『サウスパーク』S25E05「Help, My Teenager Hates Me!」感想

 当ブログで休止していた『サウスパーク』S25レビューを再開!大変長らくお待たせしました、今回レビューするのは近年の中でも雰囲気が最も初期に近いエピソード「Helo, My Teenager Hates Me!」です。

 

 ジェラルドが部屋で仕事をしていると、カイルが仲間達の間で流行っているサバゲーのモデルガン(Airsoft;エアソフト)をおねだりしにやってくる。興奮するカイルの勢いに押され、訳もわからぬままサバゲー専門店に行くと本物さながらにビッシリ並べられた銃器にジェラルドはビックリ。「これって、安全なんですか?」とジェラルドが聞くと、店員さんは渋い顔。「安全とは断言できないね…AK-47でもグレネードでも、ここにある武器は全てBB弾が込められているだけだ。ただ、安全かどうかは、使用者による」「使用者って誰のことを言ってるんですか?」「…ティーネイジャーたちだ」と不気味に答える店員さん。

 

 さて、せっかく買ってもらったBBガンを試そうと、スタンやカートマン、ケニーと一緒にサバゲーフィールドに向かったカイル。しかしそこには反抗期真っ盛りで、何にでも皮肉で返すニキビヅラのティーネイジャー集団が待ち構えた。最初、係員がティーネイジャー集団とチーム・フロッピー・ウィンナー(フニャチン)こと小学生4人組を戦わせそうとするが、「そんなの簡単すぎる、ダリィ〜」と猛反対を受けたので、それぞれのチームが半分ずつに分かれた混成チームで競うことに。

 

 小学生とティーネイジャーが入り混じったサバゲー戦争は、思いのほかハリウッドの戦争映画並みの大盛り上がり。子供たちも大満足で帰路に着く。「超最高だったな!まさか引き分けになるなんて!」「それだけじゃなくて、ティーネイジャーと友達になったのも最高だな!」「ああ、僕なんて後でBBガンの手入れ方法まで教えてもらう約束までしたよ!」あまりの楽しさに、前々回のエピソード*1で家を失ったカートマンは泣き出してしまったほどだ。「マジにサバゲーは最高だ…ここ最近の辛いことが全部忘れられる…!なあ、オイラたち、絶対に毎日サバゲーしような!」と4人組は絆を深め合うのであった。

 

 その晩。ウキウキしながらお母さんのファウンデーションで顔にできたアザを隠しているカイルを、ジェラルドは心配そうに見つめる。そんな折に、家のベルが鳴る。「あ、僕のティーネイジャーが遊びに来てくれたんだ!」と大喜びで玄関を開けると、ティーネイジャーとそのお母さんが立っていた。「あなたがカイル?うちのドレヴァーが、今日からあなたのティーネイジャーだって言ってるんだけど?」「うん、その通りだよ!」「あらそう、じゃ、頑張ってね」とトレヴァーを置いて去ろうとする。

 

 「待てよ、何時に迎えにくるんだよ?」とトレヴァーが不機嫌そうに母親に聞くと、「連絡だけして。ただすぐには電話しないでね、ママもリラックスがしたいから」と去っていく。「いいさ、お前の顔なんか見たくねーよ、クソババア!」と中指を立てた反抗期のトレヴァーは、ドサッとカイルのソファーに座り、テレビをつける。「えっと、じゃあ早速エアガンの手入れ方法教えてくれない?」とカイルが聞くと、「俺は今餓死しそうなんだよ!早く何か作って来んない?」「あ、うん、えっとじゃあ何が食べたい?」「うるせーな!ほっといてくれよ!」と癇癪を起こすので、カイルはお望み通りトレヴァーを一人にしてあげる。

 

 一方で、スタンの家では。スタンがエアガンを磨いていると、スタンが今日連絡先を交換したティーネイジャーから連絡がかかってくる。「もしもし?」「おい、どうやってラーメンを作るんだよ?」「なんだって?」「俺は餓死そうなのに、ラーメンの作り方の説明が馬鹿馬鹿しくて読めないんだよ!」「えっと、水を沸かしてお湯を入れればいいと思うんだけど…」「水はどうやって手に入れるんだよ」「あの…シンクはある?」「5つ星のシェフじゃなくて悪かったな!」とこちらのティーネイジャーも癇癪を起こし、戸惑いを隠せないスタン。

 

 2人だけでなく、カートマンやケニーの家にも不機嫌なティーネイジャーたちは現れ、それぞれ生活能力が恐ろしく低いワガママを述べては、癇癪を起こして4人組を困らせる。せっかく新しく見つけた趣味も、ティーネイジャーたちの世話に追われてしまい、だんだん楽しくなくなっていくのであったが…!

 

 近年の『サウスパーク』では珍しく、時事ネタを取り扱わずにキャラクターベースのギャグのみで構成された回。自分では何もできないくせに反抗的で、しかし少し注意したらすぐに大袈裟に拗ね、隙あらばオナニーをするティーネイジャーに大笑いしつつも、思春期の自分を少し重ね合わせてしまって恥ずかしくなった。大概どこの国のティーネイジャーも一緒なんだな。

 

 先日も書いたが、『サウスパーク』S25は史上最も少ない話数で構成されたシーズンだ。『サウスパーク』は2010年代あたりから、1週間以内に企画構成から脚本、収録、アニメーション制作、納品、放送をするという狂ったまでに超過密スケジュールを保っていたことで、フレッシュな時事ネタを取り入れていることがウリだった。

 

 しかし、コロナ禍によってテレワークで作業せざるを得なくなったため、スタジオにほぼ住み込み前提で行われていた制作が不可能になってしまったと予想される。そのため2020年と2021年は長尺のテレビスペシャルと劇場版しか制作することしか敵わなかった。

 

 2022年に始まったS25は一応週一体制がとられたが、6話という短いシーズンであるにもかかわらず、1週休みを挟んでいたくらいなので、おそらく昔ながらのスタジオ制作はまだ復帰できていないのではないだろうか。そのために、このエピソードのような時事ネタに頼らないエピソードを作り、ある意味でその反応次第でシリーズの未来を占っているかのようにもみえる。

 

 が、やはり僕は近年の『サウスパーク』の攻めた姿勢が好きだったので、このエピソードは少し淡白に感じてしまったのは否めない。今後トレイとマットがどういう判断をシリーズの方針に沿えるのか、注目である。

 

 

*1: