実写版『モンスターハンター』の人種差別的表現問題について

 日本が誇るゲームシリーズ『モンスターハンター』の実写版が、世界に先駆けて公開された中国において、中国人と日本人に対する人種差別的表現があったとして炎上中とのことです。


問題となっているのは、走行中の車のなかでの会話だ。MCジンとして知られる中国系アメリカ人ラッパーで俳優のJin Au-Yeungが、相棒の白人男性に「俺の膝を見てくれよ」と話しかけ、「いったいどんな膝をしてるんだ?」と聞かれ「チャイ・ニーズ(Chi-nese)」とダジャレを言う。膝(Knees)と中国人を意味するチャイニーズのニーズ(Nese)という音節をかけたジョークだが、中国ではこの表現が人種差別だと炎上。アジア人に対する差別的な意味が込められたアメリカの古い童謡「Chinese, Japanese, Dirty Knees(中国人、日本人、汚い膝)」というものがあり、その歌にかけたジョークと解釈されたからだ。 

(eiga.comより引用)

 

 僕は不勉強ながら全く知らなかったですね。自分がアメリカにいた子供時代に、この言い回しでアメリカ人の子供に虐められた記憶もありませんし。英語版wikipediaに項目があったので編集履歴を見てみましたが、明らかにこの問題が発覚してから作られた新しい記事でした。つまり、長いこと焦点が当てられていなかった差別表現のようです。

en.wikipedia.org

 

 試しにYouTubeでも検索してみると、ほとんどがこの問題が発覚してから投稿された動画か、あるいは大昔にアップロードされた動画*1、といった具合でした。ただ、どうやらこの歌を歌う際には、目を釣り上げる動作をするみたいで、つまりアジア人の細い(とされる)目つきをバカにしているものなので、よくもまあこんな差別的な遊びが今の今までここまで注目されずにいれたなぁと呆れました。

検索結果:https://www.youtube.com/results?search_query=chinese+japanese+dirty+knees+look+at+these

www.youtube.com

余談ですが、どうやら「Chinese, Japanese, Dirty Knees」では終わらず、続けてオチとして「Look at these(これをみて)」と服でおっぱいを膨らませるのが通例なようなので、「童謡」というよりは、思春期がやりがちな下ネタギャグなようです。なお、この動画は11年前の動画で、投稿者は『モンハン』事件によって過去の黒歴史が掘り起こされて炎上してしまっている状態です。デジタルタトゥー、怖い…。

 

 だから本当は「中国人」や「日本人」を「汚い膝」と並列することよりも、目を釣り上げる動作が一番の問題点なんですけれど、製作会社としては中国系俳優も出してビッグマーケットである中国や、『モンハン』のホームである日本にしっかりアピールしたつもりが、盲点だったところで足を掬われてしまった形になりましたね。(だからといって、決して許されるものでもないんですけれど)日本公開の際には修正が加わわるかどうかが気になるところです。

 

 ただ、YouTubeに無邪気(というか恥知らず)にもアップされているこうした「Chinese, Japanese, Dirty Knees, Look At These」動画たちに、怒った中国人、日本人ユーザーからのメッセージが殺到しているのは中々に感慨深かったです。あれだけ普段から嫌いあっている中国人と日本人が『パシフィック・リム』ばりに協力している!君たちさぁ、その怒りのエネルギー分だけ、もう少しNIKE CMとかBLM運動への共感に回してくれてもいいんだよ?根っこにある問題が同じなんだから…。

パシフィック・リム(字幕版)

パシフィック・リム(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/27
  • メディア: Prime Video
 

 

*1:コメント欄にはつい最近の日付の批判コメントばかりでしたが