バカに映画を語らせるな

 もう触れるのも疲れるくらいなんですけど、やはりこのニュースについては文句は言いたいです。

 

 海外系の現場で働くことが多い僕が知る限りの話をしますが、確かにハリウッドは今死に体です。LAで撮影されている映画はどんどん減っており、今アメリカ国内ではアトランタニューオリンズ、あるいは隣国カナダで撮影されている事がほとんどです。映画の都のハリウッドで撮影にするには人件費や物価が高過ぎで、また厳しい労働基準や給与体系を定めた組合ルールもあり制作費の高騰が避けられません。そこへ今年初めに山火事が襲い、僕が参加したとある現場のスタッフは「これがLAの終わりかも」と悲しげに呟いていました。

 

 トランプはこうした状況を受け、今回の関税措置を発表したのでしょうが、国内産業を守る力強い政策に見えて細部が非常に曖昧で中途半端です。例えば、世界を股にかけて戦うマーベル映画なんかは多くの部分を税控除のある国外で撮影している一方で、アメリカ国内で撮影しているシーンも複合的に含んでいます。この場合、マーベル映画はアメリカ映画になるのでしょうか?それとも海外映画として関税の対象になるのでしょうか?

 

 ちなみに、2010年代中盤はハリウッド映画はやたら中国で撮影するのがトレンドでしたが、これは中国が国内産業を厳しく守っているために年間で公開できる海外映画の本数が決められていて、中国資本を入れて作ってしまえば「中国映画」として本数制限を無視して公開できる、という超裏技で公開されていたのでした。

 

 当時の映画は何の脈絡もなく中国でのシーンが出てきたり、どう考えても忖度としか思えないような中国人のキャストが登場したりと、そのやり方には賛否はあるものの、本当に国内の映画産業を守りたいんだったら関税で自国にも他国にもダメージを与えるのではなくて、諸外国がやっているようにアメリカ国内で撮影しやすくなるような助成金や税控除などの優遇政策を行うべきなのです。

 

 ただ、トランプはそんな深いことは全く考えていないので、そんな提言を行なったところで無駄です。僕が今一番心配しているのは、日本国内の僕の同僚たちのことです。円安や助成金、税控除などの政策により今日本で撮影されている海外映画の数はかつてないほど多いです。僕が知る限りでも、昨年撮影されたハリウッド映画やドラマが複数本あります。CMなども含めるとかなりの映像作品が日本に集結しています。

 

 その末端にいる僕が言うのも烏滸がましいですけど、こうした作品には誰もが知るような大スターやアカデミー賞レベルのスタッフが参加していることも多く、彼らの作品が日本で制作されることにより、日本の映画産業が得られる知見もかなりあります。また、予算が厳しい方がと比べて潤沢な制作費を持つ海外作品ではギャラも多く、たくさんの邦人スタッフはその恩恵を受けていたはずです。

 

 先述した通り曖昧なことの方が多いので、今回のトランプ関税がどこまでの影響力があるかは分かりません。ただ、このバカな施策のせいで日本で撮影されるアメリカ映画の数が大幅に減るとなると、日本の映画産業にとって金銭面でも技術面でも大きな打撃となることは間違いありません。もちろん、これは日本国内だけでなく、世界の映画産業にとっても手痛いダメージとなるでしょう。

 

 さて、最後にですが、すっかり裸の王様の広報となったホワイトハウス公式アカウントはこのような投稿を5月4日の『スター・ウォーズ』の日に投稿していました。

「メイ・ザ・フォースの日、おめでとう!シス卿、殺人者、麻薬王、危険な囚人、MS-13ギャングメンバーを我々の銀河に連れ戻そうと必死に戦う急進左翼の狂人たちを含む全ての人へ。あなたたちは反乱軍ではなく、帝国そのものだ。


フォースと共にあらんことを。」

 

 まず『スター・ウォーズ』の日を祝う投稿を政敵批判に使っているのが腹立ちますがそこは一旦置いておいて、そもそも『SW』ってファシスト国家に対して反乱軍(急進左派)が政権転覆を企てる映画じゃないですか。だからある意味で言い得て妙なんですが、そこに赤いライトセーバーを握らせた生成AI自画像を描かせるって、とんでもなく高度なギャグセンスしてますよね!