スケッチは時事ニュースを笑いに変えることで、視聴者に社会問題についての意識を向上させる。僕のスケッチチャンネル『スケッブック』でも時事や社会問題を積極的に取り入れることを目指している。が、日本には風刺の文化があまりない。いきなりメッセージ性が強いのをやっても困惑する人が多いと思うので、初回は「オンライン飲み会」をテーマにすることで、コロナ禍の情勢を軽く触れるに留めた。
久々にクリエティブなことをしている状況が楽しく、既に第二弾、第三弾と続々とスケッチの準備をしている。その中で、「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」を取り上げるべく、黒人の役者を探してFacebookの映画製作者ページに参加させてもらい、役者を募集した。
すると早速、「BLMの何が面白いのか?」「今現在も苦しんでいる人が大勢いる状況を考えたことがあるか?」といった旨のお叱りコメントをいただいた。日本でスケッチをやるのは、思っているよりも骨が折れそうだと頭を抱えた。
もちろん、そのコメントを残してくれた人の趣旨は理解できるし、批判を返すつもりもない。だが、差別に苦しんでいる人がいるからこそ、「笑い」によって社会的関心を高めることが、そもそものスケッチの狙いだ。アメリカ全土でスクールシューティングが問題になっていた時、『サウスパーク』は真っ先にネタとして取り上げて銃社会の狂いっぷりに警鐘を鳴らした。ドナルド・トランプが大統領になった時、SNLはすぐに移民排斥政策へ皮肉をたっぷり込めたスケッチを製作した。コメディは弱者を傷つける狂気ではなく、加害者や権力者に向けられた武器だ*1
そのFacebookの投稿で救いだったのは、当の黒人の方が『キー&ピール』のスケッチの動画を貼って僕の製作意図を擁護してくれたことだった。僕自身も元のポストが説明不足だったことを反省して補足コメントで説明し、批判した方も理解を示してくれたようで、平和的に全て解決できた。こういった批判はこれからも出てくるだろうが、僕はスケッチの概念が日本に定着できるまで、頑張っていく所存だ。
*1:だから、常に弱者を嘲笑うことを目的とした はすみとしこ の下品な絵は、本人が言うような「風刺」では断じてない。