真の面白い映画とは

 日本での『ダンケルク』35mm期間限定上映のニュースを見て、寝る直前につらつらツイートしていたらなんか色々と思うところが湧いてきたので、さっきのツイートを今日はまとめて清書しておこうと思います。

 

 僕は『ダンケルク』を二回観ている。初回は35mmフィルム版を観て、まさか大好きなノーランの作品を観て退屈な気持ちになるとは夢にも思っていなかった。ところが二回目をIMAX 70mmで観ると、印象が180度変わって衝撃を受けた。鑑賞フォーマットが異なるだけで、映画としてこうも印象が異なるものなのかと。

 

 詳しくは当ブログで感想記事を書いた*1が、そもそもノーランはIMAX 70mmで上映されることを念頭に置いて撮影していたので、アスペクト比が変わり約半分もの情報量が失われた35mm版は別物と考えてよく、印象がまるで違ってくるのは当然のことだった。事実、既にアメリカで両バージョンを鑑賞した観客の中で、僕と似たような感想を抱いている人も見かけた。

 

 だから日本公開に先駆けて幸運にも異なるフォーマットで『ダンケルク』を観ることができた僕は、日本で鑑賞する際も可能な限りIMAXで観たほうがいいと勧めてきたが、少し自問自答してしまう。

 

 僕は『フォースの覚醒』*2が大嫌いでその年のワーストワンに選んだほどだが、当時賛否両論となっていた『フォースの覚醒』に対し、支持派の意見の一つとして「レーザーIMAXで観ろ」というものがあった。稀に反対派の意見の論旨を無視する勢いで「それでもレーザーIMAXは別格だから」と暴論を投げつける人も見かけ、「レーザーIMAX警察」と揶揄する声もあったし、僕もやたらと「IMAXで観ろ」と主張する声には冷ややかな目で見ていた。

 

 僕は世界でも最も映画鑑賞的に恵まれている都市である東京*3から市にシネコンが一つしかないアメリカのど田舎に来てからIMAX信仰というものに懐疑的になってしまった。契機となった映画は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だ。渡航時期的に日本での公開には間に合えず、アメリカでもだいぶ終了間近という微妙なタイミングで、近所のシネコンでも一番小さいスクリーンで2Dで鑑賞した。観る前は歯痒かったが、『マッドマックス』のテンションと熱量はスクリーンの大きさなんかで測れるものではなかった。また、最近キャスリン・ビグローの『デトロイト』を観に行ったが、相変わらずのキャスリン・ビグローの緊張感溢れる演出は冴え渡っていて、そのとてつもない臨場感の前ではスクリーンの大きさなんて忘れてしまった。

 

 そういった鑑賞スタイルとは無関係にパワーを持った作品と比べてしまうと、『ダンケルク』はIMAXで鑑賞したほうがいい、とあくまで条件付きで勧めてしまうのは何か作品として欠陥があるのではないかと、複雑な気持ちになってしまう。あれだけIMAX警察に冷ややかだった自分に対して自己矛盾を感じるし、あわや『フォースの覚醒』もIMAXで観たら全く違う印象を抱いてしまっていたんじゃないかと思うと恐ろしい。現に、今では『ダンケルク』は好きな作品となってしまっているので、尚の事だ。

 

 話は少し逸れるが、告白すると『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は渡米間もなくまだ耳も慣れていない状態で鑑賞し、しかもオーストラリア訛りやスラングのせいで聞き逃した部分はたくさんあった。にもかかわらず、鑑賞中は「自分は今とんでもないものを観させられている!」という得体の知れない高揚感があった。真の傑作映画は言語の壁すら超越する瞬間を目撃したのだ。

 

 そういえば、たしか『ムトゥ 踊るマハラジャ』を日本に輸入したのは江戸木純氏だったと記憶しているが、江戸木氏も国際線の機内上映で『ムトゥ』をたまたま言葉もわからず観て、この面白さを伝えねば!と奔走し、なんとか日本公開に漕ぎ着けたという話だったと思う。

 

 なんかブログに書いてもまとまらず、何が言いたいかよく分からない感じになってしまったが、結局のところ真の面白い映画とは、鑑賞フォーマットだとか言語だとか、そんなチャチなもんじゃあ 断じてねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗をうかがわせるような、そんな作品だと思う。

 

 

 

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*1: 

*2: 

*3:まあ、住んでいたのは浦安だけど