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セックスも戦いの手段である!/『300 帝国の進撃』★☆☆

感想 映画

 フランク・ミラー原作のグラフィック・ノベルを2007年に実写化した『300』の続編。前作はスパルタ兵とペルシア軍が戦った「ティルモピュレーの戦い」を題材としていたが、本作はギリシア連合軍とペルシア軍がぶつかった「サラミスの海戦」を描く。

 
 これらの戦いは紀元前480年に起きたペルシア戦争の一貫であり、なので本作は前作『300』の後日譚というより、前作の裏側ではこういうことが起きてました、という舞台裏を描くスピンオフのようになっている。

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 そのためまず一つ目の不満が出て来るのだが、『帝国の進撃』にはスパルタ兵がほとんど出てこない。前作の何が魅力かって、カリスマ性溢れるレオニダス率いる300人の精鋭スパルタ兵の並外れた強さと団結力であった。しかし、本作の主人公テミストクレスは世界史の教科書には出てくるものの、この映画においてはキャラ設定の問題なのか、演じたサリヴァン・ステイプルトの技量の問題なのか、イマイチパッとしない影の薄いキャラになってしまっていた。兵士個人に焦点を当てたドラマも前作の焼き直しみたいなものばかりだったのも残念だった。

 

 そして『300』の続編として致命的なのは、要のバイオレンスアクションに途中から飽きてしまうことだ。最初こそ手足がばっさばっさ切り落とされるアクションに興奮したものの、この度新しく監督に就任したノーム・ムーロは前作のザック・スナイダーほど痺れる画づくりやサービス精神に富んでおらず、似たような画ばかりなので退屈してきてしまう。海戦なのでほぼ船上が舞台となるが、まるで船酔いに襲われるがごとくクライマックスは睡魔との戦いだった

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 ではこの映画には観るべき所が無いかと言われるとそうではなく、むしろある一点において突出して優れている。つまりエヴァ・グリーンが演じたアルテミシアである。とにかくこの映画、アルテミシアの女傑っぷりが素晴らしいのである!彼女を観るためだけに価値があると断言していい。

  アルテミシアはギリシアの少女であったが、傭兵に家族を殺され奴隷にされていたところをペルシアの使者に拾われて育てられたため、彼女は故郷に激しい復讐心を抱き、ペルシア軍の将を司ることとなった。このように彼女の特殊な出自が丹念に描かれていることもあり、アルテミシアはこの映画のどのキャラよりも芯がしっかりしており、強烈な存在感を放っている。

 なにしろアルテミシアは殺して殺して殺しまくる!戦地に赴けば他のどの兵より敵を殺し、必要であれば使えない部下も躊躇なく殺す。恐るべき戦闘狂だ。中でも一番の見所は、アルテミシアがペルシア軍への降伏と服従を求めるために敵将テミストクレスと交わったセックスシーンである。それは誘惑のための性交というにはあまりにも暴力的であり、むしろ相手を力で屈服させることに主眼をおいた激しいものであった。ウォーマシンのアルテミシアにとって、セックスすら戦いの手段でしかない!

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 ただ、いくらこの最強の猛女を作り出すためといえど、前作で異彩を放っていたクセルクセスは実はアルテミシアの傀儡でしか無く、また同じく前作で真っ先に殺された使者*1実はアルテミシアの師匠であったという、後付けにもほどがある設定には首をかしげずにはいられなかった。うーん、やはり残念な作品である。


『300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~』予告編 - YouTube

 

 

*1:この2:50辺りで蹴り落とされる人です。


This is Sparta. Full scene. - YouTube

何度観てもかっちょいいですね。そして『帝国の進撃』にはこの"This is SPARTA!!!"のみたいにキマった台詞も無いのが残念でした。