低予算の現場で初めて助監督を経験した僕がアレック・ボールドウィン事件に対して思うこと

 

 アレック・ボールドウィンの誤射事件が映画ファンをはじめとした世間に衝撃を与えていますが、初めて映画の現場に参加した僕は一種の同情のようなものを覚えています。僕が今入っている現場には、それぞれの役職で僕をはじめとする「初体験者」が多くいます。

 

 猿渡由紀さんが上記で指摘していたのは、「コストを抑えるため、ギャラが安くて済む経験の浅い人たちが雇われた」疑いによってこの事故が起こった点ですが、僕が入った現場も「低予算だから」を言い訳に低いギャラで映画業界に夢見る人たちが集められました。

 

 しかし、実際には長編映画の制作現場で素人ばかりをスタッフに集めるのはリスキーです。そんで今どうなっているかと言いますと、連日スタッフ間の確認不足で色んな事故が起きて、色んな人を怒らせて、色んなところで喧嘩が起きて、険悪なムードのまま毎日撮影をしていて、まるで時限爆弾の上に座っているかのようでした。経験値不足だけでなく、1ヶ月近く連日朝から晩まで12時間以上働かされ、全体的に寝不足と疲労で正常な判断が下せていないのも一因でしょう。

 

 少なくとも僕自身は色んなことが初体験であることために、逆に刺激があって楽しかったりするのですが、数少ない現場数をこなしている経験値のあるスタッフたちはどう見てもストレスが重なっていました。明日でようやくクランクアップなのですが、ここまで漕ぎ着けたのが奇跡のようですし、ハッキリ言って出来上がった作品に期待できるものは何もないです。

 

 まあ、僕らの現場なんて、この低予算なアレック・ボールドウィンの現場よりも更に桁が一つ違う予算で回しているので、銃を使った危険なシーンすら出てきませんが、それでもあまりにも認識の甘い現場だと死者すらも出し得ることを、今一度全世界の映画プロデューサーを名乗る人たちは耳の穴をかっぽじって聞いておいた方がいいですよ。

 

 ということで、明日でクランクアップ、頑張ります!