スピルバーグとルーカスのDNAを感じる冒険活劇/『ジャングル・クルーズ』★★☆

 ディズニーの有名アトラクションを実写化した『ジャングル・クルーズ』を鑑賞。監督は『ロスト・バケーション』のジャウム・コレット=セラ、脚本はジョン・ノーヴィル、ジョシュ・ゴールドスタイン、グレン・フィカーラジョン・レクア、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。主演は製作も務めるドウェイン・ジョンソンエミリー・ブラント、共演にエドガー・ラミレス、ジャック・ホワイトホール、ジェシー・プレモンス、ポール・ジアマッティら。

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 いやー、驚いた。昨日の『イン・ザ・ハイツ』とは異なり、全く期待をしていなかった映画からあまりの楽しさに涙が出そうになった。ただ、ジャウム・コレット=セラが監督していたのは知っていたけれど、よくぞディズニファイされずにその手腕を遺憾無く発揮できたと思う。素晴らしい。

 

 何に感動したかって、画面の隅から隅まで、スピルバーグとルーカスの冒険映画のDNAを感じ取ったからである。宣伝でも積極的に名を使われているが、この感覚はまさしくゴア・ヴァービンスキーが監督だった頃の『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ以来だ。そして、これはディズニー版『スター・ウォーズ』が消費者搾取的に過去作品をただただ模倣したのとは異なり、スピルバーグとルーカスが目指した映画的快楽をとことん追求しているのが素晴らしい。(そして言わずもがな、それはヴァービンスキーが追求したものでもある。)

 

 時は20世紀初頭、第一次世界大戦の真っ只中。まだまだ女性への偏見や差別が根強かった時代に、エミリー・ブラント演じるリリーは、男社会は所狭しと暴れ回る。彼女は泳げない代わりに、上へ上へと登るのが得意なようだが、実際に映画内のアクションも上下のギミックをふんだんに使っており痛快だ。

 

 一方のドウェイン・ジョンソン演じるフランクは、誰もが知るリバークルーズ船の船長で、『パイレーツ〜』のような大掛かりな海上アクションは見れないけれど、小回りの効く船でスピード感溢れる冒険を展開する。地上を歩けば呪われたコンキスタドールたちやドイツ帝国軍人が襲ってくるし、陸・海・空でドタバタとアクションしながら<奇跡の花>を目指す。これぞ冒険映画の醍醐味だ。

 

 さらに、僕の琴線に触れるに触れたのは、ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽が明らかにジョン・ウィリアムズを意識していたことだ。しかし、これも安易な模倣には収まらず、テーマ曲が頭に残るくらいにはオリジナリティがあった。まるで80年代の映画館で、スピルバーグの新作映画でジョン・ウィリアムズの新譜を聴いているような喜びがあった。まさしく、ジャウム・コレット=セラがこの映画で目指したことを音楽でも体現している。

 

 僕が中学生の頃だったら、確実にリピートして見ていたくらいサマームービーとしては完璧だったが、大人になってしまった僕から残念だったのは、本作の余計なロマンスだ。何もロマンスがいらない、と言っているのではなくて、本作でエミリー・ブラントが演じていたリリーは、20世紀の男性優位社会なんぞモノともしないくらい芯の強い女性キャラであり、フランクとのケミストリーも抜群だった。それだけに、2人の関係が「ディズニー的」なロマンス関係に収まってしまうのは、非常に勿体なく感じてしまった。ただ、その欠点に目を瞑ってでも楽しい映画であるのは間違いがないので、この夏必見の冒険活劇であることは間違いなし!オススメ!

Jungle Cruise Suite

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