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朽ちゆくウルヴァリン/『LOGAN/ローガン』★★☆

感想 映画

 『X-MEN』シリーズのスピンオフ『ウルヴァリン』シリーズ第三弾にしてヒュー・ジャックマンのシリーズ引退作、『LOGAN/ローガン』を鑑賞。監督・脚本は前作『ウルヴァリン:SAMURAI』も手掛けたジェームズ・マンゴールド、製作はサイモン・キンバーグ。主演はヒュー・ジャックマン、共演にプロフェッサーXでお馴染みのプロフェッサーX、脇をリチャード・E・グラント、ボイド・ホルブルック、スティーフン・マーチャント、そして新鋭の子役ダフネ・キーンらが固める。

 

※極力ネタバレは避けていますが、ニュアンスでなんとなくわかってしまう部分もあるかもしれません。

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  冒頭、夜のメキシコの荒野がピアノとハーモニカが特徴的なサントラで侘しく奏でられる。劇中でわざわざ『シェーン』を流していることから分かるように、これはアメコミの形を借りた西部劇である。但し、車で寝ていた老いたローガン/ウルヴァリンヒュー・ジャックマン)は強盗たちにボロボロになるまで叩きのめされ、ローガンも見返りに錆びたかぎ爪で彼らを惨殺する。『LOGAN/ローガン』は60年代や70年代の暴力的な西部劇を換骨奪胎した作品となっている。ローガンの風貌も明らかに西部劇の神様クリント・イーストウッドに影響を受けている。

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 ミュータントがすっかり絶滅危機に瀕した2029年。かつてX-MENとして活躍していたローガンも、体に埋め込まれたアダマンチウムによりすっかり弱っていた。ミュータントがいなくなった世界のローガンは惨めな人生を送っている。Uberのドライバーとして生計を立て、家に帰れば数少ない生き残りのミュータント カリバン(スティーフン・マーチャント)と共に呆けて能力の制御が効かなくなったチャールズ/プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)の介護をする極貧な生活をしている。

 

 若い頃はあんなに美男子(もちろんジェームズ・マカヴォイ*1ね)だったチャールズのこんな姿を見ることになるとは、誰が予想しただろうか!『フューチャー&パスト』*2の別世界の未来ではあんなに活躍していたのに!全く、長きに渡るシリーズ物はこれだから恐ろしい。頑固なジジイとなりFワードを連発するチャールズには思わず笑ってしまったが、彼がとんでもない贖罪を抱えていることも判明し、つくづく救いがない。

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 そんな彼らが今一度戦いの舞台に戻る契機となる少女がローラ(ダフネ・キーン)である。一見可憐なメキシコ人の女の子に見えるローラは過去25年*3で初めて確認された新たなミュータントの少女だ。ローラを狙う謎の組織から逃れるために彼女を守りながらカナダの国境を目指すプロット*4は『トゥモロー・ワールド』のようでもあるが、戦闘能力の高いローラが次々と自ら悪人を斬殺していくのでヒットガールも真っ青だ。ローガン、チャールズとローラが道中で疑似家族を形成していくのはロードムービーのようでもある。

 

 彼らの逃亡劇は冒頭にも書いた通り死体が次々と量産されていく血みどろなもので、アメリカではR指定を受けている。しかし、『LOGAN/ローガン』はただ単に『デッドプール*5のヒットにあやかりR指定を目指して制作されたのでは無く、R指定にした意味合いもまるで違う。愛した人間を死なせた過去に苛まされ、ただ死を待ち酒に溺れるローガンの前に、今一度また守るものができた。画面に鮮明に舞う血飛沫は、朽ちゆくローガンの最期の輝きでもあるのだ。ヒュー・ジャックマンも17年もの年月を連れ添ったキャラクターとの決別ということでいつも以上に演技に拍車がかかっており、観客の涙腺を緩ませる。

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 『X-MEN』シリーズは本家がドンドンつまらなくなる一方*6で、自由度の高いスピンオフの方がどんどん面白くなってしまっている。『LOGAN/ローガン』に至っては看板キャラも卒業するし、これをもってシリーズの有終の美としても構わない作品となっているが、まあこれからもずっとグダグダと続けていくんでしょうなぁ…。

 

 

 

*1:

*2:

*3:つまり『X-MEN ファイナル・ディシジョン』から一切新たなミュータントは

*4:ところで、『X-MEN』シリーズといえば現実社会情勢を絡めたストーリーが特徴的であったが、メキシコから始まり本作のカナダの国境を目指す物語は当然トランプ時代を反映している。

*5:

*6: