久しぶりに会う親友に、まるで彼女のように嫉妬した話

 僕がアーカンソーに住んでいた時に、もう毎日一緒に過ごしていた親友がいた。彼はメキシコ人で、小さい時に不法移民として親にアメリカに連れてこられた。オバマ時代、16歳未満でアメリカに入国した不法移民の子供に強制退去処分を猶予するDACAという政策が敷かれ、彼はDACAプログラムの元アメリカで暮らしている。

 

 先々月結婚式を挙げたが、僕はもちろん彼を招待した。ただ、DACAプログラムを持つものがアメリカを出国する際、特別な書類を出して承認を受ける必要がある。彼は式の3ヶ月前に提出したものの、アメリカの行政サービスの遅さは『ズートピア』で揶揄されるほど最悪で、結局僕たちの式に間に合うことがなかった。

 

 彼が来れなくて本当に残念だったが、式の1週間後ようやく認可が降りたとの連絡が来た。ニアミスを呪ったが、せっかくなので日本に2週間ほどくるということで、僕がアメリカを発って5年以来会っていない彼に久しぶりに会えるのを楽しみにしていた。

 

 のだが。今度は僕が映画の現場に入ってしまい、一緒に行動できる時間が著しく制限されてしまった。一応彼は2週間ほどうちに泊まるのだが、一緒に過ごせるのは土日くらい。その短い時間でどこに連れて行こうかワクワク考えていた。冒頭に書いた事情で、彼はアメリカを出れるのがイレギュラー中のイレギュラーだし、彼は昔から『ドラゴンボール』や『進撃の巨人』が大好きで日本に来たがっていたので、せっかくの日本旅行を100%楽しんでもらいたい。

 

 さあ、昨日ようやく5年ぶりに彼と対面を果たした。お互いに歳をとったようで内面も外見もあまり変わっておらず、旧友との再会を心から喜んだ。荷物を我が家に預け、いざ色々出かけようと思ったら「実はこの後別の友達と会う」と彼は言う。

 

 彼は本当に人当たりのいい人間で、誰とでも仲良くできる素晴らしい性格の持ち主だ。アーカンソーの大学で彼を知らない人はいないんじゃないかってくらい友達が多く顔も広い。日本人も多く滞在している大学だったので、当然僕以外にも彼が会いたい人間は多くいた。

 

 しかし、そうなってくると自分の心のうちに嫉妬心がメラメラ燃え上がってくるのを感じた。そもそも、僕の結婚式に参列できなかったので、今回日本に来たと思ったのに、一緒に過ごせる時間が少ない中で他の友達と会うのは、あんまりじゃないか。しかし、そんな怒りをぶつけてもしょうがないので、一緒に僕が住む街を散策した後彼を送り出してあげた。

 

 その別の友達と飲み終わったら僕と地元で飲むと言う約束をしていたのに、なかなか連絡がこない。そもそも旅行者としてWi-Fi環境が整っていないと連絡ができないのだが、一体何時に帰ってくるのかまるで読めず時間の過ごし方も分からずイライラが募る。たまに連絡が来たかと思えば「友達が帰してくれない、朝まで飲むとか言ってる笑」とテキーラショットの写真が送られてきて、今度はその友達に「僕との時間がどれだけ貴重なのか、分かってんのか!」と怒りを覚える。

 

 が、11:30くらいにようやく「今から電車に乗るね」との連絡が来て安堵する。最後は僕を忘れずに帰ってきてくれたことが嬉しく、その後、地元駅近くのバーで朝2:00くらいまで学生の頃のように飲んだ。「今日の僕、まるで彼女みたいじゃないか…」と酔った頭で恥ずかしくなりながら、二人してフラフラになりながら家に向かったのであった。