大炎上中のジミー・キンメルと、PCについての再確認

 僕はアメリカのレイトショーホストの中でもキミー・キンメルが大好きだ。先日、番組も3130回の放送を迎え、家族と過ごす為に18年間の歴史の中で初めて夏休みを取ることが話題となった。なお、この夏休みを発表した回では宿敵マット・デイモンも登場し、視聴者を喜ばせた。

 

 そのジミー・キンメルが、今大炎上している。右派よりのニュースメディアであるFOXニュースの記者が、ジミーが2013年のポッドキャストで黒人コメディアン ジョージ・ウォレスのモノマネをした音声、そして1996年にスヌープドッグのモノマネをし、黒人差別用語である「Nワード」を6回も使用した音声を入手し、スクープしたのだ。

 

 それだけでなく、ジミーが1996年〜2000年に放送されたスケッチ(コント)番組『ザ・マン・ショー』で、NBA選手カール・マローンをモノマネするために黒塗り(ブラック・フェイス)をしたコント、更に2009年のレイトショーでミーガン・フォックスをゲストに呼び、彼女が15才の時に出演した『バッドボーイズ2バッド』のセットでの出来事を、性的に揶揄したジョークで笑いを取った映像まで発掘された。アメリカのTwitterでは「#CancelKimmel(キンメルの番組を打ち切れ)」がトレンドに入っている。

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 ジミーの過去の言動にはファンとしてショックを受けたし、ガッカリもした。当然、許容されるべきものではない。しかし、僕が今回の騒動に歯痒さを感じているのは、ジミーは黒人や女性たちだけでなく、オルタナ右翼からも批判を集めていることだ。

 

 近年、ジミーはリベラルな芸風で知られ、番組内で散々右翼や人種差別主義者を笑い者にしてきた。ジミーの格好の標的だったドナルド・トランプ・ジュニアは、今回の騒動に嬉々として引用RTを行って批判し、オルタナ右翼たちもTwitter上でジミーをぶっ叩いている。ジミーは揚げ足を取られた形だ。

 

 つまり、オルタナ右翼は差別主義者たちは、普段自分たちに向けられているPCの刃をジミーの喉元に突き立てている。オルタナ右翼たちはマイノリティのために声を上げているのではなく、ジミーを潰すために声を上げているのだから厄介だ。数年前、ジェームズ・ガンオルタナ右翼たちを批判した際、ガンが過去に投稿した小児性愛的なジョークが発掘されてしまい、ディズニーにより『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol3』のクビを切られたことを想起させる。*2 

 

 先ほど敢えて詳細な年まで書いたが、ジミーのこれらの言動はかなり昔のものである。誤解を与えないように明記しておくが、過去の出来事なので水に流そう、と僕は言いたいのではない。ジミーの過去の差別的言動で傷ついた人は必ずいるので、その点については猛省すべきだ。

 

 ただし、人間は過ちを犯す生き物であれば、成長することができる生き物でもある。過去に酷い言動をしていても、今現在人道的な活動をしている人の方が、現在進行形で人を傷つけている人よりも、ずっと「正しい」と僕は思う。僕ハンドもこのブログの中で主張しているが、「PC」というものは自動的に当てはめるべきものではなく、文脈の中で逐一適用していくべきだ。

 

 なお、今回の騒動でジミー・キンメル本人も、『ジミー・キンメル・ライブ!』を放送しているABCも公式声明は出していない。ABCの親会社はPCをシステマティックに適用することで悪名高いディズニーなので、恐らく明るい判断はくだされないだろう。ジミーにはこれから茨の道が用意されているかもしれないが、自らを見つめ直し、精進して多くの人を笑わせていってほしい。それがコメディアンとしての使命だ。

The Serious Goose (English Edition)

The Serious Goose (English Edition)

 

 

*1:ちなみにやり取りの訳は以下の通り。このやりとりを読んでもらえるとわかるが、このエピソードに関してはマイケル・ベイも批判されている。

ミーガン:15歳で高校1年生になったばかりの時、私は『バッドボーイズ2バッド』でエキストラをしていたの。クラブのシーンを撮影していたんだけれど、星条旗のビキニと赤いカウボーイハット、6インチのヒールを着用した。マイケル(・ベイ)はそれを認めたんだけれど、スタッフが「彼女は15歳だから、バーに座れないし、お酒も持ってはいけないよ」というので、マイケルは私を滝の下で踊らせてビショビショに濡らせることにしたの。マイケルの頭の中はそんな世界でできているのよ。

ジミー:僕たちのほとんどの頭の中はそんな世界でできてるよ。中には良識によってそういった考えを抑制できる男もいるけどね。

*2:その後、ガンは復帰。