1秒24コマの幻影

 Twitterに書いてない映画の感想が溜まって恐縮ですが、今日『エンパイア・オブ・ライト』を観に行きました。これがもう、ザ・ロジャー・ディーキンス!!!って感じで、タイトル負けしない美しい照明を作り出した撮影にウットリしていました。ずっと美術館で絵を見ているような感じ。

 

 で、『エンパイア・オブ・ライト』はエンパイア劇場という映画館を舞台にしているのですが、面白いと思ったのは先日観た『フェイブルマンズ』(これも凄まじい傑作)との共通点で、映画というのは1秒24コマの静止画で成り立っていて、それを光で投影しているイメージであることを語るセリフがどちらにも登場したことですね。映画はつまり光が生み出す虚像なのですが、その幻影に強烈に魅了されている人間たちを正しく「光」の描き方に注力している『フェイブルマンズ』と『エンパイア・オブ・ライト』が描いているのは奇妙な偶然でしたね。

 

 なお、『エンパイア・オブ・ライト』は映像面では宝石のような美しさでしたが、僕は職場でのロマンス描写が「ちょっとどうなの…」と思って観てしまいましたね。まあ、ちゃんと本編でも「ちょっとどうなの…」って指摘はされているんですが、それにしてはあまりにも撮影が美しすぎてどうしたって情緒豊かなシーンになってしまうのは玉に瑕だと思いました。ただまぁ、こうして正直に書いてみると僕も随分と保守的な鑑賞をするようになったなぁとちょっと嫌になりました。

 

 なんにせよ、『エンパイア・オブ・ライト』は何故今年のオスカー作品賞候補に上がらなかったのか疑問に思うくらいには良い映画なので、おすすめですよ!