嫁の妹のアメリカ人婚約者はなまじ弁が立つので、よく口論になる。彼と一番最初に口喧嘩した日を覚えている。一緒に台南旅行をした時に、ハヤシ百貨店へいった。日本統治時代に建てられたこのデパートの屋上には、連合国による爆撃の跡が残っており、それが名所となっている。
そこから太平洋戦争の話に発展したと思うのだが、「原爆のおかげで戦争が終わったんでしょ?」と彼が冷笑気味に話した時の、あの全身の毛が逆立つ気分を今だに忘れない。彼はちなみにカリフォルニア出身で民主党支持者であるのにもかかわらず、已然としてその歴史認識でアメリカ国内では一般的だと思うと、悔しくて悔しくて堪らなかった。「よく俺の前でそれを言えるな!」と本気で怒った。
僕が原爆というものに対して、強い忌避感や抵抗感を覚えるのは、小学校の時に図書館に置かれていた『はだしのゲン』の影響はかなり大きい。漫画が禁止されている全国の小学校の図書館に、なぜか『はだしのゲン』だけは置かれている。誰がそんな措置をしたのかは知らないが、これは本当に素晴らしい試みだったと思う。『はだしのゲン』は原爆の恐ろしさや被害者の苦しみだけならず、大日本帝国の隣国や国民への加害性も残酷なまでに教えてくれた。多くの日本人が戦争を嫌い平和主義者であり続けるのは、小学校に置かれた『はだしのゲン』のお陰だと言っても過言ではない。
その最たる例が、「バーベンハイマー」の炎上だったと思う。当時のアメリカの夏工業を盛り上げていた『オッペンハイマー』と『バービー』がミーム化し、「バーベンハイマー」というちょっとした現象になっていた中で、『バービー』の公式Twitterが非常に不謹慎な投稿を繰り返した。結果日本人の怒りを買うことになり、ワーナーが謝罪をすることになったが、僕は原爆を茶化すことに対してちゃんと怒れるのは戦後の平和教育が功を奏した結果だと思っているので、唯一の被爆国の国民として少し誇らしくも思えた。
さて、今日で広島に原爆が投下されてから80年である。被爆者の語り部どころか、戦争を知る世代も年々少なくなってきている。反比例するかのように、日本の再軍備を主張する声は年々大きくなり、あろうことか非核三原則まで軽視するような発言をする政治家まで出てきた。世界に目を向けても核の脅威がなくなるどころか、大国同士が都合のいい身勝手な正義ばかりふりかざし、胃がキリキリするような状態が続いている。本当に『オッペンハイマー』のエンディングで描かれた通りだ。
そんな中で、今日石破首相が出したメッセージの役割は非常によかったと思う。正直リーダーシップに問題はあるし、政策もパッとせず支持率は低いが、不安定な国際情勢にも関わらずこの節目にまっすぐで願いの込められたメッセージを届けられる総理の存在はありがたい。
ところで、冒頭のアメリカ人婚約者だが、そういう無神経なところはあるが結局は家族(になる予定)なので、なるべく兄弟として愛そうとは勤めている。しかし、先日また台湾で会った時にアメリカのイラン爆撃を正当化していて口喧嘩がヒートアップしてしまった。うーん、一生これが続くのか…。