もはや番長みすらある!/『ゴジラVSコング』★★☆

 モンスターバース最新作『ゴジラVSコング』をIMAX 3Dにて観賞。監督は『サプライズ』『ザ・ゲスト』のアダム・ウィンガード、脚本は エリック・ピアソン、マックス・ボレンスタイン、原案は テリー・ロッシオ、マイケル・ドハティ、ザック・シールズ。ゴジラキングコングの決闘に花を添えるのは、 アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウンレベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗旬エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、カイル・チャンドラーデミアン・ビチルら。

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  モンスターバースの始まりとなった2014年版の『GODZILLA』は、『映画秘宝』の年間ベストテンのベストとワーストに載ったことからもわかる通り、賛否両論を呼んだ作品だった。が、あれから7年経った今にして思えば、ギャレゴジはゴジラの「GOD」としての側面を最もよく捉えていた作品だったんじゃないだろうか。

 

 そんなことを、『ゴジラVSコング』のタイトルクレジットを見て思った。なんて言ったって、ジャンキーXLのドラム重視の音楽がドコドコ鳴り出し、地球空洞説を大真面目に唱え、終わりに「GODZILLA VS KONG」というタイトルがスクリーンいっぱいにデカデカと映しだされる。率直に言ってバカである。そして、これは監督のアダム・ウィンガードからこれからこの映画を見る観客へのステートメントだ。

 

 なんなら、本編も物凄い。人間ドラマがほとんど見られない。前回から引き続き登場するマディソンには何も新しいドラマが付け加えれていない。今回から新登場する登場人物たちも、それなりのバックグラウンドはあるようだが、それが本編で活かされることは一切ない。日本のメディアが喜んだ小栗旬だって、「芹沢」という名を与えられているにもかかわらず、キャラクターが掘り下げれることは1mmもない。そして各登場人物が何も考えないまま、最悪の選択肢を取り続けていく。

 

 誤解しないでいただきたいが、本作に限ってのみこの人間ドラマの描き方は全くもって正しい。2014年版『GODZILLA』が批判された理由の一つとして、上映開始から1時間経ってようやくゴジラが姿を現すテンポの遅さがあったけれど、ゴジラVSコング』は怪獣を出し渋ったりせず、最初からフルスロットルである。ストーリーの粗があったって、ジェットコースターのようなスピード感とテンポでアクションが次から次へと展開され、脳裏に一瞬よぎった瑕疵がかき消されていく。

 

 なんたって、本作は『ゴジラVSコング』である。日米を代表する二大怪獣が1962年以来の再マッチを果たすのだ。この二大巨頭の激突を描くことに全神経が集中されており、その分の余計な人間ドラマは排除されている。考えてみれば、オリジナルの『キングコング対ゴジラ』だって、大分緩くユーモラスな人間ドラマが展開されていたし、プロレスの興行のように楽しめる作品だった。

 

 また、本作でゴジラとコングが戦う理由もビックリだ。ザックリ言ってしまえば、どちらが強いか、ハッキリさせたいだけ。だから勝敗が決した時は、相手の命を取る必要はなく、不良高校の番長のように敗者を見下すだけでいいのである。そして街がぶっ壊されながら王者が決まる瞬間を、我々観客は小学生に戻って観戦するのだ。ああ、楽しかったなぁ。