台湾旅行記 vol.7 〜マクドナルド事件〜

1月7日

 ホテルのビュッフェで朝食を食べるが、ものすごく豪華。しかし、昼に有名な鴨肉のお店に行く予定で、そこは死ぬほど量が出るらしいので、泣く泣く少量しか取れず…と思っていたが、朝食に魯肉飯を取ろうとしたら炊飯器がほとんど空で、気を効かせた店員が大盛りにして持ってきてくれた。僕は食べ物は絶対に残さない主義なので、全部平らげようとしたら、婚約者に昼が入らなくなるから残せと言われ、僕も頑固なので意地でも全部食べてちょい喧嘩。しかし、我々の喧嘩なんて可愛いものだと、のちに知らされることになるー。

 

 泊まっていたホテルはとても豪華で広いホテルだったが、そんなホテルに何泊もできる金銭的余裕はなく、今晩の宿はAirbnbの民泊に移るのでまたチェックアウト。次の場所がまた遠いので、レンタカーを借りる。この車がのちのちにとある事件の「キー」となるのであった…。

 

 温泉街から車を30分ほど走らせ、宜蘭中心部にある「蘭城晶英酒店」というホテルへ向かう。この五つ星ホテル内にある「紅樓中餐廳」が目当てで、ここが冒頭で述べた鴨肉のレストランである。数ヶ月前から予約必須の超有名店だ。まず驚くの店のデカさ。いや、レストランというかホテルの結婚式披露宴会場を仕切りで分けたような作りなので、そりゃダダ広くて当然である。

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 鴨肉を中心とした料理が展開され、どれもこれも超美味しいのだが、事前に警告されていた通り量が尋常じゃないので泣く泣く残すことになる…。結局、朝に婚約者が言っていたことが正しかったということですな、トホホ。なお、僕が一番好きだった料理は最初に出された鴨皮寿司。

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 この昼食中、ずっとゲラゲラ笑わされていたのは義妹とアメリカ人のボーイフレンドの会話。なんていったって、ずーっと喧嘩していて夫婦漫才とかしているのだ。題材は多岐にわたる。「彼が緑の野菜のことを全てキャベツと呼ぶ」「彼が全ての飲み物に対して同じコップを使う」「物価高により、LAのマックの値段は高くなったか否か」…などなど、二人とも恐ろしく知的でしかも論理的に話を展開するので、どれもこれも長く言い合っているかと思えば、ちょっと目を離した好きに全く別の話題で喧嘩している。もちろん、「喧嘩」といってもお互いに笑いながらツッコミ合っているので、本人たちも気が合うからこそ楽しんでいるし付き合っているのだろう。僕らは平和に笑っていたが、こんなのはまだ序の口であったとはこの時思っても寄らなかった…。

 

 飯後、さらに車を30分ほど走らせ、交通量の少ない田舎の方へ。日も暮れたのでAirbnbのお家に泊まりに行くと、あらやだこれまたびっくりな大豪邸。日本円で約5000円で泊まれると聞いたので、驚きである。人のいい店主が出てきて色々と説明してくれるが、中国語が分からなくても話が長いことが伝わってきて、ふと横を見ると婚約者と義妹が苦笑いをしている。

 

 流石に昼食を食べすぎたので、夕食は軽めにということで、僕と婚約者は家に残り、義理の妹とボーイフレンドが夜市へ軽食を買いに行った。彼らが戻ってきた後、一緒にAirbnbのダイニングで軽食を食べたが、ボーイフレンドの食べ物の中になんとホッチキスの針が入っていた。日本やアメリカだったら大問題に発展していただろう。しかし悲しいかな、この食べ物は台湾の田舎町の屋台で購入したものである。もちろん、あってはならないことだが、起きても正直おかしくはない。

 

 激怒するボーイフレンドは僕に提案してきた「マック食べたくないか?」僕も正直まだ食べられたし、そろそろジャンキーな食べ物が恋しかったので、彼が注文するなら食べる、ということで賛成した。フードデリバリーサービスでマックを注文するが、田舎町なので全く配達員がおらず、10分離れたマックからこの民泊まで食べ物が届くのに25分時間を有するという。

 

 しかも、台湾のマックはそこまで安くない。しかし、その彼は「安い食べ物は俺にホッチキスの針を食らわせたから、そんなの糞食らえだ(Fuck that)!」と注文を確定する。25分後。そろそろ飯が届くかと思ったら、まだ25分後に配達完了予定の文字が。さらに怒ったボーイフレンドは勢いで注文をキャンセルする。

 

 すると、猫撫で声で義妹に振り返り「お願いだから車を出してくれない?」と頼み込むが、彼女の返事は「NO」。実はさっき夜市に買い出しに行った時、マクドナルドを通り過ぎたのでマックを提案したが、その時彼は「いらない」と答えたのだ。

 

 「いらなかったのはさっきだけで…」「でも私はマックなんか食べたくない、大体なんで私が行かなきゃ行けないの?」「この中で唯一この国で合法的に運転できるのはお前だけじゃん!」「いやだ、私は疲れたから休みたい」「大丈夫、運転も車の中で座ってるだけだから!」「いやだ、この椅子から動きたくないの」「頼むよ、これがLAだったら絶対に俺は車出してたよ!」「嘘ね、いつもいかないじゃん!自転車で行けばいいじゃん?」「自転車!?お前散々台湾はバイク運転が荒い国だって言ってたじゃん!こんな暗い夜に自転車で走ったら俺死ぬよ!?」「今はバイクがないから大丈夫」

 

…などと、延々「行ってほしい」「行きたくない」のやりとりをしている。この訳じゃ伝わらなくて恐縮だが、このボーイフレンドの言葉のチョイスが一々絶妙で、僕と婚約者はずっと腹を抱えて笑っていたのだが、その後なんと2時間もこの不毛な論争をおこなっている。僕はもうその時点でマックなんか行きたくなくなったのだが、彼の目的はマックを食いに行くことよりも、いかに頑固な彼女に運転させるかに切り替わっていて、義妹の目的も彼を言いまかすことに変わっていた。

 

 ビックリしたのは終いには100USドルを机に叩きつけて「頼むから!これでマックに連れて行ってくれ!」と頼み込む彼に対し「100ドル如きで机を叩きつける態度が気に入らない。今のは1000USドルの叩き方だ」とプライドの高い義妹がオファーを蹴ったことだ。二人ともそこまで相手を気持ちを折りたいのである。

 

 あまりにも時間が無駄なので、僕と彼だけでタクシーで行こうよという話になった。もちろん、これは議論の最初の方で義妹が提案していたことで、彼は「仮に言ったとしても俺たちは中国語が分からないからオーダーができないし、宿まで帰ってこれない!」と断っていたが、もうここは僕が片言中国語で頑張るから、と宥めて部屋に上着を取りに行ったら、ダイニングに戻るとなんと義妹と婚約者も上着を着ている。結局、義妹が折れて、全員をマックに連れて行ってくれることになったのだ。なんだったんだ、この時間!

 

 長い議論でヘトヘトになる、気まずい車で4人マックに向かう。店に着くと、僕とボーイフレンドで頑張って中国語でオーダーしようとしたら、店員がインドネシア人で英語が普通に話せた。いよいよなんだったんだ、この時間…。そして、なんだかんだ優しいボーイフレンドは、彼女のために彼女が一番好きな台湾マクドナルドオリジナルメニューのコーンスープをも頼んであげて、また気まずい車に揺られて宿に戻る。

 

 もう正直食欲よりも睡魔が勝っている状況だったが、せっかく買ってきたマックを頬張る。台湾のダブルチーズバーガーは日本やアメリカのそれよりも旨味が効いていて、とても美味しかったのもあるが、この2時間含めて今までで一番忘れられないマクドナルドとなったことは間違いない。

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