『The Room』のトミー・ウィゾーに会ってきた!

 ※Twitterでは『ザ・ルーム』と表記していましたが、当ブログでは正式な邦題の決まっていないものは原題で記すことにしているので、この記事では『The Room』で統一します。

 

 『The Room』は「最低映画界の『市民ケーン』」と評される程のカルト的駄作で、その舞台裏を描いた『ディザスター・アーティスト』をジェームズ・フランコが2017年に監督した。その際に僕は『The Room』を劇場に観に行ったが、なるほどどうして中々酷く、しかしその酷さ故に観客達から愛されていることも分かりとても楽しめた映画体験だった。そちらについては当時詳しく書いたので、下記記事を参考にされたし。

 

taiyaki.hatenadiary.com

 

 

 『The Room』は公開から16年経っているにも関わらず、毎日世界のどこかの劇場でかけられている。トミー・ウィゾーもついてきて興行することが多いが、『ディザスター・アーティスト』で上映需要が高まっていた2017年時には多忙だったと見られ、残念ながら会うことは出来なかった。しかし、NYの劇場にトミー・ウィゾーが『The Room』を引っ提げてやってくる!と聞いたのでこれは何としてでも馳せ参じねばと思い、急遽今日劇場に足を運んだ。深夜11:00の回、遅い!

 

 上映中に投げる用のスプーン*1を買って30分前に劇場に行くと、既に長蛇の列を形成していた。劇場の中でもコンサートのようにTシャツや作品Blu-rayなど物販が売られている。$30のジャケットを買うとBlu-rayが付いてくる、というどう儲けているのか謎な価格設定こそトミー・ウィゾーらしい。ちなみにBlu-rayは単品で買うと$12である。

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 僕は映画Tシャツが好きなので、あとでTシャツを買っておこうと思ったら、なんと既にトミー・ウィゾー本人が物販エリアで写真撮影会をしていた!席を押さえていそいそと物販に並び、トミーに会いに行った。

 

 買ったばかりのBlu-rayにサインしてもらい、「日本のファンです!『The Room』を日本でいつか上映したいと思ってます!」と伝えると、「それはいいね〜、俺も日本で上映したかったんだけど、知人が誰もいなくてね。後で俺にメール送ってよ〜」とあの独特のアクセントで返してくれた。下はその時の写真である。

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 しかし、写真を撮ってもらってサインも貰っておいて失礼なのは重々承知だが、トミー・ウィゾーにはスターに会ったという特別感を一切感じない!上では大文字で書いたが、劇場で見かけた時も「あれ、トミー・ウィゾーいんじゃん」ってテンションで、存在感もない!(もちろん、奇抜なファッションをしているので目立つが)しかし、この究極なまでの凡人性、あるいは「才能の無さ」という才能がトミー・ウィゾーと『The Room』という作品をここまでの位置に押し上げたのかもしれない。

 

 なお、上映前にはQ&Aがあったのだが、「この映画の資金はどうやって集めたんですか?」という質問に対しては「そんなの誰が興味あるんだ、次!」と返し、「最近読んだ本を教えてください」という質問に対しては「最近読んでない、次!」という前代未聞の潔い回答に場内爆笑だった。まあ、正直質問内容が全体的に寒かったのも否めないが、トミーという奇人フィルターを通せば爆笑の質疑応答になるのは流石であった。

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 一番印象に残ったのは、「あなたは前向きな人間ですが、ネガティブな世界でポジティブに生きるにはどうしたら良いでしょうか?」という質問で、トミーは「俺はネガティブという言葉が嫌いだ。今の質問をもう一回ネガティブをポジティブに言い換えて聞きなおせ!」と返した。過去16年史上最低の映画を作った人間として笑われ続け、それでも上映し続ける男ならではの人生哲学で感動すら覚えた。

 

 なお、日本だと『ディザスター・アーティスト』はAmazonプライムで鑑賞できるのに、元ネタの『The Room』に触れる機会が海外Blu-rayでも輸入しない限り全くない。というか、『The Room』が日本で全く知られていないためにGG賞やオスカー候補にもなった『ディザスター・アーティスト』が日本で劇場公開されたなかった、と言い換えても良い。サービストークだったかもしれないが、仮にもトミーは「日本で上映したいならメールをくれ」と僕に言ってくれたので、明日メールを出してみる。お金なんか一切ないし、コネもないけど、トミーが『The Room』を作ったように僕も挑戦してみようじゃないか。『The Room』日本上陸の鍵は僕が握っている!?

 

 



*1:『The Room』には意味もなく小道具のスプーンの絵が目立つ位置に何回も出てくるので、そのスプーンの絵が出てくるたびに観客が「スプーン!」と叫びながら一斉に用意していたスプーンを投げるのが伝統である