トラウマ映画『バトルランナー』再見

  • 『バトルランナー』は父の大好きな映画である。まだ現実とフィクションの区別がつかない僕の前で、人が鮮烈な血を吹いて死にまくるこの映画のVHSを平気で家のリビングで観ていて、母が父に怒っていたのは僕の原初的な記憶の一つである。以来、僕は『バトルランナー』が怖かった。
  • ご存知の通りスティーブン・キング*1原作の2度目の映画化『ランニングマン』が公開中なので、この機会にオリジナル版を観てみることにした。流石に今となっては何も怖くない、ばかりか人を殺しては気の利いたギャグを吐くシュワルツェネッガーに毎回笑ってしまう。よく思いつくなぁ…。
  • それとは別に大変興味深いのは、2020年代の風刺になっているとも思える先見性だ。1作目が公開されてもう間も無く40年近く経つが、80年代に存在していたメディアと権力の問題がその延長線上でフィクションと変わらなくなってしまった。
  • シュワルツェネッガーは「真実か?今じゃ人気ないね」などシニカルに言うが、現代がまさにそうである。政治家は情報を歪曲し、自分たちに都合のいいニュースだけ流して大衆からの支持を煽ぐ。トランプが取り入れた手法は、いまや日本も含めた世界中のポピュリストたちにとっての十八番となってしまった。
  • 流石に実際に人を殺める残酷ショーはまだ作られていないが、エンタメ自身はどんどん過激なものになっている。Abemaなんかをみると下品で粗野なリアリティーショーやバラエティばかりで嫌になる。それどころか我々が生きる時代は最早テレビの力は衰えいて、SNSやショート動画では市井の人がアップした過激なコンテンツで溢れかえり、それを更に市民が中毒となってみている。
  • また、『ランニング・マン』では編集やソフトにより映像を改竄していたが、言わずもがな今はAIで簡単に人々がフェイク映像を作れるようになっている。フィクションよりもよっぽど恐ろしい未来に我々は到達してしまったのである。
  • 唯一の救いは、まだメディアが『バトルランナー』ほど権力に媚び諂っていないことだ。よく「マスゴミ」や「オールドメディア」などと知った口でマスメディアを批判する人たちがいるが、権力の監視機構として機能しているうちはまだ健全な社会だと思う。
  • でも、こんな80年代のバカみたいにコテコテでムキムキなSFアクションにリアリティを感じるようになったなんて、本当に嫌になってしまいますな…。現実のシュワルツェネッガーはトランプとバチバチに仲が悪いので、もう一つここにも救いがあった。

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バトルランナー (字幕版)

バトルランナー (字幕版)

  • アーノルド シュワルツェネッガー
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*1:正確には別名義のリチャード・バックマン