RIP 樹木希林

 女優の樹木希林さんが亡くなりました。

 樹木希林さん(以下敬称略)の訃報にここまで心を動揺してしまうのは、なんとなく彼女には不老不死の印象があったからです。その長いキャリア故にフィルモグラフィーは膨大で、僕のようなにわか映画ファンはとても見切れてはいませんが、映画で樹木希林を見掛けるとといつも独特な風格のお婆さんを演じていてある種の安心感がありました。大学の時名画座で観た藤田敏八の『赤ちょうちん』(1974年)が恐らく僕が知る限りで一番若い樹木希林ですが、40年以上前から既にお婆さん役を演じていて衝撃を受けた記憶があります。

 

 また、2013年の日本アカデミー賞の授賞式をテレビで見ていた際、樹木希林がスピーチで顔が全身に転移していたことも覚えていますが、それから一切彼女の病気のニュースについては聞かず、変わらず是枝監督の映画に出演していたことも不老不死のイメージを強く印象付けているのでありました。しかし、当然ながらそんな人間はいるはずもなく、癌になっても作品に出続けることができたのは偏に彼女の常任離れした力強さ故でしょう。

 

 実は樹木希林はジャパン・カッツというNYの日本映画祭で今年の7月に来米していました。彼女は沖田修一の『モリのいる場所』の舞台挨拶に登板しており、僕も凄く観に行きたかったのですが、仕事の忙しさにかまけて観にいくことができませんでした。そんな彼女の在米中のインタビューが、運命のイタズラか昨日発売されたニューヨークの週間邦字紙『ニューヨークBiz』に載っていました。

f:id:HKtaiyaki:20180917102005j:image

 ああ、やっぱり忙しくてもジャパン・カッツに足を運ぶべきたったと、街で見かけた情報誌を片手に後悔するのでありました。ご冥福をお祈りします。

予定変更

 すみません、今日こそは『クレイジー・リッチ!』の感想をお届けする予定でしたが、アーカンソー時代の親友のメキシコ人が今週末から僕を訪ねにきていることをすっかり忘れていました!ということは、少なくとも今週末はずっとノンベエの予定ですが、しかしあと数行書けば『クレイジー・リッチ!』の感想は書き終わるので隙を見て投稿したいと思います。と、野心的なことを書いて実現したためしがないので、今週末は更新がままならなさそうなことを予め謝罪いたします。

アジアの風が吹いている

 今日は『クレイジー・リッチ!』の感想をお届けする予定でしたが、なかなかまとまらなかったので明日に延期します。そういえば最近『search/サーチ(原題:searching)』という映画を観たのですが、これも面白かった。全編をパソコンのデスクトップキャプチャー映像のみで構成したかのような異例な映画で、例えばタイピングの速度で演技をする、といった従来の映画では考えられない演出に膝を打つ。

 

 でも僕が面白かったのは、『search/サーチ』の主人公親子もアジア系だったことで、『クレイジー・リッチ!』と合わせて今アメリカの興行界をアジア系の物語が賑わせていることになる。僕は自分がアジア系移民だとかそんなことは全然思っていないけれど、でもこの状況はやっぱりなんとなく嬉しい。昨日書いた『フアン家のアメリカ開拓期』もシーズン継続中で、実はアメリカで今一番ホットなのはアジア系移民なのかもしれない。

 

クレイジー・リッチ・アジアンズ 【上下合本版】

クレイジー・リッチ・アジアンズ 【上下合本版】

 

 

 

やーい、お前ミミズ食ってやんの!

 出張を終えて無事今日NYに帰ってきたわけですが、飛行機内で観たドラマ『フアン家のアメリカ開拓記(原題:Fresh Off The Boat)』が面白かった。ワシントンDCの中華街からフロリダ州オーランドの白人ばかり住んでいる住宅街に移った台湾系アメリカ人の家族を主人公にしたコメディで、原作を書いたエディ・フアンの自伝的ドラマでもある。

 

 ノトーリアスBIGが大好きでヒップホップファッションに身を包む12歳のエディくんは、いかにもアジア人的な教育ママのお母さん(『クレイジー・リッチ』にも出ていたコンスタンス・ウー)にいつも叱られている。凄く感情移入したのは昼ごはんのシーンで、エディくんがお母さんが作ってくれた台湾料理の弁当を開くと周りの白人の子供たちが「うげえ!なんてこんな臭いもん食ってんだ!体育館の裏で食えよ!」とバカにするのだ。

 

 ヒップホッパーなエディくんは白人たちに舐められたのが悔しいので家に帰ってお母さんに怒鳴ってしまう。「台湾料理なんてもう作らなくて良い、僕も白人のご飯が食べたい!」白人のご飯が分からないお母さんは、渋々エディくんを連れてスーパーマーケットに行って冷凍ピザを買う。もう、まさにこれはアジア系の子供たちが学校で味わう通過儀礼で、僕もこんな体験をしたのを思い出してしまった。

 

 僕は8歳までカリフォルニアに住んでいて地元の小学校に通っていた。アメリカの学校には給食がなく家から昼食を持っていくのが通例で、僕も母の愛情こもった手作り弁当をいつも持って行っていたのだ。とある日の弁当に糸こんにゃくが入っていたのだが、それを指して周りのアメリカ人の子供たちが「うげえ!ミミズ食べてるよ!」と笑い者にしてきて凄く悔しかった。僕もエディくんのように家に帰ってからもう糸こんにゃくを入れないでほしいと母に怒った記憶があるが、よくよく考えると昼から売店のピザだのハンバーガーだの食べてるアメリカ人の子供たちの方がよほど不幸だったと思うよ。いやあ、親の優しさというのは歳をとらないと気付かないものですな。

 

 

Fresh Off the Boat: Season 1/ [DVD] [Import]

Fresh Off the Boat: Season 1/ [DVD] [Import]