覚悟も足りないし、スポーツを舐めている

 

 何度か書いた例で恐縮だが、2019-2020シーズンのNBAは全世界から注目を浴びていた。3/11にユタ・ジャズの選手ルディ・ゴベアの陽性が発覚し、コロナによって中断に追い込まれた初めてのプロスポーツリーグだったからである。同日に発覚したトム・ハンクスの感染も相まって、それまでコロナに対して楽観的だったアメリカがその日を境に一気にパンデミックへと雪崩れ込んだ。*1

 

 少なくとも30日間のシーズン中断が発表されたが、再開の目処が全く立たず、リーグに何億ドルもの経済損失を与え、一時はこのままシーズン中止も危ぶまれた。BLMなど別の問題もあり、様々な議論がなされたが、結果的に4ヶ月後の7月にフロリダ州オーランドのウォルト・ディズニー・ワールドの施設を貸し切ってプレーオフ進出可能性のあった22チームを招聘して2019-2020シーズンを再開した。世界初の「バブル方式」の実施であり、スポーツ業界全体がパンデミック後のスポーツ興行の行く末を占うオーランドバブルを固唾を飲んで見守ったことは言うまでもない。

 

 様々な苦難を乗り越えてシーズンを再開したNBAリーグの覚悟は凄まじかった。バブル内に入る人間は選手とコーチ陣、審判、運営スタッフ、許可を得た取材記者に限定、連日検査を行い、家庭の事情などでバブル内外を出入りする者は一定の隔離期間を義務付けられ、これを破った場合は罰則がある。スター選手だろうと、末端のキッチンスタッフだろうと例外はない。

 

 NBAは日本円にして150億を投じてバブルを作り、100ページに及ぶ感染予防プロトコルが記されたルールブックを作ったというが、そこにあるのは「絶対にウイルスをバブル内に持ち込まない」というリーグの鋼の意志である。3ヶ月ろくに家族にも会えず*2、家にも帰れないような選手達と運営の気の遠くなるような努力の甲斐あり、NBAバブルは開催期間中ただの1人も感染者も出さずに終えるという、前代未聞の偉業を成し遂げた。

 

 さて、7/23に東京オリンピック2020が開幕される。東京オリンピックNBAにならい、無観客のバブル方式で行うそうだが、既に87人の感染者を出している。運営は科学的なプロトコルよりも、色々な政治的背景や事情への忖度によって曖昧にルール決めを行なっている。入国選手の隔離期間は特例で短くなり、大会関係者が自由にバブル内外を外出している状況が続くなど、現時点で管理体制があまりにも杜撰である。

 

 丸川珠代五輪相*3は「対応を考える」と今更述べているが、あれだけ口にしていた「安心・安全」とはなんだったのか、呆れて物も言えない。そして都合の良い時だけ「スポーツの力」などと口にする。全くもってスポーツを舐めている。

 

 これを読むあなたの政治的立場がどうあれ、否が応でも東京オリンピック2020はあと数時間で開幕する。僕も馬鹿ではないので、今更もう勝手に走り出して止められないものを止めろとは言わない。ただ、「一度やると決めたんだったら、ちゃんとしろ」ということだけは声を大にして主張していきたい。何が「United by Emotion」だ。NBAの爪の垢でも煎じて飲め、ファック・ユー、ユー・ファッキング・ファック!

 

 

*1:詳しい経緯についてはこちらの記事をご参照ください

*2:プレーオフに入りチームが敗退してバブルを去るにつれ、残ったチームには家族のバブル入りが許された。が、当然厳しい人数制限や同様の感染防止プロト古老が義務付けされた

*3:この人は本当にフザけた政治家だと思う