Taiyaki生きてます通信#14 怪しい黒人にカージャックされかける

 授業終わり、友達をアパートに送って自分のアパートまで帰る途中だった。人気のない交差点にさしかかろうとした時、見るからに怪しい黒人が立っていて嫌な予感がした。というのも、その通りはジョーンズボロ市内でも治安が悪いことで有名だったからだ。

 

 一時停止標識に従って止まった瞬間に、黒人が行き先をブロックする。あ、やべえ、と思ったら車のドアを開けられた。日本人的な感覚で、運転中に車をロックする習慣がなかった。「カム&ゴー(近所のガソリンスタンド)に行きたいんだけど乗っけてってくれねーか?」確かに歩けば10分近くかかる距離だが、別に不可能な距離でもない。

 

 震える声で「いや…歩いていけばいいんじゃないですかね…?」と文を言い終わらないうちに車に乗り込まれた。「へへへ、兄ちゃんありがとよ」緊張で心臓がバクバクしながらも、乗り込まれてしまってはどうしようもなく、車だと2、3分程度だし下手に抵抗して怖い目にあうくらいならとっとと送って立ち去ろう…と思ってガソリンスタンドの方向に車の向きを変えたら「ああ、違う違う、俺が行きたいのは大学の橋を渡った先(この時点から車で5分くらい離れている)のカム&ゴーだよ」ちなみにそんなところにカム&ゴーはない。あ、これアカンやつや…。

 

 この時脳裏につい一ヶ月前くらいに見た『パトリオット・デー』*1の一シーンが浮かんだ。中国人の男の子が停車中の車の中でメールして居たら、ボストンマラソン爆弾テロ事件の容疑者に車を開けられてカージャックさせられる。まんま今の僕だ…。

 

 バクバク心臓を鳴らしながら車を走らせる。車内に不潔な匂いが充満する。謎の黒人はひたすら喋り続けるが、もちろん全然耳に入ってこない。万が一に備えてスマホを左ポケットに隠し、『パトリオット・デイ』の中国人が犯人たちから逃げたシーンをヘビーローテーションで脳内再生する。「あ、でも逃げたらカメラとか外付けHDとかiPadとか全部車の中じゃん…どうやって課題提出しようか」なんてことまでも考えていた。

 

 人生で一番長かった5分を迎えようとした時、謎の黒人が口を開く「ああ、そこのガソリンスタンドに停めて!」ああ、僕はここで死ぬんだ…って、え?確かにガソリンスタンドがあるが、カム&ゴーではない。多分ハンバーガーチェーンを全てマックというようなおっさん的な感覚ですべてのガソリンスタンドをカム&ゴーと呼んでいたのだろう。

 

 拍子抜けして車を停めると、「助かったぜ、ありがとよ。ところでクォーター持ってねーか?喉乾いちまってよ、兄ちゃんにもお礼に何か買ってやりてーし」と言われたが、なんでお礼を僕の金で買うんだよ!とツッコミたいところをグッとこらえて丁重にお断りして車を急発進させて一目散に立ち去った。どうやら本当にただ単にガソリンスタンドに行きたかったらしい。

 

 本当に何も起きなかったの奇跡だなこれ!

 とりあえずこれから運転中でも鍵は閉めます…。

 

 

*1: