『怪物』見てきたっす

 是枝監督の最新作『怪物』を見てきたっす。詳しい感想はまたTwitterで書きますが、とにもかくも角田!!!です。あまりにも角田角田していて、まるで東京03のコントからそのまま出てきたようなキャラクターで思わず笑っちゃいましたが、でもちゃんと映画の世界に溶け込んでいて素晴らしい演技でしたね。

 

 あと、野呂佳代が出ているのもちょっと笑っちゃいましたね。最近役者業にシフトしつつある事をYouTubeやテレビでいじられていましたが、納得の自然体な演技でした。安藤サクラも出演しているし生まれ変わったらどの動物になるか?という会話もあって、ちょうど嫁が先日まで見ていた『ブラシュアップライフ』を思い出しました。

 

 もうひとつ印象に残ったのは田中裕子が、ご存命だったら樹木希林が演じていたようなキャラクターだったことです。『真実』のカトリーヌ・ドヌーヴもだいぶ樹木希林でしたが、この「樹木希林味」は是枝映画にはなくてはならない要素です。

 

 最後に、やっぱり触れておきたいのは子役の二人の驚異的な演技のうまさ。難しい役所だったと思いますが、見事に表現していたと思います。見終わってみると役者の良さばかり考えてしまうのも、すごく是枝監督らしい作品だなぁと思いました。

 

「マリオがヒットしたのは、ポリコレに屈しなかったから」とは?

 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が歴史的大ヒットを叩き出しています。

 

 これは大変喜ばしいことなんですけど、日本での公開は世界でも最後の方で、海外から先に入ってくるレビューやヒット状況を耳に入ってくると、一部でこんな説が囁かれるようになりました。

「『ザ・スーパーマリオブラザース・ムービー』が批評家にはウケなかったけど、観客にウケて大ヒットしたのは、ポリコレに屈しなかったおかげ」

 

 これは、昨今のディズニー映画が有色人種やLGBTQ+のキャラクターを積極的に登場させてマイノリティに配慮したり、内容的にも説教的なものが多いにも関わらず、『バズ・ライトイヤー』や『ストレンジ・ワールド』など作品が立て続けにヒットしていない状況を揶揄しているのでしょう。「批評家にウケなかった」はRotten Tomatoesで59%を記録していた事を指していると思います。

 

 が、60%未満のレビュワーが肯定的な評価を下さなかったからかろうじて「腐った」評価になっているだけで、半数以上の評論家が肯定しているならそれは十分じゃないでしょうか?「批評家に酷評」などという文章も目にしましたが、ゲームが原作なので刺さらない人もいたかもしれませんが、Rotten Tomatoesを見る限り「酷評」とは程遠いと思います。(余談ですが、だから僕は映画を数値化して印象を与えてしまうRotten Tomatoesが嫌いなんですね)

 

 で、いざ日本で公開されて肝心の中身を見ても、原作通りの典型的な「姫を救出」する話では終わっておらず、むしろピーチ姫は自ら積極的に行動を起こす自立した女性として描かれてとても現代的でしたし、マリオとピーチは恋愛関係にならないしキスシーンだってないですし、今回の「姫」枠はルイージになっているのは十分ポリティカル・コレクトネスに配慮した内容になっていると思います。なんなら、ルイージが救出された時にはハートマークが出ちゃったりして、兄弟愛を全面に出してパロディにしているわけです。

 

 しかし、実際に公開されると「ポリコレ」云々いう話はあまり聞かなくなりました。とても不思議なんですが、あの声の大きい人たちは本作を見てどう思ったんでしょうね。優れた日本のコンテンツが欧米の「ポリコレ」なんかに屈しない、とでも思っているのでしょうか。ちなみに、僕は安易に「ポリコレ」と略する人たちが苦手です。

 

 

ポッドレースはなぜ20年以上経っても色褪せないか?

 『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』が公開当時賛否両論の渦を巻いたことは皆さんご存知のところかと思いますが、ポッドレースシーンの素晴らしさは誰も否定できないのではないでしょうか。

 

 これだけCGに慣れた現代人の目で見ても全く色褪せない映像表現だと思いますが、じゃあなぜ色褪せないのか?ということをVFXアーティストの方が説明しているこちらの動画が面白かったですね。


 元レーサーのルーカスがポッドレースでとにかく表現したかったのはスピード感です。しかし、伝統的な撮影手法でスピード感をブレずに捉えられる方法はありませんでした。(当然、撮影対象のポッドレーサーは実在しませんし。)

 

 最初に採用された方法はILMお得意のミニチュア撮影です。しかし、ミニチュア撮影は洞窟などの閉鎖的な空間では効果的なものの、地平線がどこまでも見れる屋外の砂漠空間をミニチュアで再現するわけにはいけません。

 

