段々仕事納めも見えてきて、映画を見る余裕も出てきたので今日は『ボディビルダー』を観てきました。いやー、キッツい映画でしたね…。映画の出来が悪い、という意味ではなく、ただでさえ恵まれていない主人公がトコトン転落していくので、精神的に観るのがとても辛い映画でした。最後の最後で、ほーんの少し救いのある終わりであったのは安心しました。ボディビル版『ジョーカー』なんて揶揄されてましたが、僕はそれよりも大元の『タクシードライバー』を想起しました。

アンガーマネジメントに苦しむ主人公キリアンの映画で、ジョナサン・メイヤーズが贖罪の意味も込めて出演しているのかと思いきや、メイヤーズの逮捕前に撮られていた映画なので驚きました。ある意味では『ロッキー』におけるスタローン、『レスラー』におけるミッキー・ロークのような、他人の話とは思えないくらい神がかかりを見せた芝居だと思いました。
意地悪な見方をすれば、結構自己責任の話ではあると思います。「それだけはやっちゃだめ…!」という選択をキリアンが次々と衝動的に行なっていき、破綻していきます。原題が『Magazine Dreams』*1なんですが、キリアンの行動原理は全て「男として生まれたからには後世に名を残したい」という点につきます。
恥ずかしながら、僕はキリアンに強い共感を抱かざるを得ませんでした。中学生の時から映画監督を目指している自分は、よく周りに「僕の夢はwikipediaにページが作られること」と言っていました。ただただ、好きな物で才能を世界に認められたいだけ。この苦しみが痛いほど分かるから、一見自暴自棄に見えるキリアンの暴走も理解できます。幸いにも僕はキリアンほど酷い挫折を味わっていませんが、一歩間違えればインセルになっていてもおかしくなかったと思います。
また、キリアンの闇はアメリカ社会の病的な部分と悪魔的にマッチしています。より強く、より大きく。ビッグ&ストロングが最善の価値観とされるアメリカをボディビル業界はよく体現していますし、そこにドラッグや銃、性的搾取や人種差別といったアメリカ社会を巣食う闇がキリアンを襲います。ただ、昨今流行りの映画みたいに、ここの問題を過剰に描写し糾弾するのでもなく、淡々と描いているからこそ僕は恐ろしいものを感じました。
一点惜しむらくは、やはりカーンがMCUを征服する世界を観てみたかったですね…。ジョナサン・メイヤーズは本当に素晴らしい俳優だと思うので、更生して頑張ってほしいと思います。
*1:でも、雑誌に載るのが夢というのも、冷たくいって仕舞えばすごく浅薄な夢でもあると思うんですよね
