最近の映画は「信じられない」から残念

 予定から先ほど帰ってきまして、もう遅いので今日も寝たいところですが、もう一個今日見返した『ロード・オブ・ザ・リング』の素晴らしさは「VFXが信じられる」という事ですね。最近マーベル映画に疲れてきている理由の一つはあからさまに「CGしているCG」でありまして、これは皆さん報道でもご存じの通りマーベル映画の過酷なポスプロ現場状況が悪影響していると思いますが、昨今のマーベル映画はただ物理的に現場で撮れないものを業務作業的にCGで補っているだけにしか見えず、そしてそれがCGである事を隠そうとしていない、というか隠す余裕がないように見えます。

 

 でもこれはまあマーベル映画の問題というよりかは『ゴジラVSコング』『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』などでも感じたように、商品性が高まった近年のハリウッド映画の傾向なのかもしれません。他方で『ロード・オブ・ザ・リング』はもう20年以上の映画であるにもかかわらず、どこまでロケ撮影に頼るのか、どのシーンをセットで見せるのか、何をプラクティカルエフェクトで見せるか、どこにCGを使うかの判断が絶妙で、本当に中つ国の実存を信じさせてくれるんですね。IMAXの巨大スクリーンで見ても昔の技術の粗などは見つからず、「ああ、CGを使ってるなぁ」なんて事を気にせず純粋に世界観を楽しむことができました。

 

 ディズニー+で配信されていた傑作ドキュメンタリー『ライト&マジック』でもILMの面々が如何に空想世界を現実的に表現できるかにこだわり、『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』などの歴史的な作品を生み出していったかが伺えましたが、最近の大作映画では資本主義的な姿勢ばかりが先行してしまい、『ロード・オブ・ザ・リング』のような野心的な作品を見る機会が減ったのが非常に残念です。

 

 が、これを書いていて思い出したのは、同じく「CGで撮ってるかどうか」なんて余計な事を一切考えさせないで見せてくれた最近の作品は『トップガン:マーベリック』だったなぁと思います。もちろん、あくまで生身のスタントにこだわるトム・クルーズ作品なので、そもそもリアルなものが映像に捉えられているのでしょうが、それにしたってCGを使っていない映画はウンチをしないアイドル並みに存在しない事であって当然『TGM』でも一部使われている部分はあります。しかし、やはり実機飛行シーンは生で撮る、などの狂った野心がとんでもないリアリティを生んでいる事は間違いなく、『TGM』はその世界を信じられるからこそこれだけ世間の絶賛を呼んでいるんじゃないでしょうか。