秘宝読者を(やっと)卒業します

 今月発売された2022年3月号を持って、2011年5月から愛読していた『映画秘宝』を卒業することにしました。

 

 本当は去年のあの問題が起きた時に買うのを止めるべきだったのかもしれませんが、「いつか何かしら納得のいく謝罪文が掲載されるはず」と信じて今日まで購入を続けていました。しかし、結局「諸般の都合」とやらでこの事件の経緯は一切紙面に載せられず、内輪揉めで抜けていた町山氏がしれっと復帰ということだそうなので、これを機に購読をやめることにしました。

 

 2021年ベスト号がキリがいいので今月号で読者を卒業するのは決めていまして、そんな折に町山氏が(相変わらず?)Twitterで醜い言動を繰り広げていたので、ある意味清々しい気持ちで離れます。ただ、僕が『映画秘宝』を買うのを止めようと思った理由は他にもいくつかあります。

 

 一つは、映画ファンとしての年月を経て、『映画秘宝』が特集するようなジャンル映画にそこまで食指が動かなくなってしまった、ということがあります。アメコミも怪獣映画もアクション大作もかつては愛したジャンルですが、コロナ禍という究極の非現実が日常になってしまったためか、今楽しみにしている新作を観に行っても絵空事にしか感じなくなってしまいましたし、細かいケチばかりつけてしまう退屈な人間になってしまいました。

 

 もう一つは、自分が映像業界(の端くれ)に身を置くにつれて映像制作の嫌な面だったり、ミニシアターの件や松江哲明の件、先の『映画秘宝』や町山さんの件もそうですけど、映画界隈にまつわるアレやコレやにドッと疲れてしまったんですね。最近僕の映画の鑑賞本数が少なくなったり、TwitterがほとんどNBAにまつわるものになってしまったのは無意識に映画から逃げている結果なんじゃないかと思います。

 

 いずれにせよ、『映画秘宝』はもはや習慣として買っていて中身もろくずっぽに読んでいなかったので、読者を卒業する何かしらの理由を自分でも探していのだと思います。

 

 でも、これを宣言するのは正直辛いです。だって、今の僕を作ったのは間違いなく『映画秘宝』と町山さんだったので。聞いたことも見たこともない映画の知識も、笑いながら映画を見る楽しみ方も、映画の裏にあるテーマを読み解こうとする見方も、差別や不寛容を許さない姿勢も、面白おかしく文章を書こうとする考え方も、全部。

 

 本当は11年間ありがとうと言いかったけれど、とてもそんな温かい言葉をかけたい状況で無くなってしまったのがただただ心底悲しい。さようなら、『映画秘宝』。