たかが映画だ。

 昨日撮影した現場が結構特殊な施設で、狭い上に床に深い穴が空いていた。日本人録音部さんがブームマイクを出す場所に困り、床と穴の際を攻めて立とうとしたら、彼の上司の海外クルーが「Don't do it. It's just a movie. (そんな危険なことするな。たかが映画だ)」と制止した。多分、僕の今後のキャリアにおいて深く印象に残るであろうくらい刺さった言葉だ。

 

 なんならアメリカでコーディネーターやってた時も日本に帰ってきて日本の撮影現場に参加させられた時も、今振り返れば下手したら重大な事故になっていてもおかしくないくらい、僕は散々危険な目に遭ってきた。注意した海外クルーも映画が好きだからこそ映画に携わっているはずなのに、「たかが映画」と言い切ってしまうのがとてもかっこいいと僕は思った。そう、人権や人命よりも大事な映画なんて、この世にはないのだ。

 

 ちなみに僕はもう、日本の制作現場の仕事は断るようにしている。