『ライト&マジック』は熱血人間ドラマの傑作

 最近仕事が深夜帯(今日も3:00に終わった)で夕方出動なので、昼の時間にディズニー+の『ライト&マジック』を見る生活をしていまして、遂に完走してしまってジーンとしていたところです。というのも、『ライト&マジック』はただILMの功績を追ったドキュメンタリーではなく、映画史を変えた特撮集団がアイディアと技術で新しい表現に挑戦した熱い人間ドラマだったからです。

 

 元々はただ『スター・ウォーズ』を作る為だけに集められたはずだったのが、会社の為に色々な作品を引き受けていくうちにいつしか映画業界でも知れた存在となり、新しい作品を手がける毎に頭を悩ませて新しい手法を確立し、それが業界の新しいスタンダードになっていく行程には思わず拳を作ってしまいます。

 

 しかし、CGなど新技術を発展させていく一方で、かつて会社内でも主流だったはずの昔ながらなモデルショップやストップモーションの技術者たちはどんどん時代遅れの存在となっていき、肩身の狭い思いをするようになっていきます。特に『ジュラシック・パーク』の製作をめぐる、フィル・ティペットとCG部門のマーク・A・Z・ディッペ&スパズ・ウィリアムズの確執はハラハラしましたし、驚異的なCG技術を前にして動揺した時の気持ちを語るフィル・ティペットの表情が切なすぎて涙が出そうになりました。このドキュメンタリーでフィル・ティペット双極性障害を告白しており、「何かを作っている時だけ心が安らぐ」と語っていたのも拍車をかけます。

 

 しかし、ご存知のようにスピルバーグと親友のデニス・ミューレンはそんなフィルを気遣ってか、恐竜の動きのアニメーション監督としてフィルを起用しました。前にブログにも書きましたが、『ジュラシック・パーク』の恐竜のリアリティは新旧の技術の掛け合わせのおかげなのです。

 

 さて、このドキュメンタリー終盤で、現代のCG技術が発展しすぎたことで、一周回ってストーリーが大切になってしまったことを繰り返しクリエイター達が主張しています。最近、ハリウッド大作を見ても「なんだかな〜」と首を傾げることが多くなってしまいましたが、何だかそのモヤモヤの理由が分かったような気がします。もう徹夜仕事の限界が来ているのでこの辺りにしますが、映画鑑賞の新しい視野を広げてくれるという意味でも『ライト&マジック』はオススメです!