄介な疫病ですね…。一刻も事態が収まることを祈ります。

 

ワクチン: 基礎から臨床まで

ワクチン: 基礎から臨床まで

  • 発売日: 2018/10/15
  • メディア: 単行本