来週から旧正月なので、妻の実家の台南に帰る予定だった。先週、撮影仕事で出張に行く前日にチケットを買おうとしてパスポートを開くとあらビックリ、パスポートの期限が先月で切れていた。血の気が引いたのだが、再申請すれば6日でパスポートはもらえるらしい。じゃあ、明日出張行く前に申請すれば間に合うじゃんか!
でも、申込書を書いていたら気になる欄が…
1.外国で入国拒否、退去命令又は処罰されたことがありますか。
□はい □いいえ
これは非常に悩ましい設問だった。何故なら昔からこのブログの読者の皆さんならご存知の通り、僕はLAでビザを剥奪され、強制送還された過去があるのだ。
この設問への答えは「はい」と書くのが無難なのだろう。ただ、ここで「はい」を選択すると、申込用紙とは別に「事情説明書」を用意する必要があり、審査の期間も1~2ヶ月へと伸びる。今回の台湾帰省に間に合わないのである。
入国拒否にはあったけれど、その後ESTAでアメリカに戻ることもできたし、別に退去命令や処罰も受けてないし、ましてや犯罪を犯したわけでもないしな…。ここは旅行に間に合わせるために、思い切って「いいえ」にしておこうか。でも同じところに「虚偽の申請は旅券法違反または刑事罰により罰せられる可能性があり」などと怖いことが書いてあるではないか。でも「はい」を選んだところで、バレるだろうか?
などと色々と逡巡しているうちに、ふと横を見るといつもは可愛らしい嫁さんが般若の形相をしていた。そもそも彼女は僕が計画を持ってパスポートを更新しておかなかったことに激怒している。彼女を恐れて「はい」を選ぼうかと思ったら、「法律を犯す可能性のある選択肢を選ぶんじゃない!」という真っ当な理由で叱られ、3月にも台湾に帰る予定があるので今回の帰省を犠牲に正直に申請することにした。
で、一昨日出張を終えて、改めてパスポートセンターに出向いた。「事情説明書」などという供述書みたいな紙切れを持って、緊張の面持ちで行った。平日の昼下がりということもあり、パスポートセンターはディズニーランドみたいに混んでいた。整理券を受け取る際、係の方に「すみません、この項目で『はい』を選んだんですけど…」と伝えると、彼女の眼差しが代わり「少々お待ちください」と奥の方に消えていった。
しばらくすると戻ってきて、「それでは、『はい』の方は奥の方で事情を伺いますので、あちらに向かってください」と謎の裏口へ通された。あたかも「『はい』の方」が犯罪者の隠語みたいに機能していて、心なしか周りの人の僕を見る目も軽蔑の眼差しに感じてしまう。縮こまりながら裏の部屋へと行くと、刑事のような初老の男性が待っていた。
「『はい』を選んだということで、事情をご説明願いますか」と恐ろしさを感じる丁寧さで聞かれたので、慎重に説明した。会社からスポンサーを受けたビザで就労していたこと。結果、そのビザが就労に適していないと判断され、日本に送り返されたこと。しかし、その後ESTAで問題なくアメリカにも入国できたこと。そして僕はなんの犯罪を犯したわけでも処罰を受けたわけでもないこと。
全てを詳細に説明したあと、刑事のような男は拍子抜け足した顔で「あ、ESTAでまた入れたの?だったら入国拒否じゃないですね」と書類を返された。えっ、そうなの!?僕のケースがレアすぎるのか、Googleで調べてもChatGPTに聞いても納得のいく答えがなかったので、とても驚いた。「どうします?ついでに申請もしておきます?」と聞かれたのでそのままパスポート申請もすることに。「あの、事情説明書は必要でしょうか?」と聞くと「あ、いらないです」と返された。なんだったんだよ!
結果、パスポートを取得するのに1~2ヶ月かかるばかりか、長蛇の列をスキップして通常通り6日で受け取れるように申請ができた。なんだ、強制送還*1ってディズニーランドでいうファストパスだったのね!
ということで、来週から台湾行ってまいります。