『フォールガイ』に感動した!

 今更ながら『フォールガイ』観てきたんですけども、これが期待値を大幅に上回るくらい良かった。

 

 まずなんと言っても個人的にグッと来たのは撮影現場の解像度の高さだ。よくある「ハリウッド内情もの」にしては不必要なまでに再現性が高く、政治力が高く上っ面だけいいプロデューサー、ワガママな俳優とそれに振り回されるアシスタント、監督が動くところについて行くスクリプター、スタントマンを現場まで連れていくオンセットPA、監督に伺いながらも現場をスケジュール通りに回していく乱暴な1stAD、カチンコを切る2ndAC、本番直前にワイヤレスをチェックする録音…ともう細かすぎて伝わらない現場あるあるの宝庫でそれだけで爆笑だった。自分だったら今この辺にいるだろうな、と想像するのが楽しい。

 

 そして、この作品がスタントマン讃歌になっているのがとても素晴らしい。作中でもネタにされているが、スタントマンの実績を讃える賞はオスカーにはない。しかし、スタントマンの存在無くして映画は成立し得ない。例えば、ちょっとしたビンタのシーンでもスタントチームは映画にとってどのような撮り方がいいのか全力を尽くすのだ。しかし、命を燃やしながらも彼らの役割はスターの影武者になることなので、その仕事っぷりが表に出ることは少ない。

 

 そんなスタントマンを主人公にしたこの企画を監督しているのがスタンとコーディネーター出身のデヴィット・リーチであるので、冒頭からエンドクレジットまでスタント愛に溢れている。なぜフォールガイ達はここまで泥だらけに、血みどろに、時には火だるまになってまでスタントをこなすのか。それは少しでもいい映画を撮るためだ。映画の現場では役者の次に重宝されるのは高価なカメラだが、とある場面でそのカメラ様にまで足を乗っけたスタントを披露しているのは明らかにスタントを讃える映画だと高らかに宣言している。

 

 そして、そのメッセージを伝えるための強力なバックボーンとなっているのが主人公と元カノによるラブストーリーで、意外にもロマンスコメディとしても軸がしっかりしていて、アクションパートとの絶妙なバランスを保っている。本当に素晴らしい映画だ。」