 そこで登場するのがCG、というのは簡単ですが、90年代のコンピューターで風景を全て作り出すのはは大変な途方も無い作業です。特に、レーサーが次々に通過する遮蔽物を限りなく描き続け、コンピューターで生成された照明を当て続ける作業はほぼ不可能だったと言えるでしょう。(実は同じ理由から、『ファントム・メナス』でフルCGの背景が使用されているのは限定的な空間やセットのみです。)

 

 そこでVFXアーティストたちが利用したのはまさにポッドレースの「スピード感」です。CGで地形を作り出しますが、ディテールを描けば描くほど重くなるので、非常にシンプルな状態にとどめます。実はポッドレース中の地面はほぼ「平坦」にできているのですが、ポッドレース自体がとてつもないスピードで行われているので、ほとんど分かりません。(なおかつ、もちろん激しいポッドレースが繰り広げられている中で地面に関心を抱く観客はいません。)CGで地形の凹凸表現は最小限にとどめ、描きこんだイメージを貼り付けることで、「リアルさ」を表現しています。

 

 ここで活躍したのが「フォトグラメントリー」という技術で、被写体をほぼ全ての方角から撮影し、デジタル画像に解析して立体的なデータを作り出す技術です。モス・エスパ・グランド・アリーナの独特な地形を精巧なミニチュアで作り、それをデジタルデータとして取り込み、シンプルに作ったCG地形の上に貼り付けることで当時のマシンパワーであれだけリアルなポッドレースを再現した、ということです。

 

 この動画を見て思い出したのは、マジックで使われている視線誘導ですね。マジシャンは観客の視線をうまくミスディレクションすることで、マジックを信じ込ませているのですが、『ファントム・メナス』でもシーンのキモである「ポッドレース」という苛烈なレースに観客の意識を向かせる事で、CGの多少の粗を気付きにくくさせ、マジックを信じ込ませているんですね。

 

 インダストリアル・ライト&マジックという社名通り、観客にマジックをかけることに精通した会社らしい素晴らしい仕事でした。なお、映画とマジックはそもそも切っては切れない縁がありますが、昨今の大作映画がVFXだらけであることが批判されているのは、技術の向上でなんでも描けることにあぐらを描いて、マジックの見せ方を怠っているのが原因なのかもしれませんね。

 

 

『運命のダイアル』を観れないのは、せめてもの救いか

 度々ブログに書いているように、僕は今月中旬から3週間ばかしアフリカに行く。多分この間、映画を見る時間もないし、見れる場所にもいかないので、この時点で6月公開の新作はかなり見逃すことになる。特に『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』も『ザ・フラッシュ』といった、Twitterで特に盛り上がりそうな話題作を公開時に観れないのがなんとも辛い…。

 

 一方で、『インディ・ジョーンズ/運命のダイアル』も公開日を逃してしまうことになっているのだが、これもブログ読者の皆さんならお分かりなように、僕は現在のディズニー=ルーカスフィルム体制には心穏やかでいられるわけがなく、海外のレビューなどを読む限り、これも劇場で激怒したり精神的に不安定になる事が予想されるので、実は『インディ』最新作に関してだけは公開日に観れないことは実はいいことなんじゃないかと思えてきた。

 

 ある程度Twitterでの荒れ具合を確認し、ちょっと落ち着いた状態で劇場に…いや、それでも激怒して劇場を後にする自分の姿が見える、うう…!じゃあ観なきゃいかなきゃいいのにって話なんですが、それでも観に行っちゃうのが悲しい性なんですよ…。ああ、『インディ』最新作の事を考えるだけで心が乱れてきた、仕事のストレスも大きいし、そろそろ寝ます…。

 

 

嫁と男友達の両方の信頼を勝ち取る方法

 アメリカから友人が日本に一時帰国していて、仕事の合間に会いに行った。ただ、この友人は困った性格で、酒が進むとどんなに説得しても中々返してくれず、果ては女の子がいるお店に行きたがるのだ。そもそもそんなに得意なタイプのお店じゃないし、仕事もあるから早く帰りたい。もっと言うと、独身時代なら付き合ってあげていたかもしれないが、今は結婚している身なので、奥さんが傷ついたり不信感に陥る場所には行きたくない。

 

 案の定、酔っ払ってきて家に帰してくれず、面倒になってきたのでどうしたもんかと考えた結果、23:30に嫁に電話をかけてもらうことにした。そろそろ終電も近くなった頃の時間に嫁から電話がかかってくれば、「ちょっと嫁がコレなもんで…」という言い訳がつくし、一方で奥さんにも「ちょっと困った事態になってさ…」と一芝居打ってもらうことで、僕は女の子がいるお店には行きたくなくて渋々飲みに付き合っているんだと信じてもらう事ができる。

 

 作戦は成功し、あれだけしつこかった友人も家に帰してくれた上、奥さんに電話で「愛してるって言ってたよ!」なんて一押しもしてくれて、ますます嫁さんの信頼を得られて一石二鳥である。唯一の問題は嫁さんもこのブログを読んでいるので手の内がバレバレである事だが、もし男友達の連帯感と家庭の天秤にかけられて困っている人がいたら、是非使っていただきたい手法である。