僕と『アバター』の思い出

 昨晩深夜の回で『アバター/ウェイ・オブ・ウォーター』を観たので(2時近くに終わりました。今朝4:30起きだけど!)、僕と『アバター』の思い出を。

 

 2010年2月。僕は既に浪人が決まった受験生だった。センター試験足切りにあってしまい、志望校を受験する前から不合格が決まっていた。高校3年生の時、僕は自分の学力不足から全ての娯楽を1年断つ事を決めていた。インターネットもテレビもゲームも漫画も、そして大好きな映画も一年我慢した。

 

 しかし、努力の甲斐なく、というか1年程度の勉強では現実は甘くなく不合格となった。狭い視野の世界観で生きる高校生にとって、受験はその時の人生の全て。どうしても志望校以外の大学に行く気が無かった僕は、一気にモチベーションを失ってしまった。*1

 

 が、僕自身が浪人モードに切り替えていても、学校側は実績欲しさに無理やり僕に色んな私立の大学を受けさせていた。行くかもない大学の入試なんて当然やる気が出るはずもなく、当時の僕は息抜きだと言わんばかりに受験会場にニンテンドーDSを持ち込んで科目の間で遊んでるくらい酷い態度で臨んでいた。

 

 全寮制の学校だったので、試験の後は寮に戻っていたが、ある入試の後帰り道に映画館を見つけた。ポスターを眺めていると、3Dで話題の『アバター』がロングランで上映されていることに気付いた。(『アバター』は2009年12月なら公開)

 

 校則の厳しい学校で、本来は寄り道せずに寮まで帰らないといけず、僕も中高時代はバカ真面目だったので校則を破る事もなかったが、自暴自棄モードになっていた僕は、どうせまた1年映画が観れなくなるんだから、ええいままよ!と映画館に吸い込まれていった。

 

 もう公開から大分経った劇場は流石にまばらだったけど、それでも少なくない観客が入っている。*2映画を見る行為自体が久しぶりだったので、少しのワクワク感としかしある程度受験で荒んだ心で3D眼鏡をかけた。

 

 2時間半後。ぶったまげた。呆然として場内が明るくなった後もしばらく席を立てなかった。元々ジェームズ・キャメロンは好きな監督ではあり、メカデザインの格好良さやスペクタクルなアクションにも興奮したが、生きたパンドラの生態系が、ナヴィ族の文明が作られていた。何より革命的な3D表現で、あたかもパンドラの中にいたかのような感覚は今でも忘れられない。

 

 僕が大学受験なんてちっぽけな物に絶望していた頃、ジェームズ・キャメロンは壮大な宇宙を創り出したのだ。『アバター』は物語のシンプルさや『映画秘宝』誌がジェームズ・ギャメロンに手厳しかったこともあり、日本では当初から賛否両論だったが、僕にとっては人生や世界についての視野を広げてくれる素晴らしい作品だった。

 

 さて、『アバター』に感動してから12年。割と誰も待っていなかったような今更の続編(しかも5部作の予定)たる『アバター/ウェイ・オブ・ウォーター』が公開された。詳しくはTwitterで書くけど、綺麗な海の世界や神々しいクジラなど、相変わらず世界観を拡張して描くのは良かったけれど、前作で観たような光景が多かったり、話自体は家族の絆みたいな陳腐なところに落ち着いちゃって、元々そんなに無かった期待値を超える作品では残念ながら無かったなぁ…。まあ、干支も一周して僕も大人になってしまったということかもしれないね。

 

 

 

*1:結局、一浪してもその志望校に行くことは無かったけど、それはまた別の話

*2:記憶違いの可能性もあるが、3D映画ブームの火付け役となった『アバター』は当時とてつもない集客力を持っていた。