一人で作る映画VS十人で作る映画

 昔、所属していたサークルで参考書としてこの本が推奨されていました。

 実際、入門書としては良い本なのですが、タイトルに少し難があると思います。映画を一人で作るのはなかなか至難の業だと思うからです。

 

 果たして、本当に一人で映画は作れるのか?という疑問に答えたのが、今日観たこちらの動画です。

 

 これは「FULLTIME FILMMAKER」というオンライン映像講座を教えているパーカー・ウォルベックという映像クリエイターのチャンネルで、彼の教え子が『アダム・プロジェクト』の1シーンを再現するチャレンジに挑むですが、一人で監督から撮影、照明、録音、編集など全部門をこなしながら撮った後、同じシーンを今度は10人のスタッフを雇いながら撮って、その出来がいかに違うかを比較したものです。

 

 この教え子さんはこのチャンネルの常連で、経験も技術も知識もあるのでそれなりに良い映像が出来上がっていますが、それでもクオリティの差は一目瞭然だと思います。この動画で一番大事なのは、バジェットのことも教えているんですよね。つまり、クライアントから$10000の予算が与えられて、それを一人で撮った場合は全て独り占めできるけれども、当然より質の良いものを作るにはスタッフを雇ったほうがいいわけで、人件費を払いつつ利益が出る予算計算の方法も教えてくれます。

 

 これはむしろ映像クリエイターというよりも、映像を発注しようと考えているクライアント側に是非観てほしい動画です。僕もフリーランスの端くれとして映像制作を注文されたことが何度かありますが、ほとんどが明らかにワンマン稼働しか考えられていない予算しか組まれません。その割に魔法がかかったかのように素晴らしい作品を期待されてしまうのですが、人件費を削ったらその程度の映像しか生まれませんよ?ということです。

 

 まあ、僕のケースは小さな企業の低予算ネット広告くらいの話ですけど、この発想が日本の映像制作現場に蔓延していることが病理であり、正直日本と海外の映画でここまで差が生まれてしまったのは、予算の面が一番大きいと僕は思います。