当ブログでは例年12月30日は年間コメディ映画ベストテン、12月31日は年間映画ベストテンを発表する日となっています。ところがどっこい、今年は全然コメディ映画を観てません。というか、年間鑑賞本数は明日発表しますが、そもそも映画ブロガーを名乗っていいのかもはや分からないくらい映画を観ていません…。
2020年代以降ますます個人的な映画離れが進んでおりまして、こんな状況でコメディ映画ベストテンを選ぶなんておこがましいのでは?という気もしますが、なんとか10本選べましたので今年も発表していきたいと思います。
【2024年面白かったコメディ映画】
- アメリカンフィクション
- フォールガイ
- ホールドオーバーズ/置いてけぼりのホリデイ
- 侍タイムスリッパー
- サウスパーク: 肥満の終焉
- トランスフォーマー/ONE
- ボーはおそれている(の前半)
- フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン
- ダム・マネー ウォール街を狙え
- デッドプール&ウルヴァリン
【解説】
アメリカンコメディの底力の知れなさを示す①は圧倒的。これまでの多数派が手綱を握ってきた歴史の反動からか、ポリティカル・コレクトネスが叫ばれるようになって久しいですが、時にそれは(我々)マジョリティ側の罪悪感を癒すポルノ的搾取になっていないか?というのをマイノリティの視点から鋭く叩き切っていて、アメリカのコメディはここまで到達したのかと舌を巻きました。僕自身も風刺コントを頑張っていますが、この作品は社会の表象の捉え方が何枚も上手で、まだまだ頑張らないといけないなぁと果てしなさを感じました。
②は映画として素晴らしいのはもちろんなんですが、ロマンスコメディとしてとても堅実なのもポイント高かったですね。ライアン・ゴズリングは2面性がある役者さんで、『ブレードランナー2049』や『ドライヴ』などの「陰」のゴズリングがいれば、『ラブ・アゲイン』とか『バービー』の「陽」のゴズリングがいるんですね。ただ、本作は「陰」のゴズリングでコメディをやってみた新たな魅力を引き出した作品だと思います。
③はものすごく素晴らしくアメリカ的「優しさ」が溢れていて、五臓六腑に染み渡るとても良い映画でした。意地悪い先生と問題ばかり起こすクソガキの反目しあう関係性にクスクスと笑いながら、でも二人の根っこには優しさがあるのが非常に愛おしかったです。
④は冒頭はタイムスリップした侍の現代とのカルチャーギャップコメディになるかと思えば、中盤からはある種スポコンコメディのような熱さもあり、非常に多層的で面白い作品でした。身銭を切って本格時代劇を作るという覚悟もすごいですし、自主映画をやっている身として大変リスペクトです。
今年から日本でもパラマウント+のサービスが始まり、『サウスパーク』の最新エピソードを観れるようになりました。『サウスパーク』は契約により毎年TV映画をパラマウント+用に制作しないといけないのですが、今年発表された⑤もいつもどおり漆黒の笑いを届けていて爆笑しました。特にアメリカの保険システムの腐敗っぷりを描いていたのが最高だったのですが、ちょうど今年アメリカの大手保険会社のCEOが射殺される事件が起きてしまったので、やはり『サウスパーク』の時代を捉える眼力は並外れたものがあります。
アメリカのアニメはやたらコメディとしても質が高い映画が多いですが、⑥も多分に漏れずギャグがいちいち面白くてよかったです。特に最高だったのはキーガン=マイケル・キーの才能を発揮したB-127 / バンブルビーのコミックリリーフっぷりで、いい意味で非常にうざったいキャラクターでした。
コメディとして笑ったという意味では、ドミノ倒しのように上手い具合にどんどん悪い方向に転がっていく⑦の前半ほど映画館で腹を抱えた映画はありません。それゆえに、焦点がだんだん分からなくなっていく後半が残念でなりませんでした…。
⑧は②と同様に「アポロ計画」「陰謀論」といった主題がありつつも、ちゃんとロマンス・スクリューボール・コメディとしても基盤がしっかりしていたのが非常に好印象。チャニング・テイタムとスカヨハのケミストリーが素晴らしかった!
⑨は作り方によっては難解になってもおかしくない経済的題材を、分かりやすくテンポよくメッセージ性も十分込めて、更にコメディとして描いているのは大変素晴らしかった。また、ハリウッドに限らず昨今の映画でコロナ禍をちゃんと正面切って描いているのは珍しく、またコロナ禍の閉塞感により生まれたネット市民の連帯というドラマ面でもうまく機能されていたと思う。
正直⑩は型破りなデッドプールもMCUという「型」からは逃れられないのか…。とちょっとがっかりした作品ではありましたが、コメディとしては当然ながら存分に面白かったので、ランクインです。
ということで、いよいよ明日は2024年ベストテンをお楽しみに!