Taiyakiが選ぶ2023年映画ベスト&ワースト

 さあ、2023年もいよいよ終わります。毎度のことですが、あっという間に終わってしまいました。時間の過ぎ方はフリーランスになってから加速度的に毎年早くなっている気がして、映画をじっくり観れていた学生の頃が恋しくてたまりません。

 

 今年鑑賞した新作映画は68本でした。コロナ禍以降では最大の鑑賞本数ですが、もうこの辺が限度で昔みたいに年間90本以上観ることはないんだろうな、と薄々勘付いてきました。結婚して一人時間が減ったのもそうですが、最近は鑑賞欲よりも自分で撮る創作意欲の方が強くなったので、どうしたって劇場に足を運んだり配信サービスを見る時間が作れなくなってきました。でも、映像制作者としては正しい時間の使い方な気もするので、そこまで悲観的に思う必要もないかもしれません。

 

 さあ、そんな余談は置いておいてですね、今年僕が愛してやまなかった作品を振り返っていきましょうかね!

▲今年のイメージキャラクターのマニーさん!

 

 

【特記事項】

  • 2023年に鑑賞した新作のうち、僕が12月31日までに見た68本+αが対象。詳しくはこちら
  • 星取り表やTwitterに載せた★の数、上半期ベストテンの順位と矛盾している時がありますが、いつもその時々の気分に左右されているのでご了承ください。

 

【2023年映画ベストテン】

  1. フェイブルマンズ
  2. ゴジラ-1.0
  3. スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
  4. バビロン
  5. 逆転のトライアングル
  6. タイラー・レイク -命の奪還-2
  7. ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!
  8. Oppenheimer
  9. SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
  10. FALL/フォール

【解説】

 ①は最後まで悩んだ。というのも、この間配信で話したんだけど、現在進行形で起きているガザの悲劇に対して、スピルバーグの声明が僕はちょっと悲しくて、順位を下げざるを得ないと思っていたからだ。

 

 でも自分の気持ちに正直になった時に、やっぱりスピルバーグチルドレンとして育った身としてこの映画の順位を下げることはどうしたってできなかった。映画を愛し、映画に愛されたスピルバーグが、映画が持つ加害性に気づき、それでも映画を追い求めるしか他になかった。鑑賞時に過呼吸になるくらい泣いて、やはりあの感動には嘘がつけないと思ったので1位にした。

 

 ただ、やはりスピルバーグのガザ市民に対する配慮に欠いた発言もまた無視ができないのも事実なので、スピルバーグの映画で育ったからこそ彼の声明には異議を表し、今後の彼の言動には注視していきたいと思います。

 

 ②は期待と不安が入り混じっていたところ、見事なゴジラ像を提供してくれた。確かに人間ドラマやセリフの部分で山﨑貴の悪癖が出ていたが、それを補って有り余るくらい山崎貴渾身のVFXが圧倒的で、銀座の破壊シーンでは畏怖の念で泣いてしまった。『シン・ゴジラ』のあとで作る本作は本当に難しかったと思う。邦画でスピルバーグ映画が見れた!という感動をありがとう。

 

 

 ③は最近のハリウッド映画が使い回し過ぎて、既に陳腐さすら出てきてしまったマルチバースという概念を、マルチバース映画の先駆者として一歩先に進めた運命論を描いていて本当に素晴らしかった。加えてアニメ表現も前人未到の域に達しており、青春映画としても非常に繊細な心理を優しく描いてい、さらには移民が直面するギョッとする展開まで触れていたり、本当に非の打ち所がない作品でした。あ、嘘、一つ欠点がありました。クリフハンガーな結末で我々を飢えさせたことだ!

 

 ④は①と比べればちょっと未熟な映画愛かもしれないが、それでも偉大な映画史の一部になろうともがいた映画人達の話なので、現在進行形でもがいている僕が泣かない訳がないよね!デミアン・チャゼルはエンディングで怒涛の編集をかまして観客をドライヴさせる癖があるけれども、本作では見事にハマってしまったね。楽曲も最高でした。

バビロン

バビロン

  • Brad Pitt
Amazon

 

 ⑤は昨日のコメディ映画ベストテンで1位にしたので割愛。ヒエラルキーがひっくり返る第三幕やエンディングのキレまで素晴らしかった!

 

 今年は『ジョン・ウィック:コンセクエンス』や『イコライザー THE FINAL』など、数々のアクション映画の名作があったけれど、とにかく⑥の中盤の21分間ワンショットアクションに尽きる。前作の12分間のワンショットもすごかったけど、あちらが遥か遠くに霞むくらい本作のワンショットアクションは更に複雑で、その想像を絶する苦労・努力・技術を思うと敬意の念しか出てこない。この映画史に残るアクションをコーディネートした全ての部署に拍手!

 

 ⑦は③同様、アニメ表現として新次元に到達していると思う。IMAXでの映像体験や、没入感のある3D体験、臨場感のある音響体験など、さまざまな映像体験を志す映画人は数多くいれど、「家のソファーでハッパ吸いながら見る」映像体験を追求しているのはセス・ローゲンくらいしかおらず、ついにその極致まで辿り着いたサイケデリックアートだった。そして、これまた思春期の繊細な心情を描いたストーリーも素晴らしかった。

 

 ⑧は台湾までわざわざ観にいった記念も含めて。科学への探究心のあまり、原子爆弾を生み出しパンドラの箱を開けてしまった男の自省の物語として、とても真摯に作られていた映画だった。ついに来年日本公開も実現するそうなので、僕も改めて劇場に足を運びたい。

 

 

 ジャニーズ問題や松本人志の性加害報道など、日本の芸能界の歪みが暴かれた年となった2023年に見ておくのが最も相応しいのは⑨。ハーベイ・ワインスタインのおぞましい手法を明らかにしていくだけでなく、加害から数年経ても被害者を襲うPTSDセカンドレイプも描く。単に時事問題を扱っているにとどまらず、映画としても非常にサスペンスフルでスリラー映画としても手に汗握る。今年のアカデミー賞で無視されたのが不思議で仕方がない。

シー・セッド その名を暴け

シー・セッド その名を暴け

  • キャリー・マリガン
Amazon

 

 毎年ベストテンの最後に選ぶのは、なんとなくその年で一番心を無にして楽しんだ映画を選んでいるんだけど、⑩はここ数年の中でも「偏愛枠」に最も相応しい。一見馬鹿としか思えないプロットをこんなに真面目にサスペンスフルにハラハラさせられるのはすごいよ!

 

 さあ、ベストのお次はワーストテンです!

 

【2023年映画ワーストテン】

  1. インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
  2. CREED SHINJIDAI
  3. MEG ザ・モンスターズ2
  4. 死霊館のシスター 呪いの秘密
  5. ホーンテッド・マンション
  6. REBEL MOON パート1:炎の子
  7. House Party
  8. シン・仮面ライダー
  9. ナポレオン
  10. エクソシスト 信じる者

 

【解説】

 ❶は本当に許さない。昨今のハリウッド大作の悪しき習性であるノスタルジアポルノについにインディ・ジョーンズまで巻き込まれてしまったことが悲しくて仕方がない。本作のオカルトテーマも『クリスタルスカルの王国』の宇宙人が可愛く見えるほど醜悪。エンディングは確かに感動するかもしれないが、そりゃスピルバーグとルーカスが生み出してくれた愛すべきキャラクターとシリーズの積み重ねのおかげであって、この映画が生み出したものは何もない。ディズニーはいい加減にしろ!

 

 『クリード 過去の逆襲』が終わった後に❷が流れ、劇場が明るくなった時に観客の間で漂った気まずさを僕は一生忘れない…。

 

 

 単純にただただつまらなかったという意味では❸が圧倒的ワースト。バカ映画として楽しむには真面目すぎるし、じゃあ真剣に見ようかと思ったらあまりにも頭の悪い脚本で、人喰い描写を楽しめば良いのかと思ったらマイルドで…どうしていいか分からなくて困った。

 

 ❹はただただジャンプスケアってだけでこれまた退屈だったな。シェアードユニバース映画界が全体的に不調だな。

 

 ❺は近年のディズニーの没落を象徴するような映画だった。相対的に2003年版の評価が上がったのは良かったけど、そもそも作られた意味がない作品だったからな…。

 

 ❻はついさっき観終わったんだけど、ケミストリーが欠けた『七人の侍』って感じで、そりゃルーカスフィルムも企画通さないよな、と。ザックはいい加減、ハイフレームレートで撮影してスローモーションにすればかっこいい、というミラーレス一眼買いたてのビデオグラファーみたいな演出はやめてくれ…。

 

 ❼はHBO MAXで見た日本劇場未公開作なんだけど、「金に困った若者二人が、レブロン・ジェームズの家で勝手にハウスパーティーを開いて金儲けする」というプロット自体は面白そうなのに終始ネタが散漫で、アメリカンコメディファンとして居た堪れない気持ちになった。あと、僕は人が死ぬのにそれに対してフォローがないコメディ映画は好きじゃないです。でもレブロンはカッコ良かったよ!

 

 ❽は庵野秀明最新作として期待したら、邦画の悪い癖がつまった映画でとても困った。ドキュメンタリーも物議を醸したが、特撮愛が強すぎるが故にバランスの欠いた作品だった。

 

 ❾もリドスコの歴史スペクタクル映画として期待してたのに、まさかモラハラ夫が嫁にLINEで返信が来ないのをグチグチ言い続けるような話になってるとは思わなかったよ!

 

 

 ➓は面白くは見たんだけど、中絶反対派の思想が強く見えてしまい、さらには原典キャラクターへの扱いも疑問を呈し、二人の少女が迎えた結末も喜べるものではなく、リブート版『ハロウィン』のアプローチで名作シリーズを復活させようとしたものの失敗してしまった感…。

 

【総評】

 ここ数年忙しくて映画が見れてないことをボヤいているが、忙しい合間を縫って観に行っているのは結局金のかかった大作だらけで、インディーズ映画や非英語圏の映画、邦画が観れていないことが恥ずかしい。なのに、映画館に行っては大味な大作映画に対して愚痴を言う非常に不健康な映画ファンになりつつある気がする。一方で、今年の『サウスパーク』TV映画でも散々ネタにされていたが、ディズニーをはじめとしたハリウッド大作の限界のようなものがいよいよ隠しきれなくなった一年だったと思う。

 

 ただ、今年ベストに選んだ作品はどれも映像表現やストーリーテリングとして秀でた部分や尖った部分がある作品ばかりで、15年以上映画ファンやっててもまだまだビックリさせられたり感動させられる新作映画が存在するから、映画鑑賞はやめられない。

 

 ベストテンから漏れた作品で特に気に入っているのは『AIR/エア』『search/#サーチ2』『ノック/終末の訪問者』『ザ・ホエール』『怪物』『Pearl/パール』『ヴァチカンのエクソシスト』『サンクスギビング』など。

 

 来年も創作活動に刺激を与えるいい映画と巡り会えますように。最後まで読んでいただきありがとうございました、良いお年を!

 

【過去のベスト&ワースト】

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