アメリカン・ハラスメント

 ずっと積み本していた元ディズニーCEOのロバート・アイガー自伝をようやく読み始めたんですけど、中々に波瀾万丈で面白いです。

 

 ボブ・アイガーは誰もが知る世界企業のCEOになる前、彼はABCテレビの雑用係からキャリアをスタートしたそうですが、70年代のアメリカのテレビ業界もハラスメントが横行していたらしく、ボブが回顧するハラスメント内容に衝撃を受けました。

 (当時ボブが担当していた『ABCイブニング・ニュース』の)放送が終わると、キャスターのハリー・リーズナーとマネジャーのホワイティはすぐにセットを出て、西67丁目にあるホテル・で・ザルティストのバーに直行していた。

(中略)

 私の仕事の一つは、プロデューサーがその日の録画を見直すまで待って、遅い時間帯の地域で放送される前に取り直しや更新が必要な部分があれば、それをハリーとスタジオのクルーに知らせることだった。ある晩、ハリーは二杯目のマティーニを注文しながら、私にスタジオに戻ってプロデューサーに様子を聞いてこいと言った。私はすぐに編集室に行って「ハリーから様子を聞いてこいと言われました」と伝えた。プロデューサーは思い切りバカにした目つきで私を見た。そしてズボンのチャックを下ろしてイチモツを取り出し、こう答えたのだ。「さあ、知らんね。見りゃわかるだろ」

 

 当然、この世のありとあらゆるハラスメントはクソで、断じて許されるべきではありませんが、大の大人がやる嫌がらせとしてはあまりにも稚拙で衝撃を受ける一方、不謹慎ながら実にアメリカらしいハラスメントだな、とも思いました。ちょっと例えがズレてしまいますが、英語の罵り文句として「オレのタマ/チンチンを舐めろ(Suck my balls/dick)」とか「オレのケツにキスしな(Kiss my ass)」などがあり、常々どうして自分の隠部を舐めさせたりキスをするように迫ることが相手を罵ることになるんだろう?と疑問に思っていましたが、ボブが体験したこのエピソードも似たセンスを感じます。あ、でも日本でも相手をバカにする時に半ケツ出して叩いたりするか…。

 

 なお、この文章の後、ボブはこのように続けています。

あれから45年もたった今でも、その場面を思い出すと腹が立つ。当時に比べればやっと意識が高まり、職場は構成で平等になり、嫌がらせも減ったが、ここまでくるのに時間がかかりすぎた

 

 えーっと、未だにまともに改善できてない国があるんですけど!!!

 

 僕も早くこういう回顧録が書けるような世の中になって欲しいですね…。