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遥か彼方の銀河系はいつになったら平和になるの?/『スター・ウォーズ フォースの覚醒』★☆☆

映画 感想

 ついにこの時が来てしまった。2012年にディズニーによるルーカスフィルム買収のニュースを聞いて、僕のフォースを乱され続けたこの3年間。10年前の『シスの復讐』からまさかまた再び『スター・ウォーズ』のために劇場に足を運ぶ日が訪れようとは。*1ちなみに僕にとって『スター・ウォーズ』は映画好きとなる契機の一つだったので、多くの熱狂的な『スター・ウォーズ』ファンと同じくらい並々ならぬ思い入れがあることは言っておかねばならない。

 
※今回の感想はネタバレしまくってるので、鑑賞後にお読みください。

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 世の大絶賛ムードの中大変言い辛いが、まず最初に結論から書く。僕は『フォースの覚醒』に全然満足できなかった。
 
 僕の知人やTwitterをフォローしている方はご存知かもしれないが、確かに僕は最初からディズニー=ルーカスフィルム体制の新シリーズに批判的ではあった。アナキン=ダース・ベイダーの物語として考えた時、ルーカスの元で作られた旧六部作*2は綺麗な終わり方をしていた。オリジナルトリロジーと比べてプリクエルは叩かれがちだが、それでも三部作同士を対比させた時は美しいシンメトリー構造を保っている。また、『ジェダイの復讐』の多幸感あふれるラストカットから考えても、その続きを作ることには蛇足感が否めないし、嫌らしい話カネの臭いしかしない。『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』や『トイ・ストーリー3』にもし続きが作られたら誰もが「それはちょっと…」と思うだろう*3。僕の『フォースの覚醒』へのスタンスはそれと似ている。
 
 とは言っても、やはり『スター・ウォーズ』である。不安を抱きつつも公開日が近づくにつれ、嫌が応にも期待が高まっていってしまったことは正直に告白しよう。ちなみに旅先のニューヨークの劇場でチケットを予約したのだが、友人の警告によるとそこはNYでも治安が屈指に悪い場所で、吊り橋効果的にも『フォースの覚醒』への気持ちは高まっていった。場所柄もあってか初日にもかかわらず客は10人程度しかいなかった*4が、早めに並んで一番見やすい席を確保するほどには楽しみにしていた。

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▲独り言をひたすらしゃべり続けるおっちゃんがいたりする、素敵な雰囲気のジャマイカの劇場。

 予告が終わり、暗闇に浮かぶLUCAS FILMのロゴ、ジョン・ウィリアムズのテーマ曲と共にSTAR WARSが流れる*5。この瞬間に鳥肌が立たなかったファンはいないだろう。あの世界に再び戻れるという事実に興奮したことは認めなくてはならない。新たな物語の幕が堂々と上がったのだ。
 
 だが映画が進むにつれ、その興奮が静かに消えていくのを感じずにはいられなかった。要因は挙げるときりがないが、例えばレンズフレアが無いとはいえ、キャラクターたちがやたらと画面を走り回る演出にJJ印を感じ、ノイズになってしまっていたこと。
 
それに相まって物語のテンポが旧シリーズと比べて早すぎること。
 
プロットやヴィジュアルを『新たなる希望』に寄せ過ぎてしまい、あまり新鮮味がなかったこと。
 
旧シリーズと比べて謎や伏線の残しかたが続編ありきでスッキリしないこと。
 
Apple製品を彷彿とさせるミニマリズム的な簡素過ぎる新デザイン。*6
 
ジョン・ウィリアムズの新譜があまり印象に残るものではなかったこと。
 
ザ・レイド組のただ出しておいた感と触手怪獣への違和感。
 
カイロ・レンやキャプテン・ファズマなど、新ヴィラン達の弱さや小物感*7
 
スターキラー・ベース攻略戦のカタルシスの無さ。*8
 
地図を持つR2-D2が最後にいきなり起動する都合の良さ。*9
 
空撮で終わるラストカットのとてつもないダサさ。*10
 
…などなど。ただ、今挙げてきたことは些細なことなのかも知れない。
 
 
 なぜならば、本作で僕が本当に一番残念だったのはハン・ソロの死だからだ。
 f:id:HKtaiyaki:20151222130024j:plain▲2015年、没。合掌。
 
 怒るというより、ただただ落ち込んでしまった。いや、分かるよ、ドラマを盛り上げるための死だってことは分かるし、この展開はカイロ・レンの正体以上に本作一番の驚きとなっていた。過去を清算し、新三部作を始めるという意思表示にもなっていたのだろう。
 
 だからと言って、どうしてハン・ソロは死ななくてはならなっかたのだろうか。確かに、ハン・ソロはこれまで2回死ぬはずだった。一回目は『帝国の逆襲』のラストで、二回目は『ジェダイの帰還』でハリソン・フォード自身がそう提案した。しかし、ハン・ソロは生き延び、エンドアでルークやレイアとともに銀河帝国の打倒を祝った。苦さはあるけれど、本当に、本当に幸せなラストカットだった。それなのにどうしてわざわざルーカスの手を離れてまで、続きを作り、彼を殺さなくてはいけなかったのだろうかハン・ソロの死は観客の感情を煽るための舞台装置的な死にしか見えなかったことが悲しくて仕方がなく、映画が終わって暫く放心状態となってしまった。

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 そもそもの話になるが、何故ファーストオーダーがあれほど力を振るっているんだろうか。皇帝の死で何故銀河に平和は訪れなかったのだろうか。*11アナキンがフォースにバランスをもたらすはずではなかったのだろうか。幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし、では何故ダメなのか。いつになったら銀河共和国に平和が訪れるのだろうか。
 
 本作は公開3日間だけで全世界ですでに2億5千万ドルを超えてしまった。映画興行史に残る記録を打ち立てるこたは間違いない。ディズニーは観客が劇場に足を運ぶ限りシリーズを続けていくつもりらしい。ディズニーという名の巨大帝国に支配されている限り、この銀河系に平和は来ない。

*1:『クローン・ウォーズ』『ファントム・メナス3D』は?などと細かいことは言ってはいけない。

*2:すごく違和感のある言い方だなぁ…。

*3:と言っても、もう『トイ・ストーリー4』は公開が決定されている。全くジョン・ラセターは…という愚痴は長くなるのでまた今度にしたい。

*4:スター・ウォーズ』なのにお祭り的な雰囲気が楽しめなかった、というのは僕が本作にノレなかったことに少なからず影響しているとは思います。せっかくアメリカで観たのに…。

*5:とはいえ、やはり20世紀フォックスのファンファーレが流れない寂しさは看過することはできない

*6:ファントム・メナス』もデザイン面では叩かれていたが、丸みを帯びたメカデザインが作品を追う毎に段々角ばっていくのは、プリクエルからオリジナルへの時代の変化を視覚的に表す手法として理に適っていた。それが何故今回再び丸くなっていくのだろう…。流行は30年毎に流行るってやつか?

*7:カイロ・レンを未熟な悪役として描きたかった意図はわかる。ただし、前半であれだけ恐ろしく強力なフォースの持ち主として描きながら、マスクを脱いでからの精神的弱さやガキ臭さを吐露していく展開には拍子抜けしてしまったハン・ソロの息子だと判明するのもマスクを脱ぐのも早いし。チューバッカからの不意打ちくらいであんなに弱くなるというのも情けなく感じる。キャプテン・ファズマに至ってはスターキラー・ベースのバリアーを解除しただけという間抜けな描き方。女性主人公のレイが思った以上に素晴らしいキャラだったので、この扱いはあまりにも酷い。

*8:BB-8もまた可愛らしいキャラクターではあると思うが、この場面で全く活躍場面が無かったのは残念極まりない。ポー・ダメロンも途中消えてただけだから戻ってきてもカタルシスを感じなかった。あと「スターキラー」を使っちゃうセンスな!

*9:ついでに言っておくと、レイとフィンがミレニアム・ファルコンを見つける下りとハン・ソロとチューバッカがミレニアム・ファルコンを見つける下りもかなり都合よすぎると思う。まあ、初めてファルコン号が姿を現した時は感動したけど…でも愛機を盗まれるって間抜けすぎません?

*10:地味にこれはJJが犯した最大のミスだと思っている。『スター・ウォーズ』は様式美の世界なのでこういうところで外すと本当に萎えてしまうのである。

*11:もちろん、実はあの後コルサントでは帝国軍による暴動の鎮圧が続いて…などというスピンオフ設定を聞きたいのではない。