「ドライブ イン ザ・ルーム」を無事終えたので、『ザ・ルーム』激動の2020年を振り返る

 おかしい、「ドライブ イン ザ・ルーム」が終わったらもう少し暇になるはずだったのでは…?昨晩3:30に寝ましたが、結局9:00には起きて作業して、何だかんだ色々あって今1:30...。正直もうすっぽかして寝ようかと思いましたが、流石に記憶がまだ新しいうちに書いておいた方がいいだろうと思ったので、頑張ってざっくばらんに書いておくことにしました。

 

 僕が『ザ・ルーム』というカルト映画を日本に持って来たかったのは、上映中にヤジを飛ばす独特のスタイルに惚れ込んだからでした。僕らは勝手にこの上映スタイルを「スプーン上映」と名付けましたが、17年間『ザ・ルーム』がアメリカで上映され続けるにつれ、いつしかスプーンが飛び交う唯一無二の伝統的鑑賞スタイルが生まれ、初めてNYの劇場で鑑賞した際は何が何だか分からないまま笑いすぎて過呼吸のまま終わってしまいました。

 

 

 そのうちビザの関係*1でアレコレあり、務めていた会社ともアレコレあって揉めて辞め*2、日本に帰ることになりましたが、最後の3ヶ月を思い切り好きなことして楽しむことにしてグダグダ過ごしていましたらトミー・ウィゾーが『ザ・ルーム』提げてイーストヴィレッジの劇場にやってきましたので、思い切って話しかけたら『ザ・ルーム』の日本上映権を手に入れた、というのは随所で話したことでありました。

 『ザ・ルーム』の配給権を手に入れたものの、劇場のツテがありませんので、数少ないツテを当たったところ、以前NYで一緒に働いて、日本でフリーのプロデューサとして活躍されているSさんの頑張りで「未体験ゾーンの映画たち2020」で公開が決定し、いよいよ劇場まで手配されてただ事ではない感じになっていきました。ついさっきググってる時にたまたま見つけましたが、Sさんのブログにこの時のことがSさん視点で書いてありました。

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 そして、だいたい今から1年前ほどですが、「未体験ゾーンの映画たち2020」開催記念の「予告編上映大会&スペシャトークショー!」にて、高橋ヨシキさん、てらさわホークさん、多田遠志さんが『ザ・ルーム』を紹介してくださり、イベントに参加したSさんからも報告を受けて、『映画秘宝』のファンボーイだった僕は非常に感激したのですが、今となってはもう遠い昔の出来事のように感じます。

 

 そうして、日本に帰ってから僕は、まず大学時代の友人である「ドライブインシアターつくる会」代表のKくんに相談しました。『ザ・ルーム』の日本公開を成功させるための絶対条件は「スプーン上映」を実現させることで、僕は日々劇場と何が可能か・不可能かを交渉し、なおかつKくんとは一緒に『ザ・ルーム』の予告編や「スプーン上映の楽しみ方」を作ったりしていました。Kくんは表ではぶつくさ言うけれど、完全に好意でやってくれているので、本当に頭が上がりません。

 

 

 一方で、この頃は大学時代から読んでいた『映画秘宝』に『ザ・ルーム』を掲載してもらって感激していた一方、洋泉社が宝島社に吸収合併されてしまい休刊してしまって衝撃を受けました。その後わずか2ヶ月で奇跡のスピード復刊を遂げたのは流石でしたが。

 

 また、同じく大学時代に『ウィークエンドシャッフル』時代から聴いていたライムスター宇多丸の『アフター6ジャンクション』にも僕とトミーに関する投稿が採用され、その後まさか電話出演を果たすことになるとは夢にも思っていませんでした。映画ファンボーイの夢が色々と昇華した時期でした。 

 

 

 が、一方、この頃から「対岸の火事」だったコロナが日本を襲います。「スプーン上映」に向けてスプーンなどを買い付け、劇場とも詳細を詰めていた2月後半ごろ、いつも思ったことをフィルターにのせないKくんから「私の見立てでは、『ザ・ルーム』が公開される頃にはパンデミックだね」なんて言われていました。ま、まっさか〜なんて思っていましたが、実際『ザ・ルーム』が公開される1週間前にはシンゾーくんが全国の小学校を一斉に急行したりして事態が急変し、劇場からの要望もあり、「スプーン上映」は中止となってしまいました。当時はショックでしたが、今考えるとKくんの先見力はさすがとしか言えません。

 

 

 しかし、『ザ・ルーム』そのものは無事に公開され、コロナ禍で映画館から客足が遠のいていたことも考えると、非常にいい成績を納めたと劇場からは聞いています。緊急事態宣言が終わった後に公開された梅田でも同様の成績でした。ただ、僕も何回か劇場を覗かせてもらいましたが、やはりというべきか、『ザ・ルーム』の面白さがイマイチ伝わっていない気がしまして、なんなら「大真面目」に『ザ・ルーム』を批評するレビュアーなんかもいたりしてヤキモキしました。「スプーン上映」さえできていればこんなことには……と、3ヶ月間の熱い気持ちがやり場がなくてフワフワしていました。ちなみにですが、実は「スプーン上映」中止が決定される前まで、高橋ヨシキさんにはゲストスピーカーとして登壇していただけるよう交渉していたのですが、まさかこんなに待っていただくことになるとは思ってもいませんでした。

 

 

 さて、コロナが始まってからは、『ザ・ルーム』としても、私Taiyakiとしても「無」の時間が長く続きます。この映画不況のご時世『ザ・ルーム』などというややこしいギミックの映画を公開したい劇場も現れず、僕個人としてもフリーランサーとして食っていこうと思った矢先のコロナでしたので、仕事もなく毎日テキトーにダラダラして過ごす日々を過ごしていました。

 

 一方、Kくんは、幸いにもと言うべきでしょうか、コロナ禍によって彼が昨年始めたドライブインシアタービジネスが大盛況を極めました。問い合わせが殺到し、半年間はほぼ休む暇がなかったと言います。僕も時々Kくんのドライブインシアターを手伝いながら近況報告していると、Kくんが「君がかわいそうだから『ザ・ルーム』をうちのドライブインシアターでかけてやってもいいけどな」とポロっと言いました。それが「ドライブ イン ザ・ルーム」の始まりでした。

 

 

 感染症対策で映画館で叫ぶことができないんだったら、車の中でつっこみをすればいいんじゃないか、というのはなるほど『ザ・ルーム』と相性が良さそうです。しかし、ただでさえ車で『ザ・ルーム』を見ると言うのもハードルが高いですし、『ザ・ルーム』をどうやって見たらいいのか分からない人がまだまだ大半だと思ったので、『ザ・ルーム』に詳しいゲストを呼んで副音声形式で上映するイベントを思いつきました。企画の段階で色々と見えました。

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 あとは、Kくんの時間が空くのを待つだけでしたが、夏の間は彼の稼ぎ時でしたので、秋にすることになりましたが、今度は会場のスケジュール問題で抑えられず、多田遠志さんを通して高橋ヨシキさん、てらさわホークさんもゲストとしてお呼びすることができましたが、トークゲスト、会場、Kくんのスケジュールを考慮した結果、今回12/17、12/18に開催することとなりました。

 

 そこからはあっという間に時間が過ぎて行きました。僕はマルチタスクが苦手で、他の仕事も並行してしまうとすぐにやっておくべきことを忘れてしまいがちなので、Kくんに日々怒られながら色々と準備を進めました。そして色々と不安を抱えながら迎えた12/17。この日はゲストが登壇せず、副音声は現地の上映音声が英語で流れるだけで、かつ木曜夜なので、あまり人が来ないことは予想していましたが、第一部、第二部含めてお客さんが5人しか来なかったのは流石にズッコけました。この時点で大赤字確定です。

 

 逆にもう色々と振り切れて気が楽になったのですが、なんと第二部ではブログ『三角絞めでつかまえて』でおなじみのカミヤマΔさんが貸切状態で鑑賞されました。Peatixに登録されているロゴで分かったので思わず声をかけてしまいましたが、上映終了後、カミヤマΔさんに副音声システムを絶賛されて翌日の上映に自信がつきました。カミヤマΔさん、改めてありがとうございました!

 

 さて、迎えた運命の12/18。僕は並行で進めていた別件の仕事のため、上尾の漫喫で仮眠をとりましたが、僕はヤケに緊張していました。高橋ヨシキさんも、てらさわホークさんも、多田遠志さんも、僕が普段「映画秘宝」を呼んだり、Loft Plus Oneのトークイベントでゲラゲラ笑っていた憧れの人たちばかりです。一応、事前にZoomでの打ち合わせもしたましたが、直接対面して仕事をするとなると、現実感がなくて落ち着きません。(といって、Zoomでの打ち合わせも超緊張していましたが)

 

 一番の心配は、やはりお客さんの数で、最悪17日は大失敗に終わってもいいけど、18日にはゲストもいる手前、お客さんが入っていないと大恥をかいてしまいますし、何よりお三方がトークしづらいはずです。車が全然来なかったらどうしよう、バイク状にきている人たちの車をお客さんということにして水増ししちゃおうか、などと小物みたいなことを考えて悩んでいました。

 

 そして、ゲストが会場に到着し、緊張したままオープニングトークで何を話すか、副音声の方向性はどうするか、車内の機材セッティングなどを済ませていきます。色々やっているうちに時間が光の速さで過ぎて行きましたが、お客さんは来るんだろうかと不安になっていると、会場時間18:30。お客さんの車がゾロゾロと会場にやって来るではありませんか!一般席で鑑賞される方もいらっしゃいます。というか、僕はゲストお三方のネームバリューをもう少し考えるべきでした、ほんの数台で済むはずがありません。

 

 嬉しいサプライズだったのは、このブログの読者の方がいらしたことで、車を案内したら「Taiyakiさんですか?いつもブログを読んでいます」と聞かれてびっくりし過ぎて仰け反ってしまいました。お約束の無料ポップコーンを差し出しましたが、あまりにもてんやわんわしすぎてお話しさせていただく暇がなかったのが気がかりです、また次ん機会に是非お越しください。

 

 さて、車も十分埋まったところでオープニングトーク。僕はカンペで色々指示を出すつもりでしたが、多田さんの司会進行があまりにも上手で、時間だしの指示をする必要もないくらい完璧に終わりました。この時点である程度予想はできましたが、さすらば本編はいわんやをやで、3人の鋭いツッコミに僕はディレクター席でひっきりなしに笑いっぱなしでしたし、何よりも観客の皆さんが拍手の代わりにクラクションとパッシングをし続けるという異様なまでに楽しい上映会となり、『ザ・ルーム』の本来の魅力をお客さんに届けることができて感無量でした。イベントが終わってからもエゴサーチをするのが嬉しくてしょうがなかったです。

 

 

 上映後は改めてお三方に挨拶をしに行きましたが、3人とも会場の盛り上がり様に喜んでいらっしゃったので安心しました。是非次回も、というありがたい言葉もいただき、憧れだった人たちから褒められた体験は何事にも変えることはできません。次回イベントもなるだけ実現できる様に頑張りたいと思います。ただ、てらさわさんも仰っていましたが、これは絶対に映画館でやるべきイベントでしたので、早くコロナが収束して皆さんと今度は劇場で再びスプーンを投げられることを願ってやみません。

 

 そして最後になりましたが、改めてKくんとSさんにはこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました、まだまだ『ザ・ルーム』を盛り上げられるよう、頑張ります。

 

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