『ザ・スタジオ』EP9はセス・ローゲンのドラッグ映画史の新境地

 毎週水曜日は仕事帰りの嫁とAppleTV+の『ザ・スタジオ』を見る事が日課になってます。以前このブログでも少し触れましたが、『ザ・スタジオ』はセス・ローゲン演じるマット・レミックがひょんなことから100年続く伝統の映画スタジオ「コンチネンタル」の代表となり、芸術的かつ興行的にも成功する映画を作ろうと獅子奮迅するドラマシリーズとなっています。

 

 

 このシリーズが非常に特徴的なのは「長回し」でして、以前はエピソード丸ごと長回しだった驚異の2話を取り上げましたが、そうでなくてもほとんどのシーンが1シーン1カットで撮影されています。室内でステディカムで撮影していたかと思えば、おそらくクレーンで窓の外から地上におり、さらにまた部屋の中まで戻ってくる、という一体全体どうやって撮ったか皆目見当もつかないショット/シーンもあったりして、それだけでワクワクします。

 

 また、ハリウッド内幕劇ジャンルは最近多くなってきましたが、本作は更にその中でもスタジオ経営側の視点で撮っているのが斬新な上、台詞も本作の日本語字幕訳者も間違えてしまうくらい、映画のスタッフしか分からない生々しい業界用語が飛び交っています。また、第1話ではマーティン・スコセッシが本人役で登場するなど、全エピソードに有名な監督や役者が驚きのカメオ出演をしているので、映画ファンならたまらないはずです。

 

 ただ、映画ファンだけのシリーズになっていないのは、このシリーズは「お仕事」の苦労を描いたコメディとして格別に笑えるからで、来週で完結するシリーズなので木が早いかもしれませんが、どの角度から見ても完璧な傑作シリーズと言わざるを得ません。まだ上半期も過ぎていませんが、今年これ以上のドラマ作品を見れるか甚だ疑問です。

 

 さて、完結していない作品にこれだけ熱のこもったレビューを書こうと思ったのが、今日配信された第9話がセス・ローゲンお得意のドラッグについて扱ったエピソードだったのですが、その描写が結構大人になっていて僕は感心したんですね。というのも、今までのセス・ローゲン映画でのドラッグ描写は、多くの場合主観的でした。ボンクラキャラクターたちがドラッグを使ってゲラゲラ笑ったり、ハイになり過ぎた結果トンデモない事が起きることを描いて観客を笑わせてきました。

 

 ところがどっこい、今回のセス・ローゲンはドラッグ使用経験が浅いという設定*1で、大事なプレゼンの前の日に調子に乗って慣れないマジックマッシュルームに手を出した結果バッドトリップに入ります。そうした中でもトラブルを対処しようと奔走するのですが、その中で無責任にハイになっているとある大物カメオスターが、全くもって辻褄の合わない話をするのをセス・ローゲンが迷惑がる、という描写があるのですが、僕はそこがとても印象深かったんです。

 

 というのも、ドラッグ使用者をすごく客観的に描いていて、ハイになっている本人は自分の世界に入っていて楽しそうなんだけど、その世界の外から見る人にとっては滑稽にしか見えない、というのを冷静な視点で描いていて、これは今までのセス・ローゲン映画にはない新境地だと思いました。近いのは、『ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー』でもセス・ローゲンでバッドトリップに入り、それをバカっぽく滑稽に映していましたが、『ナイト・ビフォア』はまだセス・ローゲンのトリップに寄り添った描いていましたが、今回はそれよりもさらに一歩引いた視点で撮っていました。

 

 本作はセス・ローゲンが責任あるスタジオ重役という役柄を演じているので、必然的にドラッグ使用も無責任なものとして描くことにはなったと思います。セス・ローゲンとドラッグは切っても切り離せない要素ですが、齢も40超えてフィルモグラフィも重ねていくうちに、表現者として次なるステージに進んだんだと、勝手に感慨のようなものを感じました。来週の最終回後も特大レビューを書くと思いますが、皆さんも是非この傑作を見逃さないで!

 

 

*1:冷静に書いていて思いましたが、どんな設定だよ