『サウスパーク』からコロンブスデーが消えた日

 Mrs. Green Appleの「コロンブス」が大炎上して間も無く1週間経つ。あのMVは叩かれても仕方がないと思う一方で、あのMVが炎上するほど日本でも「コロンブス=大量虐殺者」とのイメージが流布していたことに驚いた。(まあ一方で、そのイメージが定着しきれていないからこそ、あんなMVを作ってしまったんだと思うけど)

 

 僕が今回のMV大炎上を聞いて真っ先に思い浮かべたのが『サウスパーク』で2017年に放送されたS21E3「ホリデー・スペシャル」だ。どういう話なのかというと…

 

  • 冒頭からいきなりサスパーク小学校で暴動騒ぎ。なんと月曜日から学校の祝日だったコロンブスデーがとある保護者の提案により消えてしまうというのだ!
  • その保護者というのが、スタンのお父さんランディ。このシーズンのランディはポリティカル・コレクトネスにハマっていて、ネイティブアメリカンを虐殺したコロンブスを讃えるわけにはいかん!ということで、学校にコロンブスデーをキャンセルするように圧力をかけたり、オハイオ州コロンブスに住んでいる人一人一人電話をかけて「このレイシストめ!」と罵ったり、NYのコロンブスサークルにある像にウンコしたりと大忙しだった。

  • 一方で、コロンブスデーが無くなることに納得がいかないスタンたちは何かないかとインターネットを探していると、2013年頃にコロンブスのコスプレをしていたランディをインスタグラムで発見!「この頃は誰もコロンブスが悪いなんて誰も思ってなかったの!」と言い訳しても、子供達にこんなに簡単に過去の写真を見つけられてしまっては、自分もいつキャンセルされてもおかしくはない。
  • ランディは憂鬱にテレビを見ている、この頃流行っていたDNAテストのCMを見かける。ピンと閃いたランディ、ネイティブアメリカンの男性を家に呼んで濃厚なキスを交わし、そのまま唾液をDNAキットで検査してもらう!
  • 一方、子供達は学校の行事選定委員に脅しの電話をかける。「ランディ・マーシュの過去の写真をインターネットで見ろ…さもないとお前のチンコを切り落とすぞ!」しかし、ネットにはフェイクニュースが溢れているとして頑なにも信じない選定委員。フェイクニュースが流行り出したのもこの頃でしたね。
  • しかし、一応行事選定委員はランディの元に確認の電話を入れる。焦ったランディは家中にあるコロンブス由来の物を片付ける。ちょうどコロンブスの帽子をかぶっていた折に先ほどのネイティブアメリカンが現れる。濃厚なキスが忘れられないネイティブアメリカン男性はランディに求愛するが、うざったく思ったランディはネイティブアメリカン男性をぶん殴る。ちょうどその瞬間を隣人に見つかってしまい、動画を拡散されてしまう!

  • この動画をネットで手に入れた子供達は行事選定委員を家に拉致、インターネットは信じないというのでわざわざVHSに焼いて動画を見せると、行事選定委員は唖然。
  • さて、ランディはDNAテストの会社から呼び出され、先のテストには「異常性」が見られたためにアナルから検体を取られてしまう。結果、ランディにはネイティブアメリカンの遺伝子は入っておらず、典型的なイギリス系白人のDNAとの結果に落ち込む。しかし、2.8%がネアンデルタール人の遺伝子が入っており、ネアンデルタール人ホモ・サピエンスに駆逐され、交雑=レイプにより遺伝子が自分に残った、つまり自分は虐殺の被害者であると知って激怒する。
  • ランディが家に帰ると、子供達と選定委員の男が待ち構えていたが、「てめーらの先祖はよくも俺の先祖をレイプしやがって!」とぶん殴る。ちょうどその折にネイティブアメリカンの男も現れて、ランディに愛を伝えるつもりで「自分自身と向き合え」と懇願し、ランディは被害者を演じても問題は解決しないと悟る。
  • 翌日、学校でランディは行事選定委員と一緒に休日を復活させるも、「コロンブスデー」という名称の代わりに「先住民の日」にしようと提案。しかし、エピソード中ランディはずっと「先住民(indigenous)」を「激怒(indignant)」と勘違いしていて、人々に怒りの気持ちをぶつける日として選定されたのでした

 

 …という、実に2017年頃のポリティカル・コレクトネスが先鋭化していた時代らしいエピソードであった。逆にいうと、アメリカでは7年も前に起きていたことを何周遅れで間違えて燃えてるんだ、という呆れも感じてしまいますな。