あんまりナメるなよ!

 iPhoneYouTubeTikTokは偉大な発明だとは思っている。映像作りを民主化したのだ。これまで職人が何百万やウン千万円するシネマカメラでしか撮れず、映画館やテレビでしか流せなかった映像を、誰でも楽しんで作って公開できるように解放した。

 

 一方で、映像作りというものがグッと身近になったことで、「映像なんて誰でも簡単に作れるでしょ!」という誤解を多くの人に与えてしまったのも事実だろう。もっと正確にいうならば、「高品質の」映像は誰にでも撮れるものではない。スマホのカメラは映像用に作られたカメラを超えることは一生ないし、YouTuberやTikTokerの誰もが映画やテレビ番組を撮れると思ったら大間違いだ。

 

 僕の考え方は保守的かもしれないが、そのために専門学校や映画学部はあると思っているし、同じ業界人として勿論映画職人やテレビスタッフには多少なりともリスペクトがあるので、心からそう信じている。短くない人生の中で、それなりに勉強や時間、お金を投資してその仕事をしているからこそプロなのだ。

 

 といっても僕なんかはまだまだペーペーで、床を這いつくばりながら頑張っているが、それでも映像クリエイターとしての矜持はある。映像業界に明るくない人から映像制作業務の依頼を受ける時、こちらの見積もりを伝えると「思っていた予算感と違う…」と半分どころか1/10くらいの金額を提示されて頭を抱えることが何度もある。ほんと、映像屋を暇人かお人好しだと思っているんだろうか?

 

 Twitterでも愚痴ったが、今日久々にMVの制作依頼が来たので話を聞こうと思ったら、約束の時間には現れず、やっと来たと思ったら謝罪の言葉も一切なく、開口一発目に「無料で作ってくれるんですよね!?」とヘラヘラタバコ吸いながら聞かれ、この時点でもう既に依頼を断る気満々の顔を察せられたのか、最後に「お金かけられずに出来たらSNSで拡散するんで!お互いにメリットはあるかと!」と言われ、本当にアホかとほとほと呆れてしまった。

 

 そのお方は駆け出し中のアーティストなのだが、僕が「無料で曲作ってくれますよね!?」と聞いたらどんな気持ちをするのだろうか。もうあまりにも無礼な依頼を、ジャンルは違えども同じクリエイターの人から頼まれて久々に頭にきてしまった。別にギャラを払って欲しいとはちっとも思っちゃいないが、金がないなら少なくともリスペクトはもって接して欲しい。

 

 皆さんも、映像でも音楽でもイラストレーターでも誰でもいいですが、もし知人にそういう人がいて何かを頼みたいときは、ちゃんとプロとして敬意を持って接してあげてくださいね!プンスカ!