『サウスパーク』シーズン24のニュースがなかなか出てこないなと思っていたら、いつの間にかトレイ・パーカーとマット・ストーンがピーター・セラフィノヴィッツと組んで『Sassy Justice(生意気な正義)』というYouTube番組をつい3日前に始めていました。
サムネを見て「トランプ大統領がいる!」と驚いたかと思いますが、この番組は巷で話題のディープフェイク技術を駆使して撮影されており、トランプの顔を貼り付けられたピーター・セラフィノヴィッツが、ワイオミング州シャイアン市のローカル・レポーター フレッド・サッシーを演じ、芸能界や政界に蔓延るディープフェイクを使ったフェイクニュースの危険性を報道する番組になっています。
このあらすじの時点で最高にバカバカしくてパンチの効いた風刺になっているのですが、元々『サウスパーク』内で散々セレブや政治家を登場してバカにして来たトレイ&マットに、新たに「ディープフェイク」という玩具が与えられたことで、初回からフルスロットルでハッチャケています。
例えば、ディープフェイクの危険性を訴える政治家としてアル・ゴアが登場。トレイ・パーカーの声で「真剣に(Serious)」を「シリアル(Cereal)」と言い間違えるという、『サウスパーク』のアル・ゴアと全く同じキャラクターなんですけれど、「ディープフェイク」によりアル・ゴア本人に言わせているかのような錯覚を与えます。
で、『サウスパーク』に引き続いてトム・クルーズもバカにされるのですが、「ディープフェイク技術が使われている」と称される映像は明らかにジム・ヘンソン的なマペットで、「オメコウンチ(Vagina Poop)」という謎の単語を発します。もちろん、サッシーはバカなので「これは本物のトム・クルーズではないのか!?」と驚愕します。
が、これが意外と真をついていて、実際にディープフェイクはモノマネなどと組み合わせることで、本人が言ってない言葉も捏造してフェイクニュースを作る危険性があります。ジョーダン・ピールはバラク・オバマのモノマネが得意なコメディアンでしたが、Buzz Feedと一緒にディープフェイク技術でオバマの映像を捏造し、その危険性を訴えるビデオを作って話題になりました。
そしてサッシーはマペットの映像がトム・クルーズのものかと信じ込むバカっぷりを見せますが、実際の我々大衆もそんなものです。ディープフェイクだけでなくとも、SNSに流れる記事の見出しだけに反応してあれこれ勝手にコメントするのはよく見かける光景です。人を騙す技術がどんどん進化している世の中なので、情報をよく精査する習慣をつけないと簡単に鵜呑みにしてしまいます。
と、色々と考えさせられるようで、結局はトレイとマットがいつも通り「オメコウンチ」と叫んで色んな人たちを怒らせているくだらなさに笑ってしまいます。他にもマイケル・ケインやイヴァンカ・トランプ、マーク・ザッカーバーク、スカーレット・ヨハンソン、トム・クルーズ、キャリー・アンダーウッド、ジャレッド・クシュナーなど豪華布陣が登場(?)してバカバカしいことを繰り広げるので、少なくとも『サウスパーク』のファンは見て損はないと思います。(一応英語字幕がついています)そしてこれを大統領選挙直前の絶妙なタイミングで公開したトレイとマットは、やっぱりニクいなぁ、と思います。
なお、クリエイターの1人であるピーター・セラフィノヴィッツをどこかで効いたことがあると思って調べたら、『スター・ウォーズ エピソードI ファントム・メナス』でダース・モールの声をやっていた人でした。人選が渋すぎる!