『サウスパーク』S25E03「City People」感想

 今回の『サウスパーク』の副題は「City People(街の人々)」。しかし、『サウスパーク』で「City」と言うときは、大抵サウスパークで中華料理屋を営むルー・キムの訛りに基づいて「Shitty(クソな)」という意味なる。ということで、今回のエピソードは感想で「シティ」と記しているときは「クソな」とダブルミーニングであることを念頭に読んでほしい。

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 カートマンのお母さんリアンは、仕事を得るために前回登場したサウスパーク不動産で面接を受けていた。部長によると、全米の街から人々がサウスパーク流入しており、不動産需要が増えており、晴れてリアンが採用されることになった。

 

 リアンは職を得て安心して家に帰ると、カートマンが不機嫌そうにiPadを弄っていた。「ママ!どこに行ってたんだよ!オイラが学校から帰ってきて45分間もママがいなかったから、ヌテラしか食べるものがなくて児童保護サービスに電話するところだったんだぞ!」「ごめんね、エリック坊や、お母さんは今度から働くことになったのよ」と聞いて衝撃を受けるカートマン。「ママの仕事はオイラを見ることだろ!」「でも、今サウスパークの人口が増えていて、家賃もあがってきたし、仕事をしないとこのままだと私たちこの家に住めなくなるのよ?」「仕事って何をするんだよ!ママには何もできないだろ!?」「私は不動産業者に入ったの」「不動産業だって!?」

 

 激怒したカートマンはバターズの家に行く。「バターズ!助けてくれ!オイラの母ちゃんが仕事を始めるんだ!」「なるほど…エリックはママが側にいてくれなくて寂しいだね」「は?ちげーよ、母ちゃんが仕事を始めるんだ。母ちゃんは死ぬほどバカなんだ。バターズ、不動産業って聞いたことあるか?」「よく分からないけど…」「オイラも知らなかったから調べたんだ。何もする必要がないんだ。ただいい人を演じて、ハグをして、そして誰かが家を買ったら自分に金が入るんだ」「わあ、なんていい仕事なんだ!」「それどころかこれは合法的な泥棒だぜ!もしオイラの母ちゃんに不動産屋ができるなら、オイラにも不動産屋ができるはずだ。さあ、バターズ、オイラの写真を撮ってくれ」と、満面のスマイルで営業写真を作るカートマンが冒頭にあげた写真だ。

 

 さて、リアンの不動産屋としての初日。ニューヨークから内見に訪れた、リッチでシティな家族を案内する。シティな家族は到着するなり「ボトルウォーター、ボトルウォーター」と鳥のような鳴き声をあげ、変な雰囲気。「初めまして、お電話で話しましたね?私がリアンです」と紹介すると、「…ピラティス」「はい?」「近くに私の妻がピラティスができるジムはあるか?」「ピラティス…ボトルウォーター?テスラ、Wi-Fi」と都会らしいことを言うだけで何も会話にならない

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 そこへカートマンが別のシティな人々を引き連れてやってくる。「この家は3つのベッドルームと3つのバスルームがついた物件ですよ!」と見事な営業トークを披露するカートマン。ただ、彼が案内する客も「コルタード、Wi-Fiピラティス」とつぶやくばかり。「エリック!何やってるの!」「ああ、オイラの客たちに物件を案内してるんだ」「あなたは不動産業者じゃないでしょ!今すぐ家にかえりなさい、後でたっぷりお仕置きしますからね!」「ママ、不動産はオープンな市場なんだ、ママだけがシティから来た人々を案内できる訳じゃないからね」と資本主義の本質をついてくるカートマン。「ここはサウスパーク不動産が所有する物件です!勝手に入ってきて案内してはいけません!」「いいよ!オイラにも友達はいっぱいいるから、オイラにはオイラの不動産リストを作ってやるよ!」と憤慨してカートマンは対決を宣言する。

 

 一方で、サウスパーク町議会。日に日に増えていく人口に、町の経済が潤うのではないかと町民が色めき立っていた。ルー・キムも珍しく上機嫌。「シティな人々が来てくれるのはいいことだ!このシティな人々はシティな服を着てやってきて、大きなシティな車に乗ってくる。そしてこのシティな人々はシティなやり方で物事を進めシティなアイディアを披露してくれるんだよね!シティなお金シティなライフスタイルで、シティな家族を連れて引っ越してきて、文化的でシティな子供たちが私たちの子供たちと遊んで、シティな生き方を見せてくれるんだ!」「これが未来なのね!」と町の人々は大喜び。

 

 しかし、サウスパーク不動産の社員の顔は浮かない。なんと、カートマンが見事な営業スキルで客を次々に奪い取っているのだ。「敵ながら見事としかいいようがない…みろ、この写真の完璧としか言いようがない角度と笑顔を!こうしちゃおられん、我々も完璧な営業写真を撮るのだ!」と、背骨を折らんばかりの角度と表情筋が壊れるような笑顔で社員が次々と写真を撮っていく。こうして不動産戦争がサウスパークで活発化していくのであったが…!

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 トレイとマットの「LAとかNYに住んでいる都会の人たちって、いつも上から目線でムカつくよね!」という嫌味がたっぷり詰まったエピソード。シティな人々の空っぽ具合を表現するのに、「ボトルウォーター」とか「テスラ」とか「アサイーボウル」とかとにかく薄っぺらい流行の単語しか発しない烏合の群れとして描いていたのは痛快だった。

 

 もう一つ焦点が当てられていたのは全米の住宅価格の上昇。僕は経済に明るくないので偉そうなことは語れないが、実はつい最近まで引っ越し先を探していたばかりで、その際不動産屋さんと話してコロナ禍をきっかけに日本の住宅価格がどんどんあがっていることを知った。これが全世界同様の理由であがっているのかは僕には定かではないが、少なくともアメリカにおいては昨年の4月の時点で「奪い合いの様相」を示していたほど住宅人気が高騰していたそうだ。
(ソース:https://shikiho.jp/news/0/422711

 

 ただ、当然住宅を奪い合えるのは金持ちの特権で、一般市民にとってはただでさえ苦しい賃料があがるだけだ。こうした貧富の格差の拡大に寄与しているのが不動産業者による過剰な市場競争であり、その責任の一端を当エピソードになっている。そういえば、僕が嫌いな不動産業者は大抵このエピソードのカートマンみたいな顔してたんだよなぁ。