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右倣えの社会

 僕はRotten TomatoesやIMDbなどのレビューサイトが嫌いである。いや、ある程度の指標にしているし、参考も引用もしているので「嫌い」と言い切るのは間違っている。しかし、それらのレビューサイトを権威付けている連中だけは鼻持ちならん。

 

 

 Rotten TomatoesやIMDbのスコアや点数を絶対視する人間にとって、その映画の評価はその「点数」以上以下の何物でもない。例えば去年『ファンタスティック・フォー*1という映画が、製作・撮影時のトラブルの噂とその出来の悪さのため世界レベルで炎上した。知人の映画ファンも笑い者にしていて、実際に酷い出来の映画ではあるのだが、データで考えてみよう。

 

 Box Office Mojo*2によると、『ファンタスティック・フォー』がアメリカ国内で最終的に稼いだ金額は$56,117,548である。アメリカの映画館は地方によって値段が異なり、また昼は夜よりも安くなっていたり、3D料金などもあるが、乱暴に昨夏の全米平均のチケット代金($8.61*3)で割ってみよう。すると凡そ651万人、つまり全米でも50人に1人しか『ファンタスティック・フォー』を劇場で観ていないのだ。ちなみに僕が映画館に行った時も観客は僕一人だけで、実際僕の周囲で映画を見た人間は誰一人としていない。そう、先ほど書いたファンタスティック・フォー』を笑い者にした映画ファンの知人だって観ていない。観てもいないのに、Rotten TomatoesやIMDbのスコアだけであの映画は「駄作だ」とレッテルを貼って寄ってたかってバカにしているのである。日本でも昨年同時期に『進撃の巨人』が前田某だとかなんとか言う映画評論家がつけた点数を根拠に似たような叩かれ方をされた。

 

 

 

 同じ『ファンタスティック・フォー』の20世紀フォックス社の『スター・ウォーズ』シリーズの所謂「プリクエル」は世間では「駄作」とされている。しかし、僕がその世評を知ったのは少なくともインターネットにハマった中学生からで、『エピソードI』も『エピソードII』も僕は大好きだったし、それまで悪口を言ってる友達なんか一人もいなかった。ところがインターネットやスマホの普及率が高まるにつれ、どっかの映画サイトに書いてあるような書き割り的な「プリクエル」批判を聞くようになった。旧三部作世代がディスっているのはまだ分かるが、僕と同世代で「映画館で観て寒かった」とか言ってる連中は何を考えてるんだろうか。毛も生える前の自分を偽りポッドレースやダースモールに燃えた過去まで無かったことにするのか?

 

 

 前置きが長くなったが、前も触れた新版『ゴーストバスターズ』である*4

三ヶ月前に公開されたこの予告編、未だに批判が続き、25万の高評価に対し89万の低評価というYoutube史上に残る荒れっぷりをしている。それどころか「楽しみだ!」というコメントまで叩かれる事態となっている。大多数の評価から逸脱した意見を認めない風潮は、もはや一種のファシズムだと言っても過言ではないだろう。

 

 実際に僕もFacebookで新『ゴーストバスターズ』を擁護するたびに「だって予告編のギャグがつまらないから」というまた七面倒なコメントをもらうのだが、確かにYoutubeのコメント欄を見ると「ギャグがつまらない」という投稿も結構見る。では果たして本当に「ギャグがつまらない」から『ゴーストバスターズ』は叩かれているのであろうか。僕は実のところ、本質は違ったところにあると思う。何故ならキャスト発表時のニュースについてコメントでは、「全員女性である」ことへの批判が殺到していたからだ*5。つまり新『ゴーストバスターズ』は制作発表時からミソジニーに塗れた批判がされ続けており、「ギャグがつまらない」新予告編は大衆の差別意識をすげ替えるための口実でしか無いのだ。まだ本編が公開されてもいないのにギャグを根拠に叩くのはおかしいし、そもそもオリジナルの『ゴーストバスターズ』のギャグだってスライムべっちょりだとか、マシュマロマンだとか、アイヴァン・ライトマンらしい緩いオフビートなギャグがウケたはずだ。

 

 更にIMDbの掲示板が腹立たしいのは、すでに「トマトメーターを予想しよう」とか「見ないで低評価つける人いる?」だとか能無し丸出しのスレッドが乱立していることだ。「見ないで低評価」なんかは匿名性のレビューサイトが如何に信用できないかの典型例だ。少し話が逸れてしまうが、「誰が監督すべきだった?」というスレッドで上がってくる監督達が面白い。エドガー・ライト、ギルレモ・デル・トロ、サム・ライミピーター・ジャクソンリチャード・リンクレイター…と映画ファンの「この監督知ってる俺偉い」大会になっている。お前らポール・ファイギ作品どころか、本当にオリジナルの『ゴーストバスターズ』とかお前ら自身があげた監督の作品ちゃんと見たことあるの?こんな「映画ファン」に新『ゴーストバスターズ』が叩かれていると思うと、ため息しか出てこない。

 

 さて、映画の話に終始してしまったが、これは一般論でも同じことが言える。つい最近イギリスの国民投票によりイギリスのEU離脱が決まってしまったわけだが、それにまつわるニュースとしてこんな記事も話題になっている。

これは民主主義が衆愚主義に成り果てたいい例だ。右に倣うことは確かに楽だ。周りの人が好きなものを持ち上げ、嫌いなものを叩けば思考しなくて済むからだ。そしていつの間にか流されることが正常なことと思い込み、ナチスのような悲劇も生む。大衆の意見なんてロクなもんじゃないということを、新『ゴーストバスターズ』とイギリスのEU離脱は教えてくれる。

 

 

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