なぜ昨今のハリウッド映画の夜のシーンは暗いのか?

 まずこちら、懐かしの『スパイダーマン3』のクライマックスをご覧ください。

 

 続きまして、最新の『スパイダーマン』映画より『ノー・ウェイ・ホーム』のクライマックスをご覧ください。

 

 こちら、もう14年も離れた作品なので、映像技術の進歩などは置いておくとして、比べてみると何か気付くことはあるでしょうか?奇しくも同じく夜の鉄骨足場で展開されるクライマックスですが、『ノー・ウェイ・ホーム』の方が圧倒的に画面が暗いのがお分かりでしょうか?

 

 『スパイダーマン』に限らずですが、夜をクライマックスに設定する大作映画はとても多いと思います。その中で、昨今のハリウッド映画で「画面が暗すぎて見え辛い」という批判もよく聞くようになりました。そうした声を受けて、なぜ最近のハリウッド映画は暗く見えるのか、現役のDP(撮影監督)が解説していたTwitterのスレッドが英語圏で話題になってまして、面白かったのでこちらでも紹介します。

 

 元々、映像制作における照明の組み立てにおいて、「光源がどこから来ているか?」というのは非常に大事になります。例えば、『ファンタスティック・フォー』のこちらの場面はおそらく近隣のお店から光源が出ているので、そのイメージで照らしています。

 

 『スパイダーマン3』のこの場面では、おそらく月明かりや工事現場のライトを光源に、さらにそれが地面から照り返しているイメージで照明を作り込んでいることがわかります。

 

 時には、現場にある美術装飾を使って光源を作ります。これはプラクティカルライトといって、自然にかつ堂々と照明を作り込めます。

画像

 

 ただですね、昔の映画は光源がなくても照明を作り込んでいたんですね。例えば、『スパイダーマン』の路地裏のこのシーン、どこからメインの光源であるキーライト(赤丸部分)が来ているか分かりませんし、人物を背景から切り離すリムライト(緑丸部分)もどこから来ているか分かりません。でもね、これでいいんです。だって、皆さんもそうですけど、鑑賞中にどこに光源があるかなんて、ほとんどの人は気にしないで見ているでしょう?

 

 さあ、しかしですね、現代の映像制作における照明は「環境の光源に忠実にリアルに」作り込もうとするのがトレンドなんですね。こちら、日本未公開の『ウィキッド ふたりの魔女』からですが、窓の外から来ている日光を中心とし、部屋の中には光源がない設定にされているため、シルエットのように見える画になっています。


 ただですね、現代の映画制作はポストでのカラーコレクション・カラーグレーディングを前提に現場では撮影します。映像データになるべく情報を残せるように、基本的には黒潰れが起きないように十分な光量で撮影します。これをカラーグレーディングで夜のシーンに見せるために、画面を暗くしてあえて黒を潰すんですね。

 

 そもそも、当然20年前と比べて現代のカメラの方がずっと進化していて、暗所性能も強いです。照明も安価で強力なものも山ほど生まれました。ポストでのカラコレ技術も進歩しているのは言わずもがなです。つまり、現代の映画制作では、夜を明るく見せようと思えば、いつでもできるんです。ただし、それでも画面が暗く見えるのは、それは作り手の技術が拙いのではなく、作り手による意図的な芸術的選択の結果なんですよ、ということを教えてくれる投稿でした。

 

 一方で、悲しいかな、先述したようにほとんどの観客はそこまで正直気にして観ていないので、作り手の意図を選択するか、観客にとっての観やすさを優先するか、どちらがいいかは難しいところですよね。CMなんかはまさしくそうですが、CMはとにかく分かりやすさが大事なので、光源にはあまり縛られず、明るく夜を撮りますが、これに疑問を持つ人はいないでしょう。


 皆さんも普段映画やテレビを見る時に、どういう照明を作って画が撮られているのかを意識してみると、また違った発見などがあるかもしれません!でも、本当に面白い映画というのは、そういう邪念すら抱く暇がないくらい面白い映画なんですけどね